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時事ニュース

アディーレ業務停止の理由とは?景表法3つのポイントを弁護士が解説

2017.10.172025.11.27
アディーレ業務停止の理由とは?景表法3つのポイントを弁護士が解説
この記事の目次
    はじめに みなさん、「アディーレ法律事務所」って知っていますか? あの有名なお笑いコンビ、ブラックマヨネーズをCMに起用したことでも有名となり、テレビで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか? さて、そのアディーレ法律事務所ですが、先日、弁護士会という組織から、2か月間の業務停止処分を受けてしまいました。 アディーレは「過払金返還請求の着手金を今から1カ月間、無料にする」、つまり、「今だけ無料!」と広告しつつ、実際は、5年近く無料キャンペーンを行っていました。 これが、消費者の判断を誤らせるおそれがあることから、景表法に違反するとして、業務停止処分を受けたのです。 ですが、「今だけ無料!」の広告の何がいけないのでしょうか? 無料であることことに変わりはないのだから、アディーレに依頼するクライアントからみたとき、特段、不都合はなさそうにもみえます。 そこで、以下では、アディーレがなぜ業務停止処分を受けたのかを景表法の内容を踏まえて、わかりやすく解説していきます。

    1 アディーレ業務停止事件の内容

    アディーレ業務停止事件の内容 「アディーレ法律事務所」とは、日本の法律事務所で、借金返済の手伝いをする債務整理、交通事故や離婚問題など、主に一般消費者向け(toC)の事件を取り扱っている事務所です。 現在、180人以上も要する大型のtoC向け法律事務所で、弁護士業界でも一二を争う知名度を誇っていました。 ただ、その弁護士事務所らしからぬ営業戦略や広告手法、「出る杭は打たれる」という弁護士業界の風習もあってか、以前から何かと批判を受けてはいました。 そんな中起きたのが、今回の「アディーレ業務停止事件」です。 アディーレは、「過払金返還請求の着手金を今から1カ月間、無料にする」(「今だけ無料!」)と広告していたのですが、実際のところは、5年近くも無料キャンペーンを行っていたのです。 この広告について、「消費者の利益を守る弁護士事務所が、率先して消費者を欺いている」として、「消費者庁」が、2016年2月に、「措置命令」(違法な広告を直しなさい!という命令。)を出していました。 こういった事態を重く見た、弁護士を取り締まる「弁護士会」という組織が、「アディーレは、弁護士でありながら法律を破っている」ということなどを理由に、業務停止処分を下したのです。 以上がアディーレ業務停止事件のザックリとした内容になります。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 アディーレ業務停止の理由は?

    アディーレ業務停止の理由は? では、なぜアディーレは業務停止処分をされてしまったのでしょうか? それは、「景表法(けいひょうほう)」に違反してしまったからです。 ※厳密にいうと、景表法に違反して、それが「弁護士法」という法律と弁護士業界の内部ルールに引っかかってしまったことによります。

    (1)景表法とは

    「景表法」とは、企業が商品やサービスを消費者に向けて広告する際のルールが書かれた法律のことです。 私たちが商品やサービスを買う際には、ふつう「安くていい物」が欲しいですよね。 それなのに、ウソやオーバーな「盛りすぎ広告」がされた場合、ユーザーは、商品・サービスの本当の価値を判断できず、本来であれば買わないような物まで買ってしまうリスクがあります。 こういった被害者を出さないために作られたのが景表法です。

    (2)景表法の表示ルール

    景表法が規制をかける表示ルールは、大別して2種類があります。
    1. 「優良誤認」(ゆうりょうごにん)
    2. 「有利誤認」(ゆうりごにん)
    アディーレ業務停止処分で問題となったのは、景表法の表示ルールのうち、②の「有利誤認」のルールです。 次の項目で「有利誤認」とは何かについて、詳しくみていきましょう。

    3 有利誤認とは?

