新規事業立案でのリーガルチェックの進め方は?3つのポイントを解説
2019.12.02

この記事の目次
はじめに
誰もがやったことのないビジネスモデルを構想し、新規事業として立ち上げる際に、「この新規事業、法的にやっても大丈夫?」と不安に思っている事業者の方は少なくないのではないでしょうか。
新規事業についてしっかりと「リーガルチェック」をしないと、後に違法なものだと判明した場合には事業を続けられなくなってしまうなど大きなリスクを負うことになりかねません。
もっとも、新規事業は全く同じものがないからこそ、どのような法的問題があるか?検討はどうやって進めるべきか?などよくわかりませんよね。
そこで今回は、新規事業におけるリーガルチェックの進め方を弁護士がわかりやすく解説していきます。
このように、「Osushi」は、
新規事業における法的問題点を検討する場合、以下の図の流れで行います。
このように、新規事業の法的問題点は、
まず、事業者は、自社が行う予定の新規事業について、全体像を把握するようにしましょう。事業の全体像が分かると、法的問題点を洗い出す際に手掛かりになります。
事業の全体像を把握するためには、自分で図を作成してみることが有効です。
図を作る際には、
新規事業の全体像を把握した後、事業者には3つのフェーズに分けて新規事業にかかわる規制や問題点を抽出するという方法があります。
この方法では、事業者は、
このように、モバイル決済を新規事業として実施しようとする場合、
抽出した法的問題点の解決方法の検討を、専門家ではない経営者のみで行うことは難しいといえます。
そのため、事業者としては、以下のやり方を選択することが考えられます。
新規事業を始めるときに、リーガルチェックを万全に行っていたとしても、後に法律改正があったり、新しい法律や通達などがでてきて新規事業を見直さなければならないといったことがあるかと思います。
そのため、リーガルチェックは、新規事業を始めるときだけでなく、新規事業を始めた後も継続して行う必要があるといえます。
法律の改正や新しい法律がでてきた段階で弁護士などの専門家に依頼することも考えられますが、事業者自身で法改正などの変更すべてを把握するのは難しいため、顧問契約を依頼して継続的にチェックしてもらうといった方法を選択することが有効です。
弁護士と顧問契約をすると、たとえば、以下のような対応をしてもらえます。
事業者は、新規事業を安心して行うには、どのような法律が関係するか、どのような点が問題になるか、解決策はどうすればいいのかといったことを「リーガルチェック」を通して確認しておくことが重要です。
法的問題の抽出や解決策の提案は、事業者自身や自社で抱える専門家で行うことも考えられますが、初期段階から、関連事業に精通した外部の弁護士と顧問契約をして対応してもらうことも有効であると考えられます。
どのようにリーガルチェックを行うべきかは、会社の状況によって異なるため、事業者は、自社の行う新規事業について全体像を把握したら、どの点は自身や自社で確認できるのか、外部の専門家に頼るべきかといったことを慎重に検討して対策する必要があります。
1 新規事業に対するリーガルチェックの必要性
(1)リーガルチェックとは?
