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クラウドファンディングの法律規制とは?3つのポイントを徹底解説!

2017.08.022025.11.29
クラウドファンディング
この記事の目次

    はじめに

    最近、「クラウドファンディングサイト」を通じて、事業の運転資金を集めるビジネスモデルが流行っていますよね。 実際に、アニメ映画として爆発的な大ヒットをあげた「この世界の片隅に」ではクラウドファンディングサイトの「makuake」が利用されてます。 また、物議を醸しましたが、キングコング西野さんの「えんとつ町のプペル」では、「Ready for(レディーフォー)」というサイトが利用されました。 このように、手軽な資金調達を可能にしたクラウドファンディングですが、新しいビジネスモデルだけに、どういった法律が適用されて、規制されるのかが不明確です。 本を買って調べても、ネットを見ても、何となくそれらしいことは書いてあるのですが、詳しく解説されたコンテンツが少なくて、正直さっぱりわからないですよね。 そこで、以下では、クラウドファンディングに関連して、どういった法律・規制があるのかを、①プロジェクト実施者・②クラウドファンディング業者・③出資者の3つの視点から詳しく、かつ、かみ砕いて解説していきます。  

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    1 クラウドファンディングとは

    クラウドファンディングとは 「クラウドファンディング」とは、お金はないがやる気のある企業などが、インターネットサイトを通じて、不特定多数の人から少額ずつ資金を集める仕組みをいいます。 クラウドファンディング、という名称は造語で、群衆(crowd)から、資金調達(funding)をする仕組みであることから、「クラウド」と「ファンディング」を掛け合わせて、このように呼ばれています。 クラウドファンディングとは 銀行などからの借入とは違い、基本的に、集めた資金を返済する必要がないため、やる気はあるのだけれど、お金がない企業・個人業主には有効な資金調達の手法といえます。 資金調達に成功した場合には、そのお礼として、集めた資金で開発した「商品・サービス」などを出資者に返すことになります。 最近では、冒頭であげた「この世界の片隅に」などの映画作品や、キングコング西野さんの絵本「えんとつ町のプペル」の製作費の調達方法として、クラウドファンディングが活用されました。 一般にクラウドファンディングをする際には、こういったプロジェクト実施者と出資者を結びつけるプラットフォームである「クラウドファンディングサイト」を通じて行われる点が特徴的です。 「makuake」など以外にも、クラウドファンディングサイトとしては、
    • 「Ready for(レディーフォー)」
    • 「campfire」
    • 「kickstarter」
    • 「indiegogo」
    などが有名です。

    2 クラウドファンディングのメリット・デメリット

    クラウドファンディングのメリット・デメリット クラウドファンディングは、資金調達の一方法ですが、ほかにも銀行からの借り入れ、新株発行など多様な手段があります。 では、クラウドファンディングを使うメリットはどこにあるのでしょうか? 反対に、そのデメリットはどこにあるのでしょうか?
    • 資金調達を呼びかける「プロジェクト実施者」
    • それに出資する「出資者」
    それぞれの視点から、クラウドファンディングのメリット・デメリットをみていきましょう。

    (1)プロジェクト実施者

    ①メリット

    まず、「プロジェクト実施者」がクラウドファンディングを行うメリットは、以下の点にあります。
    1. 銀行からの借入とは違い、プロジェクトの内容に「共感」してもらえれば、その実現可能性が不透明であっても、資金調達が可能なこと
    2. 返済の義務がないこと
    3. 手軽さゆえに、資金調達を始めやすいこと
    4. SNSとの相性がよく、商品・サービスの開発段階から、支援者とのインタラクティブな交流ができること
    5. それゆえに、広告が比較的容易で、また、支援者のニーズをスピーディにキャッチして商品に反映しやすいことなど

    ②デメリット

    他方で、プロジェクト実施者にとっての、クラウドファンディングのデメリットは、以下の点にあります。
    • 銀行の借り入れ審査を通らないレベルの事業のプロジェクトが多いため、目標額までの出資金が集まらない可能性が高いこと
    • 募集をかけて、実際に出資金が入金されるまでの期間は、通常、4・5か月かかるため、すぐに商品開発にとりかかれない可能性があること