    有利誤認とは さて、アディーレが業務停止処分を受けた理由は、「今だけ無料!」の表示(広告)が景表法の表示ルールの中でも、「有利誤認」にあたると判断されたからでした。 「有利誤認」とは、商品やサービスの値段・価格の部分を著しく安くみせる表示をいいます。 言い換えると、ユーザーから見たときに、「すごくお得感がある!これなら買いたい!」と思わせつつ、実のところは、全くお得ではない表示のことです。 例えば、打消し表示といって、「本来なら1000万円のところを・・なんとなんと!今だけ1万円です!」といった具合に、えげつないお得感を演出しつつ、実際は、もともと1万円で販売しているようなケースです。 とはいえ、お得感を演出することは、商売における常套手段ですので、あらゆる「お得感を演出する表示」が禁止されるわけではありません。 禁止されるのは、あくまでも「著しい」お得感を演出するケースだけです。 そのため、「たんなるお得感」を演出したにすぎない広告については、セールストークの範囲内として、合法となります。 これは、ビジネスの世界では、自社サービスを売るために「セールストーク」が行われるのは当然であり、消費者としても、それを承知の上で買っているからです。 ただ、度を過ぎた「盛りすぎ広告」については、消費者による判断を誤らせるリスクが高いことから、「著しく」有利な表示に限り、これを禁止したのです。 他方で、「優良誤認」も規制の内容は違いますが、目的は一緒です。これは、価格ではなく、提供する商品・サービスの「質・内容」の面について、著しく有利な表示をする場合をいいます。 例えば、「このベルトを巻きさえすれば、たちまち1週間で30キロ減ります!」といったように、商品の内容面を盛りすぎるようなケースです。 ※具体の表示が有利誤認になるかどうかは、消費者庁が出している各種「景表法ガイドライン」を参照してください。 ※また、景表法全般について詳しく知りたい方は、「盛りすぎ広告に注意!5分でわかる景表法に違反しないためのポイント」をご参照ください。

    4 アディーレ事件における「有利誤認」

    アディーレ事件における有利誤認とは さて、アディーレは「過払金返還請求の着手金を今から1カ月間、無料にする」(「今だけ無料!」)と広告しつつ、実際は、5年近く無料キャンペーンを行っていました。 これは、「閉店セールで、今だけ80パーセントオフ!」といいながら、実際は、何年間も閉店セールをしているケースと一緒ですね。 ただ、「弁護士費用が無料になることそのものは、嘘ではないのだから、アディーレに依頼するクライントからみたら、何も損はないのでは?」と思われるかもしれません。 しかし、クライアントが弁護士に事件を依頼する際に重要視するのは、弁護士費用だけではありません。担当弁護士の経験、人柄、能力などなど、弁護士費用がいくらかかかるのか以外の要素も加味して、依頼する弁護士を選びます。 ところが、「今だけ無料!」というアディーレの広告をみたとき、クライアントとしては、「ほかにも弁護士はいるけど、今だけ無料になるなら、期間が過ぎないうちにアディーレに依頼しよう!」と考えがちです。 「今だけ無料!」のお得感によって、本来なら「ほかの弁護士に依頼できた」という選択肢を「えげつないお得感」によって奪う結果になるわけです。 このような広告を1か月といいながら5年間も続けていたことから、「有利誤認」にあたると判断され、措置命令を出されたのでした。

    5 ペナルティ

    ペナルティ

    (1)景表法上のペナルティ

    さて、景表法に違反した場合、どういったペナルティが課されるのでしょうか? 違反した場合、すぐに何らかのペナルティが発動されるわけではありません。 消費者庁というお役所から、 ①言い訳をする機会(「弁明の機会」)が与えられます。ここで言い訳に成功すれば、ペナルティの発動はありません。 ②仮に、言い訳(弁明)に失敗すると、違法な表示(広告)を直しなさい!との「措置命令」を受けてしまいます。 ③ただ、措置命令を受けて「すいませんでした。ちゃんと言われたとおり改善します!」と常に平身低頭、ただただ謝罪し、素直にこれに従って改善すれば、これ以上のペナルティは受けいないですみます。 ④ところが、ヤンキーのように「うるせーんだよ!」と反抗して、不合理にも教師(消費者庁)の言うことに従わない、あるいは、注意されても無視するといった「シカト」をしていると、伝家の宝刀である「刑事罰」(罰則)が発動される可能性があります。 刑事罰(罰則)としては、
    • 最大2年懲役
    • 最大300万円の罰金
    のどちらか、または両方が用意されています。 今回のアディーレ業務停止事件では、「今だけ無料!」広告について、措置命令を受けていたので、②のステージまで突入していたわけです。 「景表法に違反した場合のペナルティ」