「リーガルチェック」とは、弁護士などの法律の専門家に、ビジネスモデルや契約書が法的に問題ないかを審査してもらうことをいいます。 なぜ、このようなリーガルチェックを行うのかというと、想定される問題を洗い出して、あらかじめ対応策を用意することで、余計なトラブルを予防・回避するためです。このようにしておくことで、事業者は、安心して事業に集中できるようになります。 もっとも、仮に、リーガルチェックを怠って、後から新規事業が違法なものであったと判明すると、事業者は、取り返しのつかないリスクを負う可能性があります。(2)リーガルチェックをしないことのリスク
事業者がリーガルチェックを怠り違法な事業を行った場合に負うリスクは、以下のとおりです。- 一時的にでも違法な事業を行っていたことから会社の信用がダウンしてしまう
- 違法な事業を行っていたことに対してペナルティ(罰則)が科される可能性がある
- サービス自体継続できなくなるおそれがある
- 違法な点が判明した場合、対策を考えるために専門家に依頼するなどして多大な費用がかかる
このように、「Osushi」は、
- Osushiの取引 ↓
- Osushiを送る ↓
- 換金
①Osushiの取引
ユーザーはウォンタから、Osushiというアイテムを購入します②Osushiを送る
ユーザーがブロガーやイベントの司会者など、応援したいと思ったクリエーターにOsushiというアイテムを送ります。③換金
クリエーターは、ユーザーから受け取ったOsushiというアイテムを、お金にかえます。 この「Osushi」というサービスでは、Osushiというアイテムを換金できるという点が問題となりました。Osushiというアイテムが換金できることで、実質、ウォンタはユーザーとクリエーターの間で送金を行っていることになり、金融庁への登録が必要となる「資金移動業」にあたる可能性があったところ、ウォンタは、登録を受けずに「Osushi」のサービスを提供してしまいました。 そのため、ウォンタは、サービス開始直後、この点につき、多数のユーザーからの指摘を受け、「Osushi」を停止せざるを得なくなり、サービスの大きな特徴である換金できるというポイントを修正しなければいけなくなりました。 このように、せっかく新規性のあるビジネスを構想し、実行したとしても、事業を開始した後に違法性が発覚すると、修正に費用もかかるうえ、サービス内容の修正によって、当初に予定していたものとは別物になってしまう可能性があります。 また、なによりもユーザーからの信頼がなくなり、修正してもサービスを続けることができなくなってしまうおそれもあります。 以上のように、リスクを避けて新規事業を問題なく行うためにも、リーガルチェックをしっかりと行う必要性が高いといえます。 では、事業者は実際にリーガルチェックを行うために、新規事業に関する法的問題をどのように検討していけばいいのでしょうか。2 法的問題点の検討フロー
新規事業における法的問題点を検討する場合、以下の図の流れで行います。
このように、新規事業の法的問題点は、
- 新規事業の全体像の把握 ↓
- 規制・問題点の抽出 ↓
- 規制・問題点の解決方法の検討
3 新規事業の全体像の把握
まず、事業者は、自社が行う予定の新規事業について、全体像を把握するようにしましょう。事業の全体像が分かると、法的問題点を洗い出す際に手掛かりになります。
事業の全体像を把握するためには、自分で図を作成してみることが有効です。
図を作る際には、
- 誰が(who)
- 誰に(whom)
- いつ(when)
- なにを(what)
- どのように(how)
- 登場人物
- 行われる取引
- お金、モノ、情報の流れ
- 順序、タイミング
4 規制・問題点の抽出
新規事業の全体像を把握した後、事業者には3つのフェーズに分けて新規事業にかかわる規制や問題点を抽出するという方法があります。
この方法では、事業者は、
- 情報収集 ↓
- 情報の精査 ↓
- 専門家に相談
(1)情報収集
事業者は、新規事業に適用される規制や問題点に関する情報を収集していきます。①情報収集の方法
情報収集の方法には、以下の方法があります。-
(ⅰ)他社のホームページ検索
(ⅱ)キーワード検索
(ⅲ)省庁作成のガイドライン検索
(ⅳ)協会作成の自主規制検索
②情報収集の具体例
情報収集の具体例として、電子マネーを使ったモバイル決済事業(フィンテック事業)を新規事業として実施するケースを考えてみましょう。以下の図をご覧ください。
このように、モバイル決済を新規事業として実施しようとする場合、
-
(ⅰ)モバイル決済とは?
(ⅱ)ホームページの確認
(ⅲ)資金決済法で問題となる点
(ⅳ)ガイドラインを検索
(ⅴ)自主規制を検索
- モバイル決済とはそもそもどういったものをいうか
- どのようなモバイル決済事業があるのか
- 電子マネーの決済だけでなく、送金などのサービスも行っている
- 「資金決済法に基づく表示」という表記がある
- LINE Cash
- LINE Money
- 前払式支払手段
- どのような条件があると前払式手段となるか?