    (2)出資者

    ①メリット

    出資者がクラウドファンディングを利用するメリットは、以下の点にあります。
    • 新規性の高い商品(例:充電いらずのスマートウォッチ。)・サービスに、ネットのボタン一つで、手軽に、少額から寄付や出資ができる
    • クラウドファンディングのタイプによっては、出資額に応じたリターンがもらえる可能性があることなど

    ②デメリット

    他方で、出資者がクラウドファンディングを利用する最大のデメリットは、以下の点にあります。
    • 資本力の弱い企業が多いことから、倒産するなどして、リターンはおろか、出資金すら返ってこない可能性があること

    3 投資型・寄付型・購入型

    クラウドファンディングの種類 さて、一口にクラウドファンディングといっても、その方法は、出資者に対するリターンの内容によって、主に、①投資型、②寄付型、③購入型の3つのタイプに分類されます。 タイプごとに、適用される法律や問題点がちがってくるため、クラウドファンディングサイトを立ち上げたり、資金調達をする際には、自社がどのスキームを利用しているのかを強く意識する必要があります。 それでは、タイプ別に、クラウドファンディングをする際に適用される法律をみていきましょう。 クラウドファンディングの事業タイプ毎の法律規制一覧

    (1)投資型

    クラウドファンディング_投資型(ファンド型)とは 「投資型」とは、出資者から資金調達をし、調達した資金を使ってプロジェクトが成功した際には、そのリターンとして、プロジェクトで得た収益の一部を出資者に分配する仕組みを意味します。 リターンの内容が、商品・サービスではなく、お金である点が特徴的です。 投資型クラウドファンディングサイトとしては、「クラウドクレジット」、「CrowdBank」、最近では、「Sony Bank GATE」などが有名です。 活用事例としては、酒蔵が調達した資金で新しい銘柄の日本酒を造った例、食品メーカーが商品の販路拡大のために利用した例や、音楽CDや動画等のコンテンツ作成のために資金調達をした例などが挙げられます。 それでは、投資型クラウドファンディングを利用する場合の法律規制・問題点はどのようになっているのでしょうか?
    • プロジェクト実施者
    • クラウドファンディング業者
    • 出資者
    の3者それぞれの視点から見ていきましょう。

    ①プロジェクト実施者

    まず、プロジェクト実施者は、出資者から集めた資金を「何のために使うのか?」によって、
    • 「金融商品取引法」
    • 「不動産共同特定事業法」
    という2つの法律の規制がかかってきます。
    (ⅰ)金融商品取引法の規制
    プロジェクト実施者が集めた資金を使って、株式投資などの「有価証券投資」を行う場合には、金融商品取引法という法律に基づき、「投資運用業の登録」が必要になります。 「金融商品取引法」(略称:金商法)とは、簡単にいうと、情報弱者である投資家を保護する目的で、会社が株式などを発行したり、市場で株式などを流通させる際に、企業に厳しい規制を課した法律のことです。 この金商法が適用される結果、株式投資などの「有価証券投資」を行う場合には、「投資運用業の登録」をしなければなりません。 投資運用業の登録には、最低資本金要件(5000万円)などが求められるため、登録の条件がとても厳しいです。 そのほか、金融庁による様々な監視にさらされるというデメリットがあります。 反対に、日本で多くみられる、クラウドファンディングサイトを通じて集めた資金を使い、お酒を造ったり、アニメ・音楽などのコンテンツを制作するなどの「モノづくり」の事例では、金商法の法律規制は、適用されません。
    (ⅱ)不動産共同特定事業法
    プロジェクト実施者が集めた資金を使って、「不動産の売買 、交換 、 賃貸借」を行う場合には、不動産共同特定事業法という法律に基づき、「不動産共同特定事業者の許可」が必要になります。 「不動産共同特定事業法」とは、多くの投資家からの出資を受けて不動産を取得し、その不動産を運営して得た収益を投資家に分配する事業の仕組みを定めた法律をいいます。 不動産共同特定事業を運営するためには、「不動産共同特定事業者の許可」が必要で、①宅地建物取引業の免許を受けていること、②法人であることなどの厳しい要件を満たさなければなりません。 また業務を運営するにあたっては、投資家の利益を確保するために、様々な規制を受けるデメリットがあります。 反対に、クラウドファンディングサイトを通じて集めた資金を使って「不動産の売買 、交換 、 賃貸借」以外の事業をする場合には、この法律・規制は適用されません。

