アプリ内課金を導入する際に知りたい!資金決済法4つのポイントとは
2017.10.10

この記事の目次
はじめに
近年、スマートフォンの爆発的な普及により、非常に身近な存在となったスマートフォン向けゲームやアプリですが、サービスを提供する企業の収入源として、アプリ内課金を導入するケースが増えています。 例えばLINEのスタンプやパズドラの魔法石など、1度は課金をしたことがあるという方も多いと思います。 このように、アプリ内のサービスに利用できる「ゲーム内通貨」(ポイントなど)をユーザーに購入させることにより、企業としてはユーザーの囲い込みや、まとめ買いによる売上アップを期待できます。 しかし、アプリ内課金で購入する「ゲーム内通貨」は、「資金決済法」という法律の規制を受ける可能性があります。 そのため、アプリ内課金を導入するときは、まず、- どのような「ゲーム内通貨」が資金決済法の対象となるのかを正しく理解し、
- 対象となる場合は、資金決済法の規制への対応方法を検討する
1 仮想通貨について
(1)仮想通貨とは
仮想通貨(暗号資産)とは、資金決済法2条5項に定められる「暗号資産」をいい、近年話題になっているビットコインや、リップル、モナーコインなどがあります。 これに対し、「ゲーム内通貨」や電子マネー等は、資金決済法を根拠とする概念ではあるものの、仮想通貨(暗号資産)とは別のものです。(2)仮想通貨と電子マネーの違い
さて、ここで混同しがちなのですが、仮想通貨=電子マネーではありません。- 仮想通貨 =通貨 (例:ビットコイン・イーサリアムなど)
- 電子マネー=決済のしくみ(例:SUICA ・ PASMO ・ ICOCAなど)
- 価格が一定か、変動するか
- 所有権が移転するか、しないか
(3)「ゲーム内通貨」と資金決済法
オンラインゲームやアプリにおける「ゲーム内通貨」は、あらかじめユーザーに課金・購入してもらうことによって発行され、サーバー上に記録されますが、この「ゲーム内通貨と引き換えに武器やアイテムを入手できるというシステム」は、今や多くのスマホゲームで採用されています。 こういったゲーム内通貨に対しても、資金決済法が適用されるケースがあり、その場合、守らなければならないさまざまな義務が発生します。 仮に、資金決済法上の義務に違反してしまうと、- 最大3年以下の拘禁刑
- 最大300万円以下の罰金
2 資金決済法とは
「資金決済法」とは、お金の移動や決済に関するルールを定めた法律です。さまざまな内容を含んでいる法律ですが、中でもゲーム・アプリでの「ゲーム内通貨」の発行に関連するのは、「前払式支払手段」(まえばらいしき しはらいしゅだん)という制度です。
資金決済法では、この前払式支払手段に当てはまる行為・サービス規制の対象となっているため、導入しようとしている「ゲーム内通貨」が「前払式支払手段」に当たるのかどうかがポイントになります。
では、「前払式支払手段」とは何なのか、その要件を具体的にみていきましょう。
3 前払式支払手段
(1)前払式支払手段とは
「前払式支払手段」とは、以下の要件を全てみたす「ゲーム内通貨」や電子マネーをいいます。- 金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)
- 対価を得て発行されること(対価性)
- 代金の支払いなどに使用できること(権利行使)
①金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)
「数量の記載・記録」については、商品券の表面を思い出してもらうと分かりやすいと思います。 券の表面に「1万円」などと記載されており、その商品券にいくら分の価値があるのかが表されていますね。 この部分が「金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)」にあたります。②対価を得て発行されること(対価性)
例えばみなさんが商品券を購入する際、欲しい金額分の代金を支払うことでその額の商品券を手に入れることができますよね。 これが「対価を得て発行されること」にあたります。 分かりやすくいうと、「(お店が1万円の)対価を得て(私たちに商品券が)発行される」ということになります。③代金の支払いなどに使用できること(権利行使)
