【ひな形付】秘密保持契約書とは?7つのポイントを弁護士が徹底解説
2017.06.07

この記事の目次
はじめに
取引先と契約をする際に、秘密保持契約書(NDA)って頻繁に目にしますよね。
日常的に目にするため、「秘密保持契約書(NDA)ね。簡単簡単。だから、問題ないよ」と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか?
あるいは、難解な法律の文章にやられて、適当に流し読みしているのではないでしょうか?
秘密保持契約書(NDA)のチェックが甘い結果、
「 秘密保持契約」(英語: Non-Disclosure Agreement、略称: NDA)とは、自社の“企業秘密”など、外部に漏れるとマズイ情報を相手企業に提供する場合、これを漏らさないように相手方を縛る契約書をいいます。
秘密保持契約書(NDA)を交わす場面は、例えば、
なぜ、通常の契約書とは別個に、わざわざ秘密保持契約書(NDA)を交わす必要があるのでしょうか?
それは、新規事業を始める場合などを想定するとわかりやすいです。
仮に、自社の企業秘密ともいえる情報が漏れた場合、そのプロジェクト自体がとん挫してしまい、
以下では、IT業界における秘密保持契約書(NDA)をチェックする際の7つのポイントを解説していきます。
さて、実際に秘密保持契約書(NDA)を交わす場合を想定して、実戦形式で、IT業界における秘密保持契約書をチェックしてみましょう。
ただその前に、「秘密保持契約書(NDA)のひな形」を用意いたしましたので、こちらをダウンロードしてください。
【ひな形・テンプレート】秘密保持契約書(開示者に有利)
以下では、開示者に有利な秘密保持契約書(NDA)のひな形を前提に、主に、受領者の視点から、
- 秘密情報が漏洩されてしまった
- 秘密情報を受け取る際の「情報管理コスト」が増大してしまった
- 相手から賠償をしてもらえなかった
1 秘密保持契約とは
「 秘密保持契約」(英語: Non-Disclosure Agreement、略称: NDA)とは、自社の“企業秘密”など、外部に漏れるとマズイ情報を相手企業に提供する場合、これを漏らさないように相手方を縛る契約書をいいます。
2 利用場面
秘密保持契約書(NDA)を交わす場面は、例えば、
- 新規事業における業務の一部を外注するなど、何らかの業務を外部に「業務委託契約」する場合
- 他社と製品の「共同開発」をする場合
- システム開発の場合
- M&Aの検討をする場合
- WebサイトやECサイトの制作をする場合
3 契約書を交わす理由
なぜ、通常の契約書とは別個に、わざわざ秘密保持契約書(NDA)を交わす必要があるのでしょうか?
それは、新規事業を始める場合などを想定するとわかりやすいです。
仮に、自社の企業秘密ともいえる情報が漏れた場合、そのプロジェクト自体がとん挫してしまい、
- 投下資本が回収できない
- 逸失利益の喪失
4 チェックポイント
以下では、IT業界における秘密保持契約書(NDA)をチェックする際の7つのポイントを解説していきます。
(1)ポイント①:開示者or受領者?