- 届出などは必要か?
- 何をしたら違反となってしまうのか?
- 違反とならない対処法は?
(2)情報の精査
まず、事業者は、収集した情報が正しいかを確認します。なぜそのような確認が必要になるのかというと、とくに、ネット上の記事やブログは、- 誤った情報が載せられている
- 独自の解釈によって偏った情報が載せられている
- 情報が古く法改正に対応していない
- 消費者相手のビジネス→消費者契約法
- 個人情報のやり取り→個人情報保護法
- 労働者と会社のマッチング→職業安定法
- モバイル決済サービスの提供→資金決済法、割賦販売法
- 民間業者による債権回収→債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)
- 料理の提供→食品衛生法
(3)専門家に相談
上で説明したように、情報を収集、精査していくことで、事業者は新規事業に適用される法律・規制や問題点を抽出することになります。 もっとも、事業者の中には、- 様々な媒体から情報を収集したが漏れがないか不安が残る
- 情報を精査したが、法律の規制が本当に自社の新規事業にあてはまるものなのかわからない
5 規制・問題点の解決方法の検討
抽出した法的問題点の解決方法の検討を、専門家ではない経営者のみで行うことは難しいといえます。
そのため、事業者としては、以下のやり方を選択することが考えられます。
- 自社や外部の専門家の活用
- 行政庁に対する照会
(1)自社や外部の専門家の活用
専門家を活用するというやり方です。この場合、- 自社にいる法務部員や弁護士 ↓
- 外部の弁護士などの専門家
①自社にいる法務部員や弁護士
まずは、自社にいる法務部員や弁護士に新規事業の法的問題点について検討してもらいます。 自社の抱えている法務部員や弁護士は、社内の事情に詳しく、各部署との連携もとりやすいため、スピーディーに問題の解決を図ることができると考えられます。 もっとも、- 自社で法務部員や弁護士を抱えていない
- 自社の法務部員に検討してもらったが、弁護士のお墨付きが欲しい
②外部の弁護士などの専門家
外部の弁護士に新規事業に適用される規制や問題点についての解決方法の検討を依頼することができます。 また、やりたい新規事業に強い外部の弁護士に相談することで、独自のアドバイスが得られる可能性があります。 このように、経営者は、自社や外部の専門家を頼って新規事業に関する法的問題点を解決することが考えられます。(2)行政庁に対する照会
事業者は、新規事業の法的問題点を解決しようとする際に、法律の解釈がわからないといった場合、行政庁に対する照会を行うという方法があります。 行政庁に照会する具体的な方法としては、たとえば、以下のような方法があります。- 直接の電話・訪問(直接照会)
- ノーアクションレター制度の活用
- グレーゾーン解消制度の活用
- その他新制度
①直接の電話・訪問(直接照会)
事業者は、照会対象の法律を管轄している行政庁に直接電話を掛けたり、訪問して質問したりなどして、疑問点を解消することができます。 直接照会を行うと、対象となる法律の解釈だけでなく、たとえば、- 新しく法規制が検討されていること
- 通達などによって行政庁独自の運用が予定されていること
- 照会の方法
- 照会できる時間帯
②ノーアクションレター制度の活用
「ノーアクションレター制度」とは、事業者が、事業活動に関係する行為について、特定の法律の条項が適用されるかを確認してもらえる制度のことをいい、以下のような特徴を備えています。- 照会対象:特定の法律の条項(許認可や、業務停止といった事業者に不利な処分などに限定)
- 行政機関の回答の公表:あり
- 照会先:照会したい法律を管轄している行政機関の窓口
③グレーゾーン解消制度の活用
「グレーゾーン解消制度」とは、事業者が、事業活動に関係する行為について、自社の事業計画をもとに、特定の法律の条項の適用があるかどうかを確認してもらえる制度のことをいい、以下のような特徴を備えています。- 照会対象:特定の法律の条項(限定なし)