3つ目の要件については文字通り、利用者がお金を払って得た財産的価値を、お金の代わりに代金の支払いなどに使用することをいいます。 これは実際に商品券を使用する場面を思い浮かべていただくと簡単です。 商品券は、買い物などの際にお金の代わりに使用することができますね。 この部分に権利行使性が認められるのです。(2)「ゲーム内通貨」は前払式支払手段にあたるか
それでは、「ゲーム内通貨」が「前払式支払手段」にあたるのか、具体的にみていきましょう。 まず、前払式支払手段に該当するには、3つの要件をみたす必要がありましたね。- 金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)
- 対価を得て発行されること(対価性)
- 代金の支払いなど等に使用できること(権利行使)
4 前払式支払手段の種類
これらの要件をみたして前払式支払手段に当てはまる場合、さらに、その「ゲーム内通貨」が「自家型前払式支払手段」と「第三者型前払式支払手段」のいずれに該当するのかを検討する必要があります。
(1)自家型前払式支払手段
「自家型前払式支払手段」とは、発行したポイントなどの「ゲーム内通貨」が、そのアプリ・webサービス内でしか使用できないものをいいます。 自家型前払式支払手段の最大の特徴は、発行した「ゲーム内通貨」を使える範囲が、あくまでも、自分たちが提供するアプリ・webサービスの中だけで、ほかの場面では使えないことです。 ゲーム・アプリ内課金の場合、自社のアプリ・webサービスでのみ使えるのがふつうであるため、多くの「ゲーム内通貨」がこの自家型前払式支払手段にあたります。(2)第三者型前払式支払手段
「第三者型前払式支払手段」とは、自社のアプリやwebサービス以外でも、使用できる電子マネーや「ゲーム内通貨」をいいます。 例えば、電子マネーでいうとSUICAやPASMOなどです。5 前払式支払手段で守るべき4つの義務
前払式支払手段にあたる「ゲーム内通貨」を発行する事業者には、資金決済法により以下の4つの義務が課せられます。
- 表示義務
- 供託義務
- 行政への継続的報告義務
- 払い戻し義務
(1)表示義務
事業者は、以下の項目をユーザーに明示する義務があります。- 発行者の名称
- 利用可能金額
- 使用期間や使用期限
- 利用者からの相談窓口の所在
- 未使用残高の確認方法
- 利用上の注意や約款の所在
- 前払式支払手段そのものに表示
- 電子メールにより送信
- ウェブサイト上に表示
(2)供託義務
発行者が破産して潰れてしまった場合、ユーザーが購入した商品券や電子マネーなどは一体どうなってしまうのでしょう。 普通に考えれば、それ以降使うことができなくなると思われますが、その場合、ユーザーがすでに支払ったお金は返してもらうことができるのでしょうか? 逆に言えば、発行者はユーザーに対し、未使用残高について一円も返さなくていいのでしょうか? このような事態にそなえ、未使用分の残高が一定の金額を超える発行者は、「発行保証金」を供託し、未使用残高について返金分を確保しなければならないことになっています。 仮に発行者が破産してしまった場合でも、この「発行保証金」を元にユーザーにお金を返す手続きが取られることになっていて、これによりユーザーを守っているのです。 (ただし、発行保証金は未使用残高のすべてについて保全されているわけではないので、全額返金されない場合もあります。) 具体的には、基準日(毎年3月末または9月末)の時点で、発行している「ゲーム内通貨」の未使用残高が1,000万円を超えたときは、財務局へ届出をしたうえで、未使用残高の2分の1以上の金額を最寄りの供託所に供託しなければなりません。つまり、最低でも500万円以上を供託することになります。 「未使用残高」というのは、それまでに発行したすべての有料(課金)アイテムのうち、基準日までにまだユーザーに使われていない分の価値の総額と考えてもらうと簡単です。 例えば、提供するアプリの中で単価100円の有料アイテムを売っていたとして、基準日の時点でまだ10万個が使われていなかったとします。 この場合、100円×10万個で合計1,000万円分の未使用残高になるので、資金決済法の規制対象となり、供託義務が課せられます。 逆にいえば、供託義務を回避するには基準日前にユーザーに有料アイテムを使わせるようなイベントを開催するなどすればいいわけです。 また、以下のどちらかの条件をみたしたうえで、内閣総理大臣に届け出たときは供託義務を免除されます。- 金融機関などとの間で発行保証金保全契約を締結する
