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企業法務

転売は古物営業法に違反する?転売が問題となる2つの条件などを解説

2020.08.252025.11.27
転売
この記事の目次
    はじめに 「オークションサイトで転売すると儲かるらしい」「せどりで収入を増やしたい」など、副業やネットビジネスとして「転売」の手法が使われることがあります。 とはいえ、近時では、需要の大きい商品や限定商品を大量に買い占め、高値転売で利ざやを稼ぐ「転売ヤー」と呼ばれるユーザーも、問題視されています。 この点、「転売」との関係で問題となる法律の一つに「古物営業法」があります。 これから転売による手法で事業の展開を検討している事業者や、そのような取引の場を提供するプラットフォーマーにとって、「転売」と古物営業法上の規制がどのように関係してくるのかは気になるところです。 この記事では、
    • 古物営業法はどのような法律か
    • 転売が問題となるケース
    • 古物営業法上のペナルティー
    などについて、弁護士が詳しく解説します。

    1 古物営業法とは

    古物営業法 「古物営業法」とは、盗品の売買を防止し、盗品を迅速に発見できるようにするため、古物営業に関して、さまざまなルールを定めた法律です。 ここでいう「古物」とは、以下のいずれかを満たすものをいいます。
    1. 一度使用されたもの
    2. 使用していない物品で、使用するために取引されたもの
    3. 1または2を補修・修理したもの
    このように、古物は「一度使用されたもの」に限られず、未使用の新品であっても、使用するために取引されたものであれば古物とみなされます。 もっとも、これらの条件を満たす物すべてが古物として扱われるわけではありません。古物営業法は、美術品や衣類、時計・宝飾品などを含む13種類の物品等を「古物」として定めているため、これらにあてはまらないものは、たとえ、上記の条件を満たしていたとしても、古物にはあたりません。 古物を扱う営業(古物営業)は、大別して、以下の3つの業態に分かれており、これらを行う場合には、許可や届出が必要になってきます。
    • 古物の売買・交換(古物商)
    • 古物市場の経営(古物市場主)
    • 古物の売買をしようとする者のあっせんを競りによって行うこと(古物競りあっせん業)
      ※「古物」について詳しく知りたい方は「古物営業法とは?古物取引で知っておくべき9つのルールについて解説」をご参照ください。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 古物営業法との関係でみる転売の問題点

    問題点 「転売」とは、買った物をさらに他人に売り渡すことをいいますが、古物営業法との関係で問題はないのでしょうか。 この点、転売そのものは違法行為にあたらないというのが原則です。古物営業法においても、転売を禁止するような規定は存在しません。 たとえば、「大掃除をして処分する不用品がたくさん出てきたから、ネットフリマやオークションに出そう」といったように、個人が処分する目的で、ネットフリマなどで不用品を売る行為は、古物営業法との関係では問題となりません。 また、趣味で収集したコレクションを出品するような行為についても同様に問題にはなりません。 ですが、営利目的で商品などを購入し、その商品を他人に売り渡すことを継続的に繰り返している場合において、その商品が「古物」にあたれば、そのような転売は、古物営業法との関係で問題になってきます。

    3 転売が問題となるケース

    問題 「古物営業」とは、営利を目的として、反復継続して古物に関する取引を繰り返すことをいいます。 そのため「転売」が、
    1. 営利を目的としている
    2. 反復継続して行われている
    という2点を満たすと、その転売者は「古物商」にあたるため、古物営業法上の許可を受けることが必要です。

    (1)営利を目的としている

    「営利目的」とは、その行為から利益を得ることを目的としているという意味です。 たとえば、転売目的で、限定商品を大量に購入しているような場合は、営利目的があると認められる可能性が高いです。