秘密保持契約書(NDA)をチェックする際にまず考えるべきは、秘密情報を開示するのは、自社か相手方のいずれなのかという点です。 例えば、契約書上は、「甲及び乙は、秘密情報を第三者に開示してはならない」と書かれていたとしても、自社は秘密情報をほとんど開示せず、むしろ、相手方から秘密情報を受けとるだけであれば、文面とは裏腹に、秘密保持義務を負うのは、自社のみとなります。 この場合、自社としては、情報の管理コスト・リスクを下げるために、義務を「軽く」する方向で、契約書をチェックし、修正していく必要があります。 反対に、自社のみが秘密情報を開示する場合には、秘密情報が漏れにくいようにするために、相手方の行動をきつく縛り、義務を「重く」する必要があります。 このように、契約当事者のどちらが、開示者or受領者となるのかは、秘密を管理する義務を「重くする」のか「軽くする」のか、ひいては、契約書に盛り込むべき事項にかかわってくるとても大事な視点です(2)ポイント②:秘密情報の範囲
次に、漏らされたら困る「秘密情報の範囲(=定義)」を確認する必要があります。 定義した「秘密情報」に含まれない情報については、これを漏らしたとしても、相手方に契約違反を問えなくなります。 そのため、どういった情報を秘密情報に含め、orどういった情報を秘密情報から除外すべきか について、入念にチェックする必要があります。 この秘密情報の範囲については、自社が秘密情報を開示するのか(=開示者になる場合。)、それとも、相手方から秘密情報を受け取るのか(=受領者)になるのか、によって異なります。開示者
秘密情報を開示する場合、可能な限り、秘密情報の範囲を広く設定して、相手方をきつく縛りましょう。受領者
他方で、自社が相手方から秘密情報を受け取る場合には、義務を重くしてはダメで、管理すべき情報の範囲を縮小する方向で、義務を軽くするように修正しましょう。(3)ポイント③:目的外利用の禁止
次に、開示する秘密情報の「目的外利用の禁止」規定を確認しましょう。 そもそも、秘密保持契約書(NDA)を結ぶ理由は、取引を開始する際に提供する秘密情報をその取引以外で流用されたり、漏洩するのを防ぐためです。 ところが、「目的外での利用を禁止する」旨の規定がない場合、他社が秘密情報を悪用して、自社のサービスに流用したとしても、開示した企業は、文句をつけることができなくなってしまいます。 そのため、秘密保持契約書(NDA)をチェックする際には、- 情報開示の「目的」の記載の有無・内容
- 1の目的以外で秘密情報を禁止する旨の規定の有無
(4)ポイント④:コピーの可否
次に、開示した秘密情報が書かれた各種書面・資料について、受領者によるコピーを認めるのかという点について検討する必要があります。 これには、一切のコピーを認めないのは、非現実的なので、それを除けば、基本的には、3つの考え方があります。- 自由にコピーしてよい
- 開示目的に必要な限度でのコピーを認める
- コピーをする都度、事前に開示者の承諾を得ること
開示者
秘密情報を開示する側であれば、③【開示者の承諾がないとダメ】か最低でも②【必要な限度でコピーOK】にしたいところです。 ただ、「コピー」には、PCへデータのダウンロードも含まれてしまうため、そのたびにいちいち開示者の承諾を得ないとダメというのは、現実的ではないかもしれません。 受領者からは、「これでは義務が重すぎる」と言われて、多くの場合修正の必要があります。 そこで、④として、「受領者は、開示目的のため合理的に必要な範囲を除き、事前に開示者の書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)による承諾を得ることなく、開示者より開示された秘密情報の全部又は一部の複製、複写及び改変を行ってはならないものとする」という形で、秘密情報のコピーについては
- 原則、開示者の承諾が必要なのですが、
- PCへのダウンロードなどは、例外として承諾はいりません
受領者
他方で、秘密情報を受け取る側であれば、①【自由にコピーOK】か②【必要な限度でコピーOK】にしたいところです。 現実問題としては、②【必要な限度でコピーOK】で落ち着くことが多いです。(5)ポイント⓹:秘密情報の返却or破棄
秘密保持契約の期間が終了した後の、開示した(or受領した)資料の取り扱いに関する条項をチェックする必要があります。 具体的には、開示した(or受領した)資料について、秘密保持契約の期間が終了した後、受領者の方で、これを返還しなければならないor破棄しなければならない 旨のいずれかの条項があるかどうかをチェックしてください。開示者
