ドローン事故で誰がどんな法律上の責任を負うの?3つの視点から解説
2017.12.29

この記事の目次
はじめに
ドローンビジネスをする上で、「ドローン事故が発生した場合、自分はどのような法律上の責任を負うのか?」という点について、不安や疑問を抱えている方は少なくないのではないでしょうか?
ドローンは、様々な場面で活用可能性があるため、近時、多くの企業や個人がこぞって「ドローンビジネス」に参入してきています。ただ、ドローンは空を飛ぶものであるがゆえに、落下などの「ドローン事故」が頻発しています。
例えば、首相官邸の屋上にドローンが落下した事件は、テレビでも連日報道されていたため覚えている方も多いと思います。
このように、ドローン企業からすれば、決して他人事ではないドローン事故ですが、
ドローンが何らかの理由で第三者に損害を与えてしまった場合、一体誰がどのような法律上の責任を負うのでしょうか?
操縦の難しいドローンを扱う以上、事故発生のリスクは必ずあり、実際に第三者を巻き込んだ事故が起きてしまったときの対応や責任の内容については、ドローンビジネスをする上では、とても気になるところですよね。
そこで今回は、ドローン事故が起きた際に誰がどのような法律上の責任を負うことになるのか、また、ドローン事故を予防する方法を分かりやすく解説していきます。
「ドローン」とは、無人航空機の一種で、空を飛ぶことができるけど、人が乗って操縦しない機体のことをいいます。
手のひらに乗るものから人を乗せることができるレベルのものまで、人が地上から操縦するもの、または、自動操縦によって飛行するものはすべて「ドローン」にあてはまります。
ドローンは空を自由に飛ばすことができ、さまざまな分野で活用することができます。
その反面、人や建物との接触事故や、落下事故がつきものです。この項目では、ドローンの事故における法律上の責任を検討する前提として、実際のドローン事故の事例と、ドローン事故が発生した原因をさっと確認しておきましょう。
これまでドローン事故の事例とその原因を概観してきましたが、操縦者としては十分気をつけていたつもりでも、さまざまな理由で実際にドローン事故が起きてしまう可能性があります。
その場合、一体誰がどのような法律上の責任を負うことになるのでしょうか?
この点については、次の3つの観点に分けて検討する必要があります。
ドローン事故において検討すべき「民事上の責任」とは、「損害賠償責任」のことをいいます。
「損害賠償責任」とは、何らかの理由によって第三者に損害を与えてしまった場合に、加害者は被害者に対し、発生した損害について金銭的に賠償する責任を負うことをいいます。
例えば交通事故によって第三者にけがをさせてしまった場合、加害者は、被害者に対してケガの治療費や慰謝料などの賠償責任を負います。
同じように、ドローン事故によって第三者にケガをさせたり建物を傷つけてしまうなど、何かしらの損害を与えてしまった場合には、被害者(建物の場合はその所有者など)に対して損害賠償責任が発生します。
これまでは、ドローン事故が起きた場合の「民事上の責任(賠償の問題)」について解説してきました。以下では、ドローン事故の場合の「刑事上の責任」についてみていきましょう。
「刑事上の責任」とは、犯罪を犯した人に対して国から与えられる罰のことをいいます。
例えば、人を殺せば殺人罪となり、死刑となるか無期または5年以上の懲役が科されます。これが「刑事上の責任」です。
ドローン事故の場合にも、その態様が特定の犯罪類型にあてはまる場合には刑事上の責任を負うことになります。
刑事上の責任を負うには、原則として「故意(わざとやること)」がなければいけません。
ただし、「過失(不注意)」が認められれば犯罪として成立するよ、という特別な規定がある場合には、故意が無くても犯罪が成立し、刑事上の責任を負わなければなりません。
以下で、ドローン事故について刑事上の責任を負うケースを「故意」がある場合と「過失」がある場合に分けてみていきましょう。
最後に、行政上の責任についてみていきましょう。
「行政上の責任」とは、社会的な秩序を乱すような行為をしたときに、行政機関から与えられるペナルティのことをいいます。
刑事上の責任と似ている部分もありますが、刑事上の責任が「犯罪を犯したときに科される刑罰のことで、その判断は裁判所が行う」のに対し、行政上の責任は、「犯罪として処罰されるかどうかとは無関係に科されるペナルティで、その判断は行政機関が行う」ものになります。
