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時事ニュース

アマゾン最安値保証条項削除にみる、ECサイト運営の法的問題とは?

2017.06.172017.06.17
アマゾンマーケットプレイスの最安値保証条項の削除にみる、独占禁止違法
この記事の目次
    はじめに  流通業者最大手のアマゾンジャパンが、「アマゾンマーケットプレイス」を利用する業者との間で結んでいた、「他のECサイトに比べて最安値での出品を保証させる」という条項(「最安値保証条項」)を見直すことを発表しましたよね。 日経新聞:公取委、アマゾンの調査終了へ 最安値保証の契約見直しで  最安値保証条項は、業者に対して、出品する商品の価格を安く設定するように求めるものですから、消費者(ユーザー)にとっては、嬉しい限りで、何も問題はなさそうに見えます。  しかし、アマゾンジャパンは、前々から、「最安値保証条項」が独占禁止法に違反しているのではないか?という理由で、「吠えない番犬」と言われる公正取引委員会(通称、「公取委」)から調査を受けていました。  では、「最安値保証条項」の何が問題なのでしょうか?なぜ、公取委から調査を受けていたのでしょうか?

    1 最安値保証とは

    最安値保証条項とは

    (1)意味

     まず、アマゾンジャパンによる「最安値保証条項」の意味を確認しましょう。  これは、納入業者に対して「マーケットプレイス」での販売価格について、「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」など、他のECサイトに比べて最も安い値段で出品する義務を課すものです。

    (2)事案の概要

     事案として、アマゾンジャパンは、納入業者が「アマゾンマーケットプレイス」へ商品を出品する条件として、「Amazonマーケットプレイス参加規約」などの中に、以下のような条件をつけていました。
      アマゾンマーケットプレイスへ出品する商品については、「楽天市場」など、アマゾン以外のECサイトで販売する商品の値段と比較して、最も(=一番)安い価格で販売しなさい。
     アマゾンマーケットプレイスに商品を出品したいと考える納入業者は、この規約に同意しないと、商品をアマゾンで取り扱ってもらえないことになっていたのです。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 問題の所在~独占禁止法に違反する可能性がある~

    (1)何が問題なのか?

     では、「最安値保証条項」の何が問題なのでしょうか?  納入業者は、アマゾンマーケットプレイスへ商品を出品する前に、「Amazonマーケットプレイス参加規約」という一種の契約書に同意しています。  本人が同意した上で、アマゾンマーケットプレイスを利用しているのだから、何も問題がないように見えます。  また、ユーザーから見たとき、安く商品を買えるようになることから、問題がないどころか、素晴らしい制度にすら思えます。  そのため、何が問題なのかわかりにくいですよね。  実は、以下のとおり、最安値保証条項は、独占禁止法に違反している疑いがある点が問題となります。

    (2)独占禁止法とは 

    「独占禁止法」(通称、「独禁法」)とは、企業間の取引にまつわるルールが書かれた法律で、大企業などによるパワープレーやアンフェアな行為を取り締まる法律です。  もっとも、独禁法のポイントは、競争に負けがちな弱い立場にある企業を守る点にあるわけではありません。  独禁法の主眼は、自由でフェアな競争のできる環境作りを通じて、間接的に、消費者が「安くていい物」を買える市場を作りあげる点にあります。  そのため、企業の悪意ある行動によって、消費者が「安くていい物」を買えるような市場が歪められたリ、破壊されそうな場合には、独禁法違反という形で、取り締まれる仕組みになっています。

    (3)独占禁止法違反(拘束条件付取引)の疑い

    「アマゾンマーケットプレイス」は日本に存在するECサイトの中で、最もユーザーが多いECサイトの一つです、  そのため、納入業者としては、アマゾンマーケットプレイスを通して、より多くの商品を販売したいところです。  しかし他方で、アマゾン以外にも有力なECサイトとしては「楽天市場」などがあります。  納入業者としては、販売のチャネルは複数あった方がよいため、当然、「楽天市場」などにも、商品を出品しています。  ところが、最安値保証条項がある場合、楽天市場などの商品の値段を下げようとすると、連鎖的に、アマゾンマーケットプレイスでの商品の値段も下げないといけなくなります。  これは、ガチンコの競争を通じて、「安くていい物」をユーザーに提供しようという独禁法の思想に反して、アマゾンの一方的な都合によって価格が不当に安く設定されていることになります(=納入業者の意思は無視されている)。  また、他の市場で値下げした場合、Amazonでも同様の値下げが必要となると、他の市場での取引をやめて、Amazonとのみ取引した方がいい、と考える業者も現れるかもしれません。  そうなった場合、ECサイト事業におけるAmazonの寡占・独占が始まり、他のECサイトは駆逐されます。  その結果、価格競争がなくなり、ユーザーは、本来よりも高値でしか商品を買えなくなってしまいます。  例えば、携帯の有名なキャリアとして、NTT(ドコモ)、ソフトバンク、KDDI(au)の3社があります。しかし仮に、キャリアがソフトバンク1社しか存在しなかった場合、携帯の利用料金がこれまでよりも高額になることはイメージしやすいと思います。  アマゾンのケースもこれと同じリスクがあるということです。  ですから、「安い商品が買えるんだから、何が悪いの?」なんて考えていると、結局、将来的には、ユーザーが損をすることになるんですね。  このような理由で、公取委は、アマゾンジャパンによる「最安値保証条項」による価格拘束(「拘束条件付取引」といいます。)が独禁法に違反するのではないか?との疑いで調査をしていたわけです。

    3 ペナルティ

    労働者派遣法違反のペナルティ  仮に、独禁法違反となった場合(違反行為の性質ごとに、ペナルティの範囲は、微妙に違いますが)
     ①社名公表⇒信用失墜  ②課徴金の支払い⇒膨大なキャッシュの流出  ③最大5年の懲役or罰金(※ある会社は、罰金として6億4000万円を払わされています。)
    という制裁を受けます。

    4 ECサイト事業者が取るべき対応

    EC事業者による対応策とは  ECサイト事業者と納入業者の利用規約などついては、本来、どんな規定を設けても、それについて納入業者が同意していれば、問題はありません。  しかし、今回のアマゾンの例のように、
    ①販売価格に条件をつける ②自社と取引せざるを得ない弱小業者に対して、パワープレーをする
    など、アンフェアな行為をしていると、独禁法によって、足元をすくわれるリスクがあります。  実際問題として、懲役刑や罰金刑のペナルティが発動することは少ないのですが、「社名公表」は、頻繁に行われています。  社名公表がされると、その会社への信用が大暴落する恐れがあるので、ECサイトの運用は慎重に行いましょう。

    5 まとめ

     以上の解説をまとめますと、以下のとおりです。
    • アマゾンジャパンは、「最安値保証条項」を、アマゾンマーケットプレイス利用規約などから削除することを決定
    • 「最安値保証条項」とは、出品する商品については、「楽天市場」など、アマゾン以外のECサイトで販売する商品の値段と比較して、最も(=一番)安い価格で販売することを求める条項のこと
    • 「独占禁止法」とは、企業間の取引にまつわるルールが書かれた法律で、大企業などによるパワープレーやアンフェアな行為を取り締まる法律
    • 独占禁止法違反のペナルティは、おおむね3種類ある。①社名公表、②課徴金の支払い、③最大5年の懲役or罰金
    • ECサイト事業者は、アマゾンの例を反面教師にして、①販売価格に条件をつける、②自社と取引せざるを得ない弱小業者に対して、パワープレーをする、など、アンフェアな行為はしないこと
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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