【雛形付き】契約書作成時に知りたい書き方・作り方のポイントを解説
2019.12.25

この記事の目次
はじめに
起業したり事業をはじめたばかりで、取引先との契約書をどのように交わせばいいか分からないという起業家やスタートアップの社員さんも少なくないのではないでしょうか? なんとなく取引先から言われるがままに契約を結んではいけないということは分かっていても、どんな内容がNGなのか?どんなタイミングで交渉すればいいのか?捺印?製本?わからないことだらけですよね。 そこで今回は、契約書を交わす際に問題となる点について、実際の契約の締結フローを確認しつつ、一般的な契約書のテンプレートとともに解説します。1 契約書とは
(1)契約とは
そもそも「契約」とは、権利や義務について当事者で約束を結ぶことをいいます。 たとえば、スーパーやコンビニで買い物をしたことがない人はいないですよね。実は、この買い物の際にも契約が締結されています。 スーパーやコンビニといったお店が「売ります」と商品を陳列した上で、お客さんが商品をレジに持っていき「買います」と意思表示をすることで、売買契約が締結されたことになるのです。 この売買契約に基づいて、お店は商品をお客さんに引き渡す義務を負うことになりますし、お客さんはその対価を支払う義務を負うことになります。 義務を負うということは、同時に権利も発生します。 お店はお客さんに対価を支払えと求める権利を持ちますし、お客さんは商品を引き渡せと求める権利を持つことになります。 このような権利・義務といった契約内容を書類にまとめたものが「契約書」です。 もっとも、契約というものは、合意が成立していれば、口頭でも法的には有効となります。スーパーやコンビニで買い物をするのにいちいち契約書を締結していないのは、これが理由です。 そのため、取引をする際に、わざわざ手間をかけて契約書なんて作らなくてもいいような気がしますよね。 ところが、実際には、会社間の契約では契約書が用いられています。では、なぜ契約書を交わすのでしょうか。(2)契約書はなぜ必要なのか
「契約書」とは、合意された契約の内容を明文化した書類のことです。 保証契約や一部の賃貸借契約など法律で契約書の作成が必要とされるものを除けば、一般的には契約書の作成は必須ではありません。しかしながら、契約書は頻繁に利用されます。 それは、以下の2つの目的のためです。- 契約内容の明確化
- トラブル対策
①契約の明確化
まず、契約書には契約の内容が詳細に書き込まれます。 これにより、電話や対面での口頭の契約とは異なり、契約の内容を明確にしておくことができますし、「あれ、どんな取引なんだっけ」となったときなどに、あとから見返すことができるようになります。 それだけなく、契約書の中で契約内容が明文化されているため、お互いに契約の内容について、認識が違ったということが生じづらくなります。②トラブル対策
契約書には、契約の内容が詳細に書き込まれているだけでなく、その内容に合意したことを証明する署名・捺印がなされます。 そのため、当事者はその契約内容には当然拘束されることになり、相手方が契約の義務などを履行していないなど、トラブルが起きた際には、契約書にもとづいて反論することが可能となります。 また、契約書は法的にその効力が認められているため、トラブルが訴訟に発展した場合、お互いが合意した権利や義務などについての最も重要な証拠となります。 以上のように、契約書は、当事者の権利や義務などを明確にすることができ、役務の内容や支払いについての取り決めを具体的に示してくれるだけでなく、争いに陥ってしまった際にも、重要な証拠として機能します。 また、契約書に類似して、覚書というものがあります。 「契約書と別に覚書を締結したけれど、これは有効なの?」 と疑問に思う人もいるかもしれません。次で確認しましょう。(2)契約書と覚書の違い
「覚書」とは、基本的に、契約書を実際に作成する前に、当事者双方が合意したことを書類に残したり、すでに交わされた契約について補足・変更する際に再び交わされる書面のことです。 覚書は、契約書の補助的な書類という位置づけだと思われがちですが、法的な意味は契約書と同じものです。そのため、覚書であっても、契約書と同じように慎重に内容を吟味する必要があります。 では、実際に契約書を作る際には、どのようなフローで行われるのかをチェックしていきましょう。2 契約書作成の流れ
契約書を実際に作成する際には、以下の7つのステップがあります。
- 内容の話し合い
- 契約書の作成
- 契約書の修正・訂正
- 契約書の署名・捺印
- 契約書の製本・割印
- 契約書の送付・郵送
- 契約書の保管・収入印紙
(1)内容の話し合い
契約書を作成する前提として、当事者間で合意することが必要です。- 相手方には何をしてもらうのか
- 自身は何をするのか
- 金額
- 期間
(2)契約書の作成
話し合いが終われば、話し合いの内容(合意した内容)をもとに契約書を作成することになります。ここでいう、契約書の作成とは、契約書の案、ドラフトを作成することをいいます。 この契約書の案、ドラフトの作成は、基本的に、当事者のいずれか一方が行います。 この際には、面倒くさがらずに契約書を作成する側に回りましょう。 なぜなら、契約書を作成することで、自身がベストだと思える文言・表現で契約書を作成でき、その後の修正などの場面においても優位に立てると考えられるからです。(3)契約書の修正・訂正