これは、契約期間終了後に、受領者の手元に秘密情報が残っていた場合、これが漏洩したり、不正に使用されないためです。 返還させるのが原則ですが、受領者が「面倒くさい」などの理由でこれを嫌がった場合に備えて、条文上は、「受領者は、秘密情報を返還あるいは破棄するものとする」という形で、受領者の方で対応方法を自由に選べるようにしておくのが無難です。 なお、秘密情報を「返還」してもらう場合には、返還漏れのチェックは簡単ですが、「破棄」を選択した場合には、破棄したか否かは、開示者からは一見するとわかりません。 そこで、受領者が、破棄することを選択した場合には、「当社は、秘密情報を破棄したことを証明します」という「破棄証明書」を差し入れてもらうのがベターです。 ※破棄証明書のひな形は、こちらからダウンロードしてご利用ください。 【ひな形・テンプレート】秘密情報の「破棄証明書」
受領者
他方で、受領者の場合、秘密情報の返還or破棄証明をするのは、できるだけ避けたいところです。 しかし、この条文を除外することは、パワーバランスが弱い場合、難しいです。(6)ポイント⓺:ペナルティ
最後に、秘密保持契約書(NDA)に違反した場合のペナルティをチェックする必要があります。 通常、- 「損害を賠償」します
- 秘密情報の使用の「差止」ができる
開示者
開示者としては、基本的には、そのままの規定で問題ありません。もちろん、より賠償範囲や差止できる範囲を広げる方向で修正するのはアリです。受領者
他方で、受領者の場合、特に損害賠償の部分については、業務委託契約等に基づいて受領した「報酬額」を限度とするor違反行為によって通常かつ直接に被った損害に限り賠償するものとする という形で、賠償の範囲を制限することが考えられます。(7)ポイント⑦:印紙について
なお、「秘密保持契約書(NDA)や収入印紙を貼る必要があるのか?」という点も考えるべきですが、この点については、基本、印紙代は不要とされています。5 ひな形のダウンロード
さて、実際に秘密保持契約書(NDA)を交わす場合を想定して、実戦形式で、IT業界における秘密保持契約書をチェックしてみましょう。
ただその前に、「秘密保持契約書(NDA)のひな形」を用意いたしましたので、こちらをダウンロードしてください。
【ひな形・テンプレート】秘密保持契約書(開示者に有利)
6 実例解説
以下では、開示者に有利な秘密保持契約書(NDA)のひな形を前提に、主に、受領者の視点から、
- いかなる事項を
- どのような視点で
秘密保持契約書
株式会社〇〇〇〇〇(以下、「甲」という。)と株式会社×××××(以下、「乙」という。)とは、甲乙間で相互に開示される情報の取り扱いに関して、以下のとおり合意し、本契約(以下、「本契約」という。)を締結する。なお、本契約の当事者のうち、秘密情報を開示した者又は開示する立場にある者を「開示者」といい、秘密情報の開示を受けた者又は受ける立場にある者を「受領者」という。 第1条(目的) 本契約は、甲及び乙が以下の目的(以下、「開示目的」という。)に関連して、甲乙間で相互に開示する秘密情報の機密保持に関する取り扱いを定めるものである。 開示目的:新規取引検討にかかる各種情報の授受- 開示目的を特定しています。これは、目的外利用か否かを判断する前提として、「なぜ、秘密情報を開示するのか?」という「開示目的」を特定する必要があるからです。
-
- ⇒「口頭で」開示した情報も「秘密情報」に当てはまるようになっており、「秘密情報」の範囲が広すぎます。受領者としては、秘密情報の範囲を制限する方向で修正しましょう。具体的には、以下の下線部の記載を追記しましょう。
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- ⇒ 「書面その他の方法により証明できる情報」というように、「書面による証明」を求めている点で、受領者に過剰な義務を課しています。そのため、この部分は削除して、以下のように修正しましょう。
- ⇒ポイント③にあるとおり、「目的外使用の禁止規定」が置かれています。
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- ⇒ポイント④にあるとおり、このままでは、受領者からみたときに、秘密情報をコピーすることが原則できません。そのため、制限をゆるくする方向で以下のように修正することが考えられます。
- ポイント⓹にあるとおり、契約期間終了後の「秘密情報の返還or破棄」に関する規定です。
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- ⇛この規定自体不当というわけではありませんが、ポイント⓺にあるとおり、受領者の賠償義務を制限する方向で、下記のとおり修正しましょう。
(全17条)
※【ひな形の注意事項】- 本記事にてダウンロード可能な各種ひな形の著作権その他の一切の権利については、弁護士伊澤文平に専属的に帰属しております。したがいまして、ひな形の利用許諾は、これら権利の移転を意味するものではありません。
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