行政上の責任については、ドローンの飛行に関するルールを定める「航空法」上、事故を起こしたとしても直接的なペナルティはありません。
ただし、ドローンの飛行許可や承認を得る際に、過去に起こした事故が審査の一要素となる可能性はあります。
また、飛行許可や承認を得てドローンを飛ばしていた場合には、事故について国に報告しなければならないケースもあります。具体的には、許可・承認を得る際の申請書に「ドローン事故が発生した時には国へ報告すること」との記載がある場合には、これに従い報告しなければいけません。
ここまでは、「ドローン事故が起きた場合にどのような責任を負うことになるのか」を解説してきましたが、事故を起こさずにすむのであればそれがベストです。そのために必要なのが、「ドローンを飛ばす前の事前対策」です。
事前対策の方法としては、以下のようなものがあります。順番に確認していきましょう。
ドローンビジネスにおいては、物体を空に飛ばす以上、落下や第三者を巻き込んだ事故が起きる可能性は0ではありません。ドローン事故により誰かに損害を与えたら、操縦者や企業が責任を負うことは理解していただけたかと思います。
ただし、操縦者が少し気を付けるだけでドローン事故は予防することができます。ドローンを飛ばすときには、操縦者の責務として必ず事前対策をするようにしましょう。
1 ドローンとは
「ドローン」とは、無人航空機の一種で、空を飛ぶことができるけど、人が乗って操縦しない機体のことをいいます。
手のひらに乗るものから人を乗せることができるレベルのものまで、人が地上から操縦するもの、または、自動操縦によって飛行するものはすべて「ドローン」にあてはまります。
2 ドローン事故の事例とその原因
ドローンは空を自由に飛ばすことができ、さまざまな分野で活用することができます。
その反面、人や建物との接触事故や、落下事故がつきものです。この項目では、ドローンの事故における法律上の責任を検討する前提として、実際のドローン事故の事例と、ドローン事故が発生した原因をさっと確認しておきましょう。
(1)ドローン事故の事例
これまでに起こったドローン事故の事例としては、以下のようなものがあります。- 首相官邸へドローンが落下して懲役刑(執行猶予)
- ドローンを姫路城に衝突させて書類送検
- 高速道路に落下したドローンが走行車と激突して書類送検
- 工事現場の撮影中にドローンが落下、人身事故に
- イベントで上空を飛行していたドローンが落下し6人が負傷
(2)ドローン事故の原因
ドローン事故の原因のほとんどが、ドローンの落下によるものです。ドローン落下の原因としては、以下の点が考えられています。- 操作スキルが足りないままドローンを飛行させている
- ドローンのバッテリー切れ
- 風の影響でドローンの制御が困難になる
- 通信ロスト、電波障害
3 法律上の責任の種類
これまでドローン事故の事例とその原因を概観してきましたが、操縦者としては十分気をつけていたつもりでも、さまざまな理由で実際にドローン事故が起きてしまう可能性があります。
その場合、一体誰がどのような法律上の責任を負うことになるのでしょうか?
この点については、次の3つの観点に分けて検討する必要があります。
- 民事上の責任
- 刑事上の責任
- 行政上の責任
4 法律上の責任①:民事上の責任
ドローン事故において検討すべき「民事上の責任」とは、「損害賠償責任」のことをいいます。
「損害賠償責任」とは、何らかの理由によって第三者に損害を与えてしまった場合に、加害者は被害者に対し、発生した損害について金銭的に賠償する責任を負うことをいいます。
例えば交通事故によって第三者にけがをさせてしまった場合、加害者は、被害者に対してケガの治療費や慰謝料などの賠償責任を負います。
同じように、ドローン事故によって第三者にケガをさせたり建物を傷つけてしまうなど、何かしらの損害を与えてしまった場合には、被害者(建物の場合はその所有者など)に対して損害賠償責任が発生します。
(1)誰が責任を負うのか?
では、この「損害賠償責任」は誰が負うのでしょうか?損害賠償責任を負う者としては、次の5つのパターンが考えられます。- ドローンの操縦者
- ドローン操縦者を雇う企業
- ドローンの操縦を依頼した企業
- ドローンの製造業者(メーカー)
- ドローンの販売業者
(2)どんな責任を負うのか?