    ②クラウドファンディング業者

    次に、投資型のクラウドファンディングサイトを運営する業者について、適用される法律・規制を見ていきましょう。 この場合、クラウドファンディング業者は、金商法に基づく「第2種金融商品取引業の登録」が必要となります。 「第2種金融商品取引業」とは、資金(ファンド)の販売や調達の勧誘行為をする業務を意味します。 この点、投資型のクラウドファンディング業者は、プロジェクト実施者である企業のために、クラウドファンディングサイトというプラットフォームを設置することを通じて、投資家に対して、資金(ファンド)の調達を勧誘していることから、「第2種金融商品取引業」に該当します。 「第2種金融商品取引業」の業務を行うためには、「第2種金融商品取引業の登録」が必要なのですが、この登録を受けるためには、ベンチャー企業からみて厳しい条件が求められます。 例えば、会社の資本金が、原則として1000万円以上であることや、投資家を保護するために十分な人的・物的管理体制がその会社に備わっていることが必要で、サイトを立ち上げたい企業からするとハードルが高いものになっています。 しかも、無登録で「第2種金融商品取引業」を行った場合、最大5年の懲役もしくは最大500万円の罰金のいずれか、またはその両方が刑罰が科されるおそれがあります。 また、仮に登録を受けられてたとしても、金融庁の管理下に置かれて、さまざまな規制を受けることになるため、アグレッシブな活動が難しくなるデメリットがあります。 加えて、金商法という法律のみならず、第2種金融商品取引業界が作ったガイドラインによる規制を守る必要があるため、身動きがとりずらくなるデメリットがあります。 こういった規制の厳しさや、デメリットが多いことから、日本のクラウドファンディングサイトでは、投資型のサイトは非常に少なく、後で説明する、「購入型」「寄付型」のサイトの方が圧倒的に多いのが実情です。 なお、参考までに、金商法は、ほかにも「第1種金融商品取引業」という制度を用意しています。 「第1種金融商品取引業」とは、証券会社やFX業者が行っている「有価証券の販売・勧誘をする業務や、顧客資産の管理をする業務」を意味します。 第2種金融商品取引業との違いは、販売・勧誘の「対象となる物」について、第1種が、株式などを販売・勧誘するのに対して、第2種は、資金(ファンド)の販売・勧誘行為をしている点です。

    ③出資者

    最後に、クラウドファンディングサイトを通じて出資者に適用される法律・規制を見ていきましょう。 結論からいいますと、出資者を直接規制する法律はなく、あくまでも、プロジェクト実施者やクラウドファンディング業者に適用される法律の枠内で規制されるにとどまります。 もっとも、投資型クラウドファンディングサイトを利用する際には、以下のリスクがあることには、注意する必要がります。
    (ⅰ)配当ゼロのリスク
    1つ目のリスクは、配当がまったくもらえず、損失が出る可能性があることです。 投資型クラウドファンディングでは、出資者は、サイトを通じて出資したプロジェクトが成功した場合には、その収益からの配当を受け取ることができます。 反対に、プロジェクトが失敗した場合には、配当がまったく受けられないリスクがあります。
    (ⅱ)不十分な情報提供によるリスク
    2つ目のリスクは、出資者への情報開示が十分でない点です。 投資型クラウドファンディングサイトで出資を募っている案件の多くは、「有価証券届出書・報告書」(事業場のリスク・課題や財務状況が書かれた書類。)を公表しておらず、また、会計監査も受けておりません。 そのため、出資者は、限られた情報をもとに「儲かるか・儲からないか」の判断をしなければならず、損を出するリスクが高いのです。