    (2)反復継続して行われている

    「反復継続して」とは、簡単に言うと、繰り返し行われることをいい、転売との関係で見ると、「転売目的による商品の購入+商品の売り渡し」が継続的に行われることを意味します。 たとえば、記憶に新しいところですが、人気漫画でもある「鬼滅の刃」の最新刊の初版が定価をはるかに上回る価格でフリマサイトに出品されるという事態が生じました。 これは、いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる連中が、転売目的で大量に買い占めた「鬼滅の刃」を、不当に高く釣り上げた価格で出品・転売したということに起因しています。 このように、転売ヤーが営利を目的としていることは明らかであるため(上記1)、転売行為が反復継続して行われている場合には、古物商にあたり、古物営業の許可を受ける必要があります。 なお、昨今、ニュースにも取り上げられましたが、現在において、以下のような物品を転売することは禁止されています。 特に、衛生マスクや消毒液については、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が原因となって、不当な転売行為が多く見受けられたことから、転売が禁止されるに至りました。
    • 音楽コンサートやスポーツ競技などの興行チケット
    • 衛生マスク
    • 消毒液
    もっとも、これらの物品は、古物営業法が根拠となって転売が禁止されているわけでなく、それぞれに別の法律が根拠となって転売が禁止されています。 そのため、当然ではありますが、たとえ古物営業の許可を受けている場合であっても、これらの物品を転売することはできません。   ※転売ヤーの違法性について詳しく知りたい方は「鬼滅の刃の最新刊の転売は違法?転売ヤーに関係する2つの法律を解説」をご参照ください。

    4 許可を受けた事業者に対する古物営業法上の規制

    規制 古物営業は、先に見たように、業態に応じて以下の3つに分かれており、それぞれに課される義務の内容にも一定の違いがあります。 以下では、古物商と古物市場主について、それぞれに課される義務を見ていきたいと思います。 古物商と古物市場主に課される主な義務は、以下の5つです。
    1. 取引相手の本人確認義務(古物商)
    2. 不正品の報告義務(古物商)
    3. 帳簿への記載義務(古物商・古物市場主)
    4. 標識の掲示義務(古物商・古物市場主)
    5. 管理者の選任義務(古物商・古物市場主)

    (1)取引相手の本人確認義務(古物商)

    古物商は、取引をする場合、その相手方が本人であるかどうかを確認するために、氏名や住所、年齢などを確認しなければなりません。 具体的には、以下のような方法で確認を行います。
    • 対面の場合 ⇒ 運転免許証や健康保険証、その他の身分証明書の提示を受けて確認する
    • Web上や電話など ⇒ 電子署名入りのメールまたは送付を受けた印鑑登録証明により確認する

    (2)不正品の報告義務(古物商)

    「不正品」とは、盗品や偽物などのことを言います。 取引相手が持ち込んだ古物に不正品の疑いがあると認められる場合、事業者は直ちに警察官にその旨を報告しなければなりません。 このような報告義務を事業者に課すことにより、窃盗などの犯罪を防止するとともに、被害を迅速に回復することが可能になります。 盗品などの疑いがある古物は、警察が30日の範囲内で「差止め」を命ずることができます。 「差止め」とは、盗品などの疑いがある古物を保管するよう命ずるものであり、差止めを受けた古物は、それ以降販売することができなくなります。

    (3)帳簿への記載義務(古物商・古物市場主)

    古物商は、原則として、取引相手から受け取った古物について、一定の事項を記録しなければなりません。 具体的には、以下のような事項を帳簿に記録する必要があります。
    • 取引の年月日
    • 古物の品目や数量
    • 古物の特徴
    • 取引相手の住所・氏名・年齢、生年月日
    • 身分確認方法
    帳簿は、最後に記載した日から3年間、営業所において保存しなければなりません。 また、古物市場主は、古物市場で取引される古物について、その取引の都度、取引の年月日や古物の品目・数量、古物の特徴に加え、取引に係る当事者の住所と氏名を帳簿に記載しなければなりません。

    (4)標識の掲示義務(古物商・古物市場主)

    古物商・古物市場主は、営業所や古物市場ごとに、見やすい場所に、標識を掲示しなければなりません。

    (5)管理者の選任義務

    古物商・古物市場主は、適正に業務を遂行するために、営業所や古物市場ごとに、管理者を一人選任しなければなりません。

    5 プラットフォーム運営者の責任は?