    (2)弁護士法上のペナルティ

    アディーレ業務停止事件では、実は、景表法上は、措置命令を受けた以上のペナルティを受けておりません。 「業務停止」を受けた直接の根拠は、景表法ではなく、弁護士の活動を取り締まる法律である「弁護士法」と弁護士業界の内部ルールに違反したことにあります。 「弁護士法」とは、弁護士の仕事に関する様々な規制やルールが書かれた法律です。 その中には、弁護士が「品位を失うべき非行」をした場合には、弁護士会という組織が、弁護士に制裁(懲戒)を加えることができるというルールが設けられています。 「品位を失うべき非行」とは、法律に違反した場合はもちろん、弁護士に求められる職責・公正さに違反した場合などを広く含むとされています。 ※正直なところ、この判断は弁護士会の「さじ加減」でなされるため、基準としては不明確すぎるとの批判もあるところです。
      • 【第56条】
     
      • (懲戒事由及び懲戒権者)
    1弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。 2懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。 3弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る そして、「品位を失うべき非行」が認められた場合には、弁護士会は、違反した弁護士に対して、制裁(懲役)を加えることができます。 制裁(懲役)の種類としては、4種類あり、軽いほうから重い順に、以下のようになっています。
    1. 戒告:今後は気をつけてね、という注意・指導
    2. 業務停止:一時的に弁護士業務ができなくなる
    3. 退会命令::所属会から追放され、弁護士としての活動ができなくなる
    4. 除名:弁護士資格を失う
    このルールは、弁護士が単なるビジネスにとどまらず、「弱者救済・正義の実現」の使命を負っていることから、自分らを戒める自主ルールとして作られたものです。 今回のアディーレ業務停止事件においては、「今だけ無料!」の広告について、費者庁はから、2016年2月に、景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、措置命令を受けていました。 1か月のみの無料とうたいながら、実際は5年間も無料キャンペーンを行っていた事態を重く見た弁護士会は、「極めて悪質な行為」、長期間にわたって多数回反復継続されている組織的な非行と言わざるを得ません」などの理由で、「品位を失うべき非行」にあたり、2か月間の業務停止処分としました。

    6 小括

    小括 アディーレ業務停止事件では、弁護士という、本来でれば模範になるべき存在が景表法に違反した、ということで注目されました。 合法なセールストークと違法な「盛りすぎ広告」の分かれ目は、なかなか判断が難しいところです。 何せ、法律のプロである弁護士でさえ、違反してしまうぐらいだからです。 広告を出そうとしている企業としては、消費者庁が出している各種「景表法ガイドライン」を参照しながら、自社の広告が景表法に違反しないかどうかを入念にチェックしてから、出稿するようにしましょう。

    7 まとめ

    これまでの解説をまとめますと以下のとおりです。
    • アディーレ法律事務所が業務停止処分を受けた理由は、「景表法」に違反したから
    • 景表法のルールには大きく分けると、①優良誤認、②有利誤認の2種類ある
    • 優良誤認は、内容を偽る場合をいう
    • 有利誤認は、値段を偽る場合をいう
    • アディーレ法律事務所が業務停止を受けたのは、「今だけ無料!」広告が、「有利誤認」にあたると判断されたから
    • 景表法に違反すると、最大2年間の懲役、最大300万円の罰金というペナルティがある
    • 景表法に違反するかどうかは、消費者庁の各種ガイドラインを参照しながら判断するのがベター
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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