- 信託会社との間で発行保証金信託契約を締結する
(3)行政への継続的報告義務
前払式支払手段にあたる「ゲーム内通貨」の発行を始めると、発行者は行政の監督を受ける立場になります。 そのため、定期的に国へ「前払式支払手段の発行に関する報告書」を提出しなければなりません。 報告書には、「ゲーム内通貨」の未使用残高、基準期間(基準日の翌日から次の基準日までの期間)内の発行額や回収額などを記入します。(4)払い戻し義務
アプリ・webサービスを終了するときの話になりますが、この場合、事業者は、ユーザーに「ゲーム内通貨」の残高を払い戻す必要があります。 ユーザーは、サービス内で利用できると思ってコインなどを買ったのに、勝手にサービスを終了しておいて買った分は保証しない、というのでは、ユーザーが納得しないからです。 この場合、発行者は、発行業務の廃止と払戻しのスケジュールなどについて、内閣総理大臣に届け出た後、新聞に払戻しの実施やその手続きについて公告します。 さらに、すべての営業所・利用店舗に払戻しについての手続きや払戻し期間(60日以上)の掲示を行います。 (なお、資金決済法上の登録や届出をしていない事業者については資金決済法に基づく払戻手続きの対象とならない扱いとなっているので、詳しくは管轄の財務局に確認することをお勧めします。) ユーザーは、この手続きに沿って払戻しの申請をし、発行者が払い戻しをするという流れになっています。(5)義務に違反した場合のペナルティ
供託義務などの資金決済法上の義務に違反した場合、-
- 最大で3年の拘禁刑
- 最大300万円の罰金
6 供託義務を回避する方法
とはいえ、ベンチャー企業などにとって、供託義務により最低でも500万円以上を供託するのは、正直かなり厳しいですよね。
実は、この供託義務!サービス設計次第では、お金を預けなくて済む方法があります。
そこで、以下では、ゲーム・アプリ内で通貨を発行する場合に、できるだけ供託義務を回避する方法や、供託金額を低く抑えるためのポイントを解説していきます。
(1)「ゲーム内通貨」に6カ月の有効期間を設定する
まず、供託義務が課されるのは、「ゲーム内通貨」の有効期限が発効日から6カ月を超えている場合です。 反対に言えば、有効期限が発効日から6カ月以内の場合には、供託義務が課されません。 そのため、アプリの利用規約に「○○ポイント(「ゲーム内通貨」の名称)の有効期間は、ポイントが付与された日から6カ月とし、有効期間が過ぎたポイントは無効とします。」といった規定を設けることで、供託義務を回避できるのです(※利用規約の書き方については、「【ひな形付】web・アプリ利用規約の書き方と9つのポイントを解説」を参照。)。
ただし、スマホアプリを提供するプラットフォームによっては、「ゲーム内通貨」に有効期限を設けることが禁止されているケースがあります。
例えば、iOSの場合、「App Store審査ガイドライン」により、「App内課金で買われたクレジットやゲーム内通貨はアプリケーション内でのみ消費でき、有効期限を設定することはできません。」とされています。
Andoroidの場合は、現状見る限り、このような有効期限に関する制限がないため、「ゲーム内通貨」に有効期限を設けることができます。
ただし、iOSとAndoroidの両方で展開しているゲーム・アプリの場合は、プラットフォームにより差をつけるとユーザーに不公平感を与えてしまう恐れがあります。実際に有効期限を設けるかどうかは慎重に検討したほうが良いでしょう。
(2)「ゲーム内通貨」のうち無料で配布した分を区別して管理する
アプリ内課金によって発行する「ゲーム内通貨」でも、ゲームプレイの報酬や運営からのプレゼントとして、無料でユーザーに配布されることがあります。 このような無料の「ゲーム内通貨」には対価が支払われていませんので、前払式支払手段には当たらないことになります。 そして、無料配布分を有料で買った「ゲーム内通貨」と区別して管理しておくと、前払式支払手段の総額を減らせるため、供託金額も減少します。 また、「ゲーム内通貨」をまとめて買うほどお得になるような料金体系にするのであれば、お得になる部分を無料のおまけ扱いにすることも有効です。 例えば、100円で1ポイント、1,000円で11ポイントの「ゲーム内通貨」を買うことができるようにするケースでは1,000円でポイントを買った場合の内訳を「有料の『ゲーム内通貨』10ポイント+おまけの無料『ゲーム内通貨』1ポイント」とします。こうすれば、前払式支払手段にあたる「ゲーム内通貨」の総額を減らすことができます。 あくまでも、払い戻し義務の対象になるのは有料で買った「ゲーム内通貨」のみなので、ユーザーから見ても所持している「ゲーム内通貨」の有料・無料の内訳が分かるようにしておいたほうが、払い戻しの際のトラブル防止になります。(3)「ゲーム内通貨」を使用する際に、有料の部分から優先的に消費されるようにする