- 行政機関の回答の公表:基本的になし
- 照会先:事業を所管する省庁の窓口だけでOK
- ノーアクションレター制度:特定の条項が適用されるかということについて、一般的な回答をされる ⇔
- グレーゾーン解消制度:事業者ごとの事業計画に即して判断される
④その他新制度
事業者は、その他にも- サンドボックス制度
- 新事業特例制度
- 企業の匿名性を確保しながら直接照会できるため、照会先の行政庁に企業名を把握され目をつけられないで済む場合がある
- 知見のある専門家が質問するから、事業者では気づかないポイントなども聞いてくれて、より詳細な回答を得られる可能性がある
6 事業を継続するうえでのリーガルチェックの必要性
新規事業を始めるときに、リーガルチェックを万全に行っていたとしても、後に法律改正があったり、新しい法律や通達などがでてきて新規事業を見直さなければならないといったことがあるかと思います。
そのため、リーガルチェックは、新規事業を始めるときだけでなく、新規事業を始めた後も継続して行う必要があるといえます。
法律の改正や新しい法律がでてきた段階で弁護士などの専門家に依頼することも考えられますが、事業者自身で法改正などの変更すべてを把握するのは難しいため、顧問契約を依頼して継続的にチェックしてもらうといった方法を選択することが有効です。
弁護士と顧問契約をすると、たとえば、以下のような対応をしてもらえます。
-
【事業開始前】
- 新規事業の適法性をチェックしてくれる
- 必要な許認可や新規事業を適法に行うためのスキームについてアドバイスをしてくれる
-
【事業開始後】
- 法律改正や新しい法律が出た場合に、どのように新規事業を変更すべきか、といった判断も含め対応をしてくれる
7 小括
事業者は、新規事業を安心して行うには、どのような法律が関係するか、どのような点が問題になるか、解決策はどうすればいいのかといったことを「リーガルチェック」を通して確認しておくことが重要です。
法的問題の抽出や解決策の提案は、事業者自身や自社で抱える専門家で行うことも考えられますが、初期段階から、関連事業に精通した外部の弁護士と顧問契約をして対応してもらうことも有効であると考えられます。
どのようにリーガルチェックを行うべきかは、会社の状況によって異なるため、事業者は、自社の行う新規事業について全体像を把握したら、どの点は自身や自社で確認できるのか、外部の専門家に頼るべきかといったことを慎重に検討して対策する必要があります。
8 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。- 「リーガルチェック」とは、弁護士などの法律の専門家に、ビジネスモデルや契約書が法的に妥当であるかどうかを審査してもらうことをいう
- リーガルチェックを怠ると、事業自体を続けられなくなるといったリスクを負う可能性がある
- 新規事業の法的問題点は、①新規事業の全体像の把握、②規制・問題点の抽出、③規制・問題点の解決方法の検討、といった順で検討する
- 新規事業の全体像を把握するには、自分で図を作成してみることが有効である
- 法律の規制や問題点を抽出は、①情報収集、②情報の精査、③専門家に相談といった流れで行うことが考えられる
- 情報収集では、①他社のホームページ検索、②キーワード検索、③省庁作成のガイドライン検索、④協会作成のガイドライン検索、という4つの方法が考えられる
- 法的問題点を抽出する段階で、外部の専門家である弁護士に相談することも有効である
- 法的問題点の解決方法の検討において、①自社や外部の専門家の活用、②行政庁に対する照会、といった2つの方法が考えられる
- 行政庁に対する照会は、①直接の電話・訪問(直接照会)、②ノーアクションレター制度の活用、③グレーゾーン解消制度の活用、④その他新制度、といった4つの方法がある
- リーガルチェックは新規事業開始のときだけでなく継続して行う必要がある