①ドローンの操縦者~不法行為責任~
まず、「ドローン操縦者」の賠償責任についてみてみましょう。- 【不法行為責任の要件】
- 他人の権利などを侵害すること
- 故意または過失
- 「1.」の行為によって損害が発生したこと
- 【ドローン事故の原因】
- 操作スキルが足りないままドローンを飛行させている
- ドローンのバッテリー切れ
- 風の影響でドローンの制御が困難になる
- 通信ロスト、電波障害
②操縦者を雇う企業~使用者責任~
次に、ドローン操縦者を雇う企業の賠償責任についてみていきましょう。- 【使用者責任の要件】
- 従業員が
- 企業の事業に関して、
- 第三者に損害を与えてしまったこと
- 加害者である従業員の選任と監督について相当の注意をしたこと
- 相当の注意をしても、それでも損害が生じたこと
③ドローンの操縦を依頼した企業~不法行為責任~
ドローンの操縦を依頼した企業側の賠償責任について検討しましょう。- 【不法行為責任の要件】
- 他人の権利などを侵害すること
- 故意または過失
- 「1.」の行為によって損害が発生したこと
- ドローンについて専門的な知識をもっていたこと
- 事故が発生することを予測できたにもかかわらず、その企画を無理やり推し進めたこと
④ドローンの製造業者(メーカー)~製造物責任~
次に、ドローンの製造メーカーの賠償責任についてみていきましょう。- 【製造物責任の要件】
- 製品などの
- 欠陥により
- 他人の生命・身体または財産を侵害したこと
⑤ドローンの販売業者
最後に、ドローンの販売業者の賠償責任についてみていきましょう。 通常、製造物責任を負うのは、まさにそのドローンを作った製造メーカーです。 ただし、「実質的に製造業者と認められる者」については、たとえ、製造メーカーでなかったとしても、メーカーと同じように製造物責任を負わなければなりません。 具体的には、ドローンの製造自体はしていなくても、製造段階から指示を出し、ドローンの販売を一手に引き受けたような場合などには、そのドローンを製造したに等しいので、ドローン販売業者は「実質的な製造業者」とみなされ、第三者に対する損害について製造物責任を負うことになります。 また、ドローンの不具合による事故の場合、販売業者は、ドローン操縦者に対して、- 瑕疵担保責任
- 債務不履行責任
6 法律上の責任②:刑事上の責任
これまでは、ドローン事故が起きた場合の「民事上の責任(賠償の問題)」について解説してきました。以下では、ドローン事故の場合の「刑事上の責任」についてみていきましょう。
「刑事上の責任」とは、犯罪を犯した人に対して国から与えられる罰のことをいいます。
例えば、人を殺せば殺人罪となり、死刑となるか無期または5年以上の懲役が科されます。これが「刑事上の責任」です。
ドローン事故の場合にも、その態様が特定の犯罪類型にあてはまる場合には刑事上の責任を負うことになります。
刑事上の責任を負うには、原則として「故意(わざとやること)」がなければいけません。
ただし、「過失(不注意)」が認められれば犯罪として成立するよ、という特別な規定がある場合には、故意が無くても犯罪が成立し、刑事上の責任を負わなければなりません。
以下で、ドローン事故について刑事上の責任を負うケースを「故意」がある場合と「過失」がある場合に分けてみていきましょう。
(1)故意により第三者に損害を与えた場合
①人に対する損害
ドローンの操縦者が、人に対してわざと損害を与えた場合、暴行罪や傷害罪に問われる可能性があります。 「暴行罪」と傷害罪の違いは、暴行を加えた結果、その人にケガなどの「傷害」が生じたか否かにあります。 暴行罪の場合は、-
- 最大2年の懲役
- 最大30万円の罰金
-
- 最大15年の懲役
- 最大50万円の罰金
②物や企業に対する損害
(ⅰ)損壊罪
ドローンの操縦者が、建物や車などの物に対してわざと損害を与えた場合、建造物損壊罪・器物損壊罪に問われる可能性があります。 例えば、ドローン事故を起こして、建物を壊した場合が「建造物損壊罪」、建物以外の物を壊した場合は「器物損壊罪」になります。 建造物損壊罪の場合は、建物は人が住むものであり、建物を破壊した場合には、同時に人を傷つける危険性が高いことから、罪としては重い、- 最大5年の懲役
-
- 最大3年以下の懲役
- 最大30万円以下の罰金
(ⅱ)業務妨害罪
また、企業などに対し、「イベント会場でドローンを飛ばして落下させてやる!」などウソの予告をして大騒ぎとなった場合には、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。 これを実際に飛ばして落下させた場合には、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。 要するに、嘘をついたり、他人を欺いて業務を妨害した場合が「偽計」業務妨害罪、それ以外の力業で業務を妨害た場合は「威力」業務妨害罪となります。 偽計業務妨害罪も威力業務妨害罪のいずれも-
- 最大3年の懲役