契約書の案、ドラフトを作成し終わったら、相手方に内容のチェックを依頼しましょう。逆に相手方が契約書の案、ドラフトを作成した場合は、その内容が問題ないかチェックを行いましょう。 契約書は、一度署名・捺印してしまうと、契約書に書かれた義務を負わなければいけません。 契約書に話し合いでは合意していない内容が書かれていても、それに気付かず署名・捺印した時点で、その内容に納得したことになってしまいます。 また、契約内容は簡単に変更できるものではなく、相手方も変更を許容してくれた場合にのみ認められることが基本です。 そのため、- 契約書に合意した内容が書かれているか
- 契約書に合意していない事項が書かれていないか
- 自身に不利な条項がないか
(4)契約書の署名・捺印
①署名と記名
契約書を作成したら、つぎは署名捺印をする段階となります。 代表取締役社長など契約を締結する権限をもつ決済者が直接名前を書いて会社の印鑑を押すことを「署名捺印」、印刷したり、ゴム印で対応したり自署以外の方法で名前を記載した上で会社の印鑑を押すことを「記名押印」といいます。 実務上は、代表取締役が全ての契約書に署名をすることはあまり多くありません。なぜなら、会社の印鑑さえ押されていれば、署名でも記名でも契約の効力に大きな差はないからです。 もっとも、外国の会社と契約を締結する場合には、注意が必要になります。 外国ではそもそもハンコを契約書で使用する文化がないことが多いです。そのため、外国の会社と契約を締結する場合には、契約を締結する権限をもつ決済者が署名する必要があります。②署名・捺印する箇所
一般的に、契約書における署名捺印をする箇所(署名欄)は、図で表すと以下の通りとなります(契約書によっては、末尾ではなく、契約書の先頭となる場合もあります)。
この署名欄には、
- 住所
- 会社名
- 役職
- 名前
(5)契約書の製本・割印
次は、契約書を製本したり、割印を押すフェーズです。 たとえば、契約書が5枚となっている場合、まとめずにクリアファイルなどにいれるだけだと、中身を差し替えられてしまうかもしれません。 それを防ぐための対応として、以下の作業が行われます。- 割印
- 製本
①割印
契約書は、契約当事者と同じ部数用意されます。 たとえば、2つの会社が契約を締結する場合には、同じ内容の契約書を2部用意します。同様に、3つの会社が契約を締結する場合には、同じ内容の契約書を3部用意することになります。 「割印」とは、2部以上の契約書にまたがるように押印することで、同一の書面であることを示すために押される印のことです。 契約書における割印は、以下の図のように押されます。
このようにすることで、2社で契約を締結する場合には、自社用の契約書と相手方用の契約書が同一のものであることを証明することが可能となります。
万が一、偽造しようとしたとしても、相手方の印鑑を何らかの形で入手しない限り同一の契約書であることの証明ができません。
そのため、割印を押しておくことで、書面の改ざんやすり替えが極めて困難となる点において、有用性があると考えられています。
②製本
「製本」とは、複数枚の契約書類をひとつにまとめ、ホチキスなどで留めた上で、製本テープなどで背表紙を括り契印を押すことをいいます。 「契印」とは、2枚以上の書類のページが変わる際などに、連続した書類であることを証明するために押される印のことです。 契約書の製本は、以下の図のように行われます。
上記のように、製本する際には、複数枚の書類をまとめ、製本テープを貼り付け、契印を押します。このようにすることで、中の一部を差し替えようとすると製本テープを剥がさなければならなくなります。
万が一、偽造が行われたとして、中の一枚を差し替えようとしても、製本テープを剥がした跡が残るだけでなく、相手方の契印に使われた印鑑を入手する必要が生じます。そのため、改ざんを防げる確度が高まると考えられるため、このような作業を行います。
また、上記のような製本をしない場合、ページがかわるごとに契印を押すことになります。
製本テープを使用しない場合は、以下のように契印を押します。
ページが変わるごとに契印を押すことで、製本や割印と同様、一部をすりかえることが、極めて困難になります。もっとも、全ページに契印を押すとなると、簡潔なものならばいいですが、数十ページにわたる契約書の場合、大変な事務作業となります。
すべてのページに契印を押す必要が生じる手間が増えるため、複数ページに渡る契約書の場合は、製本テープを用いて製本したほうがよいでしょう。
(6)契約書の送付・郵送
製本まで済んだら、実際に契約書を送付・郵送するフェーズになります。 ここでポイントとなるのは、契約書をどのように送るかということです。基本的に、相手方に配達が完了していることを確認できる手段を用いるようにしましょう。 こうすることで「契約書を受け取っていない」と言われトラブルになることを防ぐことができます。 具体的には、契約書の送付・郵送方法として以下の2つの方法があります。- 簡易書留
- 配達証明郵便
①簡易書留