    (2)寄付型

    クラウドファンディング_寄付型とは 「寄付型」とは、プロジェクト実施者が、出資者から寄付金を受けてプロジェクトを行うものの、プロジェクトの成功・失敗にかかわらず、金銭のバックといったリターンがない仕組みを意味します。 「寄付」という文字通り、出資者へのリターンがない点が特徴です。 もっとも、寄付型といえども、何のリターンもしないわけではなく、感謝状や氏名の掲載などの何らかのリターン(=「返礼品」)が行われているのが実情です。 ※そのため、あとで説明する購入型との区別があいまいになるという問題が生じます。 日本の寄付型クラウドファンディングサイトとしては、「JAPANGIVING」などが有名です。 主な活用事例としては、被災地支援や発展途上国支援などの公益性の高いプロジェクトに利用されています。 では、寄付型クラウドファンディングを利用する場合の法律規制・問題点はどのようになっているのでしょうか? 寄付型クラウドファンディングのケースでは、寄付金にまつわる
    • 税務上の取り扱い
    • 返礼品
    の2点が、特に問題となります。

    ①プロジェクト実施者

    まず、プロジェクト実施者が、出資者から寄付を受けた場合、出資者から金銭の寄付を受けた時点で、税金を支払う義務が生じます。 この税金の種類・支払い額は、プロジェクト実施者が法人か個人かによって違います。
    (ⅰ)個人の場合(贈与税)
    プロジェクト実施者が個人の場合、寄付を受けた金額が110万円の基礎控除の部分を超えた金額に、贈与税がかかります。 なお、「基礎控除」とは、税金の計算をする際に、支払うべき税金から、あらかじめ一律にマイナスされる特典のことをいいます(その意味で、納税者にはお得です。)。
    (ⅱ)法人の場合(法人税)
    プロジェクト実施者が法人の場合、原則として、寄付を受けた額(受贈益)に対して、法人税がかかります。 もっとも、①プロジェクト実施者がNPO法人・公益財団法人などであり、かつ、②プロジェクトの内容が公益性のある事業の場合には、例外として、法人税はかかりません。
    (ⅲ)共通事項(消費税)
    なお、寄付行為は、消費税法の上では、課税されない取引(=課税対象外取引)になるため、個人・法人を問わず、寄付を受けたとしても、消費税はかかりません。
    (ⅳ)返礼品の規制
    また、プロジェクト実施者が、寄付に対して何らかのリターン(=「返礼品」)をする場合には、ふるさと納税制度で適用される「総務大臣通知」という規制が課されることには注意が必要です。 冒頭で説明したとおり、「寄付型」といっても、実は、何のリターンもないわけではなく、実際には、感謝状や氏名の掲載などの何らかのリターン(=「返礼品」)が行われる例が多いです。 この点、出資者からみた寄付型クラウドファンディングのうまみは、先ほど説明したとおり、寄付金控除といった税務上のがメリットが受けられる点にあります。 ところが、このリターンとしての返礼品が過剰に行われた場合には、もはや「寄付」とはいえず、寄付金控除などの税務上の特典がもらえるなくなるリスクがあります。 仮に寄付をしたのに、税務上のメリットが受けられないとしたら、公益性のあるプロジェクトに寄付をする者が集まらなくなってしまいます。 そのため、こういった事態を防ぐために、違う制度ではありますが、「ふるさと納税制度」で適用されている「総務大臣通知」による規制が、プロジェクト実施者に対してかせられています。 その結果、
    • 換金性が高いプリペイドカード
    • 高額(寄付金に対して返礼割合の高い)な返礼品の提供など
    は、行ってはならないことになるため注意が必要です

    ②クラウドファンディング業者

    寄付型クラウドファンディングを行う場合に、クラウドファンディング業者に適用される法律・規制はどうなっているのでしょうか? 結論として、現状知る限り、特別な規制はなされていません。