    責任 オークションサイトに代表される古物市場主ですが、自社のサイトで違法な転売が行われている場合、その運営者(プラットフォーマー)は何らかの責任を負うことになるのでしょうか。 現状、プラットフォームで行われた違法な転売行為により損害を受けた者がいる場合に、プラットフォーム運営者に一定の責任を負わせるようなルールは存在しません。 とはいえ、あらゆるケースにおいてプラットフォーマーが一切責任を負わないと言い切ることはできません。 プラットフォーマーは、あくまで、商品などを売買する場を提供しているだけに過ぎませんが、そのような場を提供している以上、そこでは取引の健全性が確保されていなければなりません。 たとえば、以下のような措置を講じておくことが考えられます。
    • 違法な商品が出品されないよう注意喚起する
    • 出品者の情報を開示する
    • 信頼評価システムを導入する
    • 通報システムを導入する
    このような措置を一切講じることなく、違法な商品が出回っていたりすると、事業者のサイトは信用が下がるだけでなく、違法な商品を購入したことにより損害を受けた者から「不正な転売に対して、何ら対策を取らなかった」などと言われ、法的措置を取られる可能性があります。

    6 古物営業法に違反した場合のペナルティ

    ペナルティ 古物営業法に違反した場合、事業者は、一定のペナルティーを課される可能性がありますが、ここでいうペナルティは、大きく分けると、以下の2つに分類されます。
    1. 罰則
    2. 行政処分

    (1)罰則

    古物営業法では、主に、以下の行為について罰則が定められています。
    • 無許可営業
    • 名義貸し
    • 不正手段による許可の取得
    • 営業停止命令違反
    これらに違反すると、
    • 最大3年の懲役
    • 最大100万円の罰金
    のいずれかを科される可能性があります。

    (2)行政処分

    古物営業法に違反した事業者は、罰則に加え、行政処分を課される可能性があります。 主なものは以下の2つです。
    1. 営業停止
    2. 営業許可の取消し

    ①営業停止

    古物営業法やその他の法令に違反し、盗品の売買の防止や盗品の速やかな発見を阻害するおそれがある場合は、古物営業の全部または一部の停止(最大6ヶ月)を命じられる可能性があります。

    ②営業許可の取消し

    事業者において、以下のような事実が発覚した場合、営業許可の取り消し対象となります。
    • 不正な手段を使って営業許可を受けた
    • 6ヶ月以上営業をせずに休業している
    • 役員が禁錮以上の刑罰を受けて、その執行が終わり、または執行を受けることが消滅した日から5年を経過していない
      ※古物営業法に違反した場合のペナルティについて、詳しく知りたい方は「古物営業法に違反した時のペナルティは?罰則と行政処分の2つを解説」を参照ください。

    7 小括

    小括 転売をすることは、基本的に違法ではありませんが、その態様によっては、古物営業法上の許可を受ける必要があります。 また、古物について売買の場を提供するプラットフォーマーは、取引の健全性を確保するために一切の措置を講じることが必要になるものと考えられます。 許可を得ることが必要であるにもかかわらず、無許可で転売行為を繰り返したり、漫然とプラットフォームを運営するようなことをすると、ペナルティーを科される可能性があります。 許可を受けた後に課される規制を含め、自社の事業に関係する規制をきちんと理解したうえで、事業を展開していくことが大切です。

    8 まとめ

    これまでの解説をまとめると、以下の通りです。
    • 「古物」とは、①一度使用されたもの、②使用していない物品で、使用のために取引されたもの、③「①・②」を補修・修理したものを指す
    • 「古物営業」は、①古物商、②古物市場主、③古物競りあっせん業の3つをいう
    • 転売自体は違法ではない
    • 転売が、①営利を目的としているとき、②反復継続して行われている、という2つの条件を満たすと、「古物商」にあたるため、古物営業法上の許可を受ける必要がある
    • プラットフォーム運営者は、違法な転売が行われないよう一定の措置を講じる必要があるものと考えられ、これを怠ると、場合によっては、民事責任を負う可能性がある
    • 古物商や古物市場主に課される義務として、①取引相手の本人確認義務、②不正品の報告義務、③帳簿への記載義務、④標識の掲示義務、⑤管理者の選任義務などがある
    • 古物営業法に違反した場合、事業者は、①罰則と②行政処分を課される可能性がある
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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