「簡易書留」とは、郵便局が荷物の引受から配達までの郵送過程を記録しておいてくれる郵便のことです。 簡易書留の場合、受領書に記載のある引受番号を郵便局のWebサイトに入力することで、配達状況を確認することができます。 そのため、相手が契約書類を受け取っているかどうかといったことがいつでも分かるようになっています。②配達証明郵便
「配達証明郵便」とは、一般書留の一種で、郵便局が配達したという事実を記録し、証明してくれる郵便のことです。 配達が完了すると郵便の差出人に配達証明書が発行されます。 これにより、配達が完了したことを証明できるため、訴訟の際にも用いることのできる証拠資料となります。 配達の証明書類が郵便局から発行される点は大きなメリットと言えますが、配達証明の加算料金として別途320円かかる点はデメリットです。 このように、契約書を送付する際には、簡易書留や配達証明郵便といった追跡が可能な郵便サービスを用いることが一般的です。 簡易書留はウェブ上で配達について確認でき、配達証明郵便は配達完了の書類が発行されます。資料の保管などを考慮して、都合のいいものを用いてください。(7)契約書の保管・収入印紙
①契約書の保管
契約書は、法律によってその保管期間が決められています。 たとえば、取引があったことを証明するために会社法では10年、法人税法では7年といった具合で保管期間が定められています。 古い契約書も保管期間が満了するまでは保管しなければいけないため、安易に捨てないように注意しましょう。②収入印紙
契約書の中には、課税文書に該当するものがあります。 「課税文書」とは、印紙税が課される書類一般のことです。 課税文書を発行・受領した場合は、契約書内に記載の取引額に応じて、印紙を購入し、契約書に貼り付ける必要があります。なお、印紙を貼るのは、自らの手元に残る一部のみです。 課税文書に該当する文書でよく締結される契約は以下の通りです。- 知的財産権などの譲渡契約書
- 請負契約書
- 継続的取引の基本契約書
3 契約書の雛形・テンプレート
契約書の一般条項についての、雛形・テンプレートはこちらからダウンロードしてください。
なお、記事の最後に、雛形の使用について注意点を記載しているので、ご確認ください。
4 一般的な契約書の書き方
ここからは、一般的な契約書がどのように書かれるかを雛形をもとに確認します。
一般的な契約書には、以下の項目が設けられます。
- タイトル(表題)
- 前文
- 契約条項
- 秘密情報の取扱い
- 損害賠償
- 権利義務譲渡の禁止
- 反社会的勢力の排除
- 解除条項
- 有効期間
- 管轄裁判所
- 協議条項
- 日付欄と署名欄
(1)タイトル(表題)
契約書のタイトルは、その契約書が何の契約であるかを予想できるものが望ましいです。 そして、ここで注意しなければいけないのは、契約書のタイトルと中身を一致させるということです。 たとえば、売買契約書というタイトルがついているのに、契約書の中身が売買とは異なるマンションの賃貸借契約書だった場合を考えてみてください。 相手方が送付してきた契約書の中身をろくにチェックせずに契約してしまった場合、売買契約を締結したつもりが、意図していない賃貸借契約を締結してしまうことになります。こうなってしまっては、トラブルになりかねません。 逆に、相手方が送付してきた契約書の中身をチェックした際にタイトルと中身が一致していなければ、どう感じるでしょうか。 「この事業者と取引をしても大丈夫かな?仕事を任せても初歩的なミスをするんじゃないか」と不安になってしまいますよね。 そのため、契約書のタイトルは、契約書の中身と一致させ、何の契約であるかをタイトルから予想できるものにしましょう。(2)前文
「前文」とは、誰と誰が契約を締結するのか、その契約の当事者を特定するための文章のことをいいます。 ここでは、同時に、当事者の略称を定義します。たとえば、「〇〇工業株式会社(以下「甲」という)」といったものです。 契約書における略称は、一般的に、以下の十干(じっかん)が上から順に使われます。- 甲(コウ、きのえ)
- 乙(オツ、きのと)
- 丙(ヘイ、ひのえ)
- 丁(テイ、ひのと)
- 戊(ボ、つちのえ)
- 己(キ、つちのと)
- 庚(コウ、かのえ)
- 辛(シン、かのと)
- 壬(ジン、みずのえ)
- 癸(キ、みずのと)
(3)契約条項
「契約条項」とは、締結される契約に固有な取引情報が書かれた条項のことです。契約の形態ごとに書かれる事項は変わります。 契約条項を定める際には、契約当事者同士が内容について共通の理解を持てる形にします。契約ごとに特有な内容となるため、法律の専門家などを交えて慎重に内容を検討する必要があります。 たとえば、ソフトウェア開発の業務委託契約書では、契約条項は以下のように定めることが考えられます。-
- 第●条(本件業務)
(4)秘密情報の取扱い
次の条項は秘密情報の取扱いについてです。いわゆる、秘密保持条項です。 「秘密保持条項」とは、契約によって知った情報・知ることができた情報について、外部に漏えいしないことを定める条項のことです。 この秘密保持条項の一例は、以下の通りです。-
- 第●条(秘密情報の取扱い)
(5)損害賠償
損害賠償条項の一例は以下の通りです。-
- 第●条(損害賠償)
(6)権利義務譲渡の禁止
権利義務譲渡の禁止の一例は以下の通りです。-
- 第●条(権利義務譲渡の禁止)
- 誰に納品すればいいの?