    ③出資者

    寄付型クラウドファンディングを行う場合に、クラウドファンディング業者に適用される法律・規制はどうなっているのでしょうか? 寄付を行った個人については、寄付をした相手方であるプロジェクト実施者の種類・性質によって、以下に説明するような税務上の特典がもらえます。
    (ⅰ)国・地方公共団体などの場合
    寄付の相手方が、国・地方公共団体・特定公益増進法人などの場合には、一定の範囲で、「寄附金控除(きふきんこうじょ)」という特典がもらえて、支払うべき税金が減る(節税)というメリットがあります。 なお、「寄附金控除」とは、所得税や住民税のうち、寄付した額について所得控除という恩恵を与えることで、節税を可能にする制度を意味します。
    (ⅱ)認定NPO法人などの場合
    寄付の相手方が、認定NPO法人などの場合には、一定の範囲で、「寄附金特別控除(きふきんとくべつこうじょ)」という特典がもらえます。 その結果、(ⅰ)の寄付控除を受ける場合にくらべて、原則として、支払うべき税金が大幅に減額できる(節税)というメリットがあります。 「寄附金特別控除」とは、所得税や住民税のうち、寄付した額について税額控除(⇔所得控除)という恩恵を与えることで、大幅な節税を可能にする制度を意味します。 なお、参考までに、(ⅰ)の「寄附金控除」と(ⅱ)の「寄附金特別控除」の違いを説明しますと、それは、「所得控除」か「税額控除」かの違いに帰着します。 例えば、「100万円の控除」を受けられるといった場合、それが「税額控除」の場合は、支払べき税金がダイレクトに100万円分だけ安くなります(=「寄付金特別控除」)。支払うべき税金の額が100万円のケースでは、100万円-100万=0円となり、税金を納める必要がなくなります。 これに対して、「所得控除」の場合は、最終的な税率をかける前の次元で控除するものにすぎないので、「100万円×税率」の範囲でしか、税金が安くなりません。 そのため、所得控除(寄付金控除)の場合よりも、税額控除(寄付金特別控除)の場合の方が、「特別」という名前が付けられているだけあって、節税上のメリットが大きいといえます。

    (3)購入型

    クラウドファンディング_購入型とは 「購入型」とは、プロジェクト実施者が、ある商品・サービスの開発費用の出資を募り、集まった資金で開発した商品・サービスを出資者にリターンする仕組みを意味します。 リターンの内容が、実際に開発した商品・サービスである点が特徴で、日本のクラウドファンディングサイトの中では、最も多いタイプのクラウドファンディングの形態です。 購入型クラウドファンディングサイトとしては、サイバーエージェントが運営する「makuake」や、「Ready for(レディーフォー)」「campfire」「kickstarter」などが有名です。 活用事例としては、音楽・ゲーム・アニメ・映画等のコンテンツ制作事業などにおいてよく利用されます。 冒頭で説明した「この世界の片隅に」や、キングコング西野さんの絵本「えんとつ町のプペル」も、こういった購入型クラウドファンディングを通じて作られました。 では、購入型クラウドファンディングを利用する場合の法律規制・問題点はどのようになっているのでしょうか?

    ①プロジェクト実施者

    購入型クラウドファンディングにおけるプロジェクト実施者に適用される法律規制としては、
    • 特定商取引法に基づく表記
    • 瑕疵担保責任
    • 寄付との線引き
    の3点が特に問題となります。
    (ⅰ)特定商取引法に基づく表記
    まず、購入型では、プロジェクト実施者が、クラウドファンディングサイトという「インターネットサイト」を通じて商品を販売している、とみることができます。 これは、ネット通販における通販会社が、通販サイトを通じて商品を販売しているのと同じように、特定商取引法の「通信販売」にあたります。 そして、「特定商取引法」という法律は、消費者を保護するための法律で、「通信販売」をする場合には、売主に対して「特定商取引法に基づく表記」という広告の表示義務(事業者の情報・販売価格・代金の支払時期・商品の引渡時期など。)を課しています。 そのため、プロジェクト実施者には、「特定商取引法に基づく表記」を自社webサイト上に記載するなどの措置が必要になります。
    (ⅱ)瑕疵担保責任
    購入型クラウドファンディングは、プロジェクト実施者と出資者との間のたんなる売買です。 そのため、通常の売主・買主間の取引において売主に課される「瑕疵担保責任」が課されます。 したがって、販売した商品などに欠陥があった場合には、出資者から出資したお金を返してくれといわれたり、あるいは、損害賠償請求をされるといった可能性があります。 もっとも、これは法律上の義務にすぎず、買主との契約書の中に「瑕疵担保責任は一切負わない」という「免責条項」を設けることで、この瑕疵担保責任を排除することも考えらえます。 しかしながら、買主(出資者)が一般消費者であることから、弱者保護の法律である「消費者契約法」という法律が適用されます。 その結果、売主(プロジェクト実施者)の瑕疵担保責任を完全に免責することを契約書に書いたとしても、その免責条項は無効とされるリスクがあります。 ですから、免責条項の内容や書きぶりについては、慎重な検討が求められます。
    (ⅲ)寄付との線引き
    寄付型クラウドファンディングにおいても、寄付といいつつ、何らかのリターンをしていることは、既に説明しましたよね。 仮に、購入型クラウドファンディングにおいて、出資額に比べて、プロジェクト実施者からのリターンの価値があまりにも低いような場合には、「購入型」という名目にかかわらず、その実態は「寄付」にすぎない、と認定される可能性があります。 その結果、寄付型クラウドファンディングの項目で説明したのと同じ税務上の法律問題が生じる可能性があるので注意が必要です。