前払式支払手段にあたる「ゲーム内通貨」は、あくまでも有料で買った「ゲーム内通貨」のみです。そのためユーザーが「ゲーム内通貨」を使用するときに、有料で買った分が優先的に消費されるようにすれば、前払式支払手段にあたる「ゲーム内通貨」の総額を効率よく減らしていくことができます。 ただし、ユーザーから見れば、有料で買った「ゲーム内通貨」を全て消費しない限り、無料で配布された「ゲーム内通貨」を使えないことになるので、やや不便に感じられるます。 「ゲーム内通貨」をまとめ買いする意欲をそいでしまう可能性もあるため、実際にこういったシステムを採用するかどうかは慎重に検討してください。 この点は、弊所記事「資金決済法にいう「6ヶ月」とは?前払式支払手段の有効期限を解説!」にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
7 パターン別の規制について
さて、ここまで発行者への共通の義務やペナルティについて解説してきましたが、さらに、自家型か第三者型かによって届出や登録に関する規制の内容が変わります。
(1)自家型前払式支払手段に対する規制
先ほど説明したとおり、「自家型前払式支払手段」とは、発行したポイントなどが、そのアプリ・webサービス内でしか使用できないものをいいます。 自社のwebサービス上でのみ利用できるポイントサービスを導入する場合はこれにあたりますね。 この「自家型」の場合、基準日の時点で発行する未使用残高が1,000万円を超えるまでは、資金決済法によって規制されることはありません。 ということは、上で述べた発行者の義務を果たしていなかったとしても、資金決済法に違反しているわけではないということになります。 ですが、基準日である3月31日、9月30日に「未使用残高が1,000万円を超える」という要件を初めてみたしたとき、「基準日の翌日から2か月以内」に管轄する財務局に届け出る必要があります。 つまり、この「1,000万円」という基準を超えて初めて、国に対する届け出義務を負い、資金決済法の規制を受けることになります。 基準日時点の未使用残高で届出が必要かどうか決まるので、未使用残高が1,000万円を超えるかどうか微妙な場合は、基準日前にユーザーが「ゲーム内通貨」を多く消費したくなるようなイベントを実施するという手も有効です。(2) 第三者型前払式支払手段に対する規制
「第三者型前払式支払手段」とは、自社のアプリやwebサービス以外でも利用できる「ゲーム内通貨」のことでしたね。 SuicaやPASMOなどの電子マネーがこれにあたります。 「第三者型」にあたる前払い式支払い手段を発行している事業者は、事前に国へ登録申請書を提出し、登録を受けなければなりません。 逆に言えば、登録を受けた事業者のみが、発行業務を行うことができます。 登録にあたっては財務局の審査があり、システムや利用者情報を管理する体制を整えていることなどが求められます。 前払式支払手段の届出に必要な書類は、以下の一般社団法人日本資金決済業協会のサイトでダウンロードできます。 https://www.s-kessai.jp/businesses/funds_transfer_b.html8 まとめ
以上の解説をまとめると、アプリ内課金を導入するときに資金決済法との関係で検討すべきポイントは、以下のようになります。- 発行しようとしている「ゲーム内通貨」が、資金決済法の対象となる前払式支払手段にあたるかどうかを確認
- 前払式支払手段にあたる場合、自家型と第三者型のどちらにあたるか
- 供託金(最低でも500万円以上)を支払えるか
- 供託義務を回避する方法のうち、採用できるものはあるか
- 類型別の規制にも注意
- ベンチャー企業にとっては、供託義務は運営上の大きな負担になりえる
- 有料の「ゲーム内通貨」と無料配布の「ゲーム内通貨」を分けて管理するなど、「ゲーム内通貨」に関するシステムの設計について慎重に検討すること
- アプリ内課金の導入時には必ず利用規約が必要になる