- 最大50万円の罰金
(2)過失により第三者に損害を与えた場合
ドローンの操縦者が刑事責任負うを負うのは、何も「故意(わざと)」人や物に損害を与えた場合に限りません。「過失(不注意)」で第三者にケガをさせてしまった場合には過失傷害罪という罪に問われ、- 最大30万円の罰金
- 最大50万円の罰金
-
- 最大5年の懲役
- 最大100万円の罰金
-
- 最大7年の懲役
- 最大100万円の罰金
7 法律上の責任③:行政上の責任
最後に、行政上の責任についてみていきましょう。
「行政上の責任」とは、社会的な秩序を乱すような行為をしたときに、行政機関から与えられるペナルティのことをいいます。
刑事上の責任と似ている部分もありますが、刑事上の責任が「犯罪を犯したときに科される刑罰のことで、その判断は裁判所が行う」のに対し、行政上の責任は、「犯罪として処罰されるかどうかとは無関係に科されるペナルティで、その判断は行政機関が行う」ものになります。
行政上の責任については、ドローンの飛行に関するルールを定める「航空法」上、事故を起こしたとしても直接的なペナルティはありません。
ただし、ドローンの飛行許可や承認を得る際に、過去に起こした事故が審査の一要素となる可能性はあります。
また、飛行許可や承認を得てドローンを飛ばしていた場合には、事故について国に報告しなければならないケースもあります。具体的には、許可・承認を得る際の申請書に「ドローン事故が発生した時には国へ報告すること」との記載がある場合には、これに従い報告しなければいけません。
8 ドローン事故の予防方法
ここまでは、「ドローン事故が起きた場合にどのような責任を負うことになるのか」を解説してきましたが、事故を起こさずにすむのであればそれがベストです。そのために必要なのが、「ドローンを飛ばす前の事前対策」です。
事前対策の方法としては、以下のようなものがあります。順番に確認していきましょう。
- 事前の機体整備・点検を徹底する
- 飛行場所や飛行コースをしっかり把握する
- 安全監視員を配置する
- 過去の事故事例を把握しておく
(1)事前の機体整備・点検を徹底
ドローンを飛ばす前に機体の整備や点検をしっかりしておくことはかなり重要です。 電源やモーター・カメラが正常に作動するか、ランプが点灯するか、ネジにゆるみは無いかなど、毎回必ず確認するようにしましょう。(2)飛行場所や飛行コースをしっかり把握
ドローンが墜落してしまった最悪の事態を想定し、どのような場所でドローンを飛ばすのか、また、どこを通過するのかをきちんと把握しておくことが大切です。 特に、航空法上は人口密集地(住宅街や市街地など)や空港の周辺でのドローンの飛行を原則禁止しているため、これらの場所で許可なく飛行させることにならないかにも注意が必要です。(3)安全監視員を配置
操縦者が機体を見失ってしまった場合、ドローン落下の可能性が高まり、第三者を巻き込む確率も上がります。 このような事態を避けるためにも、ドローンを飛ばすときには、操縦者のほかにドローンを見張るための安全監視員をおくことをおススメします。これにより、ドローンの落下事故が起きる確率をある程度下げることができます。(4)過去の事故事例を把握
ドローン事故を起こさない・被害を最小限にとどめるためには、過去の事故事例を把握し、その原因や対策を学ぶことが重要です。 そのうえで、無理のない飛行計画を立て、安全に飛行させるようにしましょう。9 小括
ドローンビジネスにおいては、物体を空に飛ばす以上、落下や第三者を巻き込んだ事故が起きる可能性は0ではありません。ドローン事故により誰かに損害を与えたら、操縦者や企業が責任を負うことは理解していただけたかと思います。
ただし、操縦者が少し気を付けるだけでドローン事故は予防することができます。ドローンを飛ばすときには、操縦者の責務として必ず事前対策をするようにしましょう。
10 まとめ
これまでの解説をまとめると以下のとおりです。- 「ドローン」とは、無人航空機の総称で、「空を飛ぶことができるけど、人が乗って操縦しない機体」のことをいう
- ドローンは空を自由に飛ばすことができ、さまざまな分野で活用することができるが、その反面、人や建物との接触事故や、落下事故などの危険性が大いにある
- ドローン事故の原因のほとんどが落下によるもの
- ドローン事故により第三者に損害を与えてしまった場合、①民事上の責任、②刑事上の責任、③行政上の責任を負う可能性がある
- 「民事上の責任」を負う人としては、①ドローンの操縦者、②操縦者を雇う企業、③ドローンの操縦を依頼した企業、④ドローンの製造メーカー(メーカー)、⑤ドローンの販売業者5パターンが考えられる
- 刑事上の責任については、大きく分けて、操縦者に「故意」がある場合と「過失」がある場合に分かれる
- 行政上の責任として直接的に規定されているものはない。ただし、ドローン事故を起こした際には航空法上の報告義務などが発生する場合があることに注意
- ドローン事故を未然に防ぐには、事前の対策がとても重要