    ②クラウドファンディング業者

    購入型クラウドファンディングを行う場合に、クラウドファンディ業者に適用される法律・規制はどうなっているのでしょうか?
    (ⅰ)資金移動業の登録とエスクロー
    購入型クラウドファンディングの場合、出資者⇒クラウドファンディングサイト⇒プロジェクト実施者への資金の流れ方・仕組みによっては、「資金決済法」という法律に基づき、「資金移動業の登録」が必要となる可能性があります。 一般に、購入型クラウドファンディング業者は、プロジェクト実施者がサイトを通じて集めた資金の5%~20%程度の手数料を天引きして、残りの部分をプロジェクト実施者に支払う、という仕組みになっています。 そのため、資金の流れだけを見る限り、クラウドファンディング業者が、出資者からの委託を受けて、出資金をプロジェクト実施者へ「送金」していることになります。 こういった送金システム(エスクローサービス)は、「銀行法」という法律の「為替取引」に該当し、資金決済法に基づく、「資金移動業の登録」が必要になります。 この点、資金移動業の登録をすると、お役所の監視下に入ることになって、アグレッシブな活動が制限されるなどのデメリットがあります。 そのため、購入型クラウドファンディングサイトを運営する場合には、なるべく、「資金移動業の登録」をしないで済む「決済代行スキーム」を組む必要があります。 決済代行スキームの作り方については、「3分でわかる!ECサイトでエスクローを導入する際の法的問題とは?」をご参照ください。
    (ⅱ)プロジェクト実施者(売主)との線引き
    次に、出資者からみたときに、クラウドファンディング業者がプロジェクト実施者(売主)と一体となって、「売主であると誤解するような外観」を有している場合には、クラウドファンディング業者も、「売主」とみなされ、プロジェクト実施者に適用される法律・規制が課される可能性があります。 出資者は、純粋に法律的にみると、売主であるプロジェクト実施者から商品・サービスを購入していにすぎず、クラウドファンディング業者から購入しているわけではありません。 実際に、クラウドファンディング業者は、あくまでも取引の場(プラットフォーム)を提供しているだけです。 しかし、出資者は、商品などを購入する際に、プロジェクト実施者と直接コミュニケーションをとるのではなく、購入の操作そのものは、クラウドファンディング業者の用意したサイトの仕様に従って行います。 そうすると、出資者かみらたとき、あたかも、クラウドファンディング業者から商品などを購入しているかのような気分になってきます。 これは、アマゾン、楽天市場などのインターネットショッピングモールや、メルカリなどでも同じようなことが言えます。 そこで、
    1. クラウドファンディング業者を売主と信じてもやむをえない外観があること
    2. その外観があることについて、クラウドファンディング業者に責任があること
    3. 出資者がクラウドファンディング業者を売主と誤解して取引をした場合
    には、出資者に大きな落ち度(=重過失)がない限り、クラウドファンディング業者は、プロジェクト実施者(売主)と同様の義務を負う可能性があります。 具体的には、
    • 特定商取引法に基づく表記
    • 瑕疵担保責任
    • 税務上の問題
    についての責任を取らされるリスクがあるのです。 では、購入型クラウドファンディング業者は、どのようにしてこれらの法律リスクを回避すればいいのでしょうか? それは、サービスの利用規約の中に、
    • プラットフォーマーとしての立場の表明
    • 免責条項
    などを設けることです。 購入型クラウドファンディングサイトの代表格である「makuake」では、以下のようにクラウドファンディング業者は、あくまでも取引の場を提供しているにすぎない、ということを明記しています。 【makuake利用規約】
    第2条(本サービスと当社の役割) 本サービスは、クラウドファンディングサイトであり、会員間での交流やプロジェクト支援の場や機会を提供するサービスです。 会員間のプロジェクトの支援に関する売買契約(成立・取り消し・解約・解除等の一切)は、すべて当事者会員間(または関連する第三者を含むがこれに限られません。以下、「会員間等」といいます) の自己責任によるものとし、 当社は取り消し、中途解約、解除、変更、返金、保証など当事者間等における契約の履行には一切関与いたしません。 会員間等においてトラブル等が発生した場合についても、当社が別途定めるケースを除き、当社が仲裁し、解決にあたることはございませんので、取引に際しては十分に注意し、予めご了承の上ご利用ください 第18条(免責) 当社は、本サービスを通じて行われた第三者と会員との取引について、一切の責任を負わないものとし、全ての取引は当該第三者と会員の責任においてなされるものとします。
    もっとも、対処法は、サイトによって色々ありますので、詳細な利用規約の作り方については、「5分でわかる!web・アプリ利用規約の書き方【ひな形付】」の中にある「ECサイト・アプリ利用規約の書き方【ひな形ダウンロード付】」の項目をご覧ください。