- 誰に請求すればいいの?
- 依頼していた仕事の状況は?
(7)反社会的勢力の排除
反社会的勢力の排除の条項の一例は以下の通りです。-
- 第●条(反社会的勢力の排除)
(8)解除条項
解除条項の一例は、以下の通りです。-
- 第●条(解除)
(9)有効期間
有効期間の一例は、以下の通りです。-
- 第●条(有効期間)
(10)管轄裁判所
管轄裁判所の条項の一例は、以下の通りです。-
- 第●条(管轄裁判所)
(11)協議条項
協議条項の一例は、以下の通りです。-
- 第●条(協議)
(12)日付欄と署名欄
次は、日付欄と署名欄についてです。 日付と署名は、以下のように記載します。-
- 本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲、乙記名押印の上、各1通を保有する。
- 契約期間の開始日
- 契約内容に合意した日
- 双方の意思決定が完了した日
- いずれかが署名した日
- 書面上に最後に押印した日
5 小括
これまで解説してきた通り、契約書を締結する際には、契約書と覚書の違いなどを理解した上で、契約書作成までのフローを押さえておく必要があります。それらを踏まえて、個別の契約の特徴などに応じて具体的な契約事項を検討していくことになります。
その後、契約書を作成し、割印などを押し、相手方に郵送し、収入印紙を貼り保管するといった作業を行うことになります。分かりづらい面もありますが、適切に対応し、事業を進めていきましょう。
6 まとめ
これまでの説明をまとめると、以下の通りになります。- 「契約書」とは、合意された契約の内容を明文化した書類のことである
- 契約書は主に①契約内容の明確化、②トラブル対策のために作成される
- 「覚書」とは、基本的に、契約書を作成する前に、当事者が合意したり、すでに交わされた契約について補足・変更する際に再び交わされる、書面のことである
- 契約書作成のフローは、①内容の話し合い、②契約書の作成、③契約書の修正・訂正、④契約書の署名・捺印、⑤契約書の製本・割印、⑥契約書の送付・郵送、⑦契約書の保管・収入印紙となっている
- 「割印」とは、2つ以上の書面にまたがるように押印することで、同一の書面であることを示すために押される印である
- 「契印」とは、2枚以上の書類のページが変わる際などに、連続した書類であることを証明するために押される印である
- 契約書の郵送には、主に①簡易書留、②配達証明郵便などが使われる
- 「課税文書」とは、印紙税が課される書類一般のこと
- 一般的な契約書には、①タイトル(表題)、②前文、③契約条項、④秘密情報の取扱い、⑤損害賠償、⑥権利義務譲渡の禁止、⑦反社会的勢力の排除、⑧解除条項、⑨有効期間、⑩管轄裁判所、⑪協議条項、⑫日付欄と署名などが記載される
- ※【ひな形の注意事項】
- 本記事にてダウンロード可能な各種ひな形の著作権その他の一切の権利については、弁護士伊澤文平に専属的に帰属しております。したがいまして、ひな形の利用許諾は、これら権利の移転を意味するものではありません。
- 各種ひな形をご利用いただけるのは、法人様又は法律家以外の個人の方のみに限り、弁護士・司法書士・行政書士などのいわゆる士業の方のご利用は一切禁止しておりますので予めご了承ください。
- 本ひな形は、自己又は自社内でのビジネスのためにのみ(以下、「本件利用目的」)ご利用いただけます。したがいまして、本件利用目的以外での利用並びに販売、転載、転送及びネット上にアップロード・投稿する行為その他一切の行為を禁止します。
- 各種ひな形の内容に関して、弁護士伊澤文平はいかなる保証も行わず、ひな形の利用等に関して一切の責任を負いませんので、予めご承知おきください。