    ③出資者

    購入型クラウドファンディングを行う場合に、出資者(購入者)に適用される法律・規制はどうなっているのでしょうか? 購入者を直接に規制する法律は特にありませんが、以下のリスクがあるので注意が必要です。
    (ⅰ)リターンが返ってこない等のリスク
    購入型では、プロジェクト実施者が、クラウドファンディングサイトという「インターネットサイト」を通じて商品を販売しているため、「売主」としての義務を負担します。 反対にいえば、出資者は、「買主」として、法律的には、リターン(商品・サービス)の引渡しを請求できる権利をもっています。 しかし、クラウドファンディングサイトで実施されるプロジェクトの多くは、銀行の融資が下りないほど事業の見通しが甘いものであったり、ビジネスの初心者が募集しているものがほとんです。 そのため、プロジェクト実施者の中には、資金は集めたものの、すぐに倒産してしまった、あるいは、そこまでいかなくても、お金をもって行方不明になったり、他に流用してしまう、といった事態が想定されます。 そのため、出資者は、「代金を払ったのだから当然、商品が手に入る」と楽観視するのではなく、出資をする前に、プロジェクト実施者の事業・力をシビアに見極めて出資をするようにしましょう。
    (ⅱ)商品に瑕疵があるリスク
    商品には欠陥(=瑕疵)がつきものです。 それは、購入型クラウドファンディングも同じです。 特に、購入型クラウドファンディングサイトでは、市場にはない、先鋭的な最新のテクノロジーを用いた商品(例:充電いらずのスマートウォッチ。)を作ろうとしているため、なおさら欠陥品も多くなります。 そこで、出資者は、買主として、事後的に、売主に対して、瑕疵担保責任は問えるとしても、こういった欠陥品が届くリスクがあることを事前に知ったうえで、出資をする必要があります。

    4 小括

    小括 以上のように、クラウドファンディングサイトを通じて取引をする場合には、①プロジェクト実施者、②クラウドファンディング業者、③出資者のそれぞれについて、適用される法律・規制が異なります。 また、①投資型、②寄付型、③購入型のいずれなのかによっても、適用される法律・規制は異なります。 そのため、クラウドファンディングを利用する際には、自分がどの立場で取引をし、どのタイプのクラウドファンディングサイトを開設・利用しようとしているのかを強く意識して、取引をはじめる必要がありますね。

    5 まとめ

    これまでの解説をまとめますと、以下のようになります。
    • クラウドファンディングには、3つのタイプがある。①投資型、②寄付型、③購入型の3種類。
    • クラウドファンディングの法律規制を考えるにあたっては、①プロジェクト実施者、②クラウドファンディング業者、③出資者の3つの視点からみる必要がある。
    • それぞれに適用される法律は、以下のとおりクラウドファンディングの事業タイプ毎の法律規制一覧
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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