弁護士が解説する2024年フリーランス新法の改正点まとめ|今後の働き方への影響と注意点
2024.10.02

この記事の目次
はじめに
弁護士の勝部です。 2024年11月に、フリーランス(特定受託事業者)が安心して業務に従事できる環境を整備するため、フリーランスに関する新たな規制である「フリーランス新法」が施行されます。 これにより、フリーランスとして活動する人々や、フリーランスに仕事を発注する企業にとって大きな変革をもたらされます。 私は2024年現在、経済産業省・中小企業庁主催の適正取引講習会「下請法(実践編)」の講師を務めておりますが、法施行が近づいてきたこともあり、講習会の中でこのフリーランス新法に関する質問を受けることもあります。 このフリーランス新法は、労働法と下請法のどちらも適用されないフリーランスの権利を保護するために制定されたものです。 この記事では、この新法施行の背景から具体的な変更点、法施行後に必要な対応について、フリーランスや自営業の方、業務委託契約を頻繁に行う企業にとっても、知っておくべき重要なポイントをわかりやすくご紹介します。 なお、フリーランスに関する問題のうち、エンジニア常駐などに関するSES契約について気になる方は、関連する「偽装請負とは?4つの判断基準と罰則を弁護士がわかりやすく解説!」「SES契約とは?契約の性質や派遣法との違いについて弁護士が解説!」も参考にしてください。1. 2024年のフリーランス新法とは?
(1) フリーランス新法の概要
フリーランス新法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)といいます。令和5年4月28日に可決・成立し、同年5月12日に公布されました。 この施行により、フリーランスの稼働条件の向上や報酬トラブルへの対策が強化され、フリーランスの権利保護が大幅に向上します。(2) フリーランス新法制定の背景と目的
2024年11月に施行される「フリーランス新法」は、急増するフリーランス人口とその働き方に対応するために策定されました。日本では、働き方改革が進む中、従来の会社員という形態だけではなく、フリーランスとしての働き方が注目を集めています。 しかし、労働法が想定しているのは主に雇用者と従業員の関係であり、フリーランスはその保護対象から外れていました。 また、企業から業務委託を受けて仕事をする下請事業者については、従来から下請法の保護がありましたが、下請法の適用があるのは、資本金1000万円を超える親事業者からの発注であり、これに該当しない場合には下請法の適用もありませんでした。 こういった状況において、報酬トラブルや不適切な契約内容によってフリーランスが不利益を被る事例が後を絶ちませんでした。 フリーランス新法の目的は、そうした問題を解決してフリーランスの⽅が安⼼して働ける環境を整備するため、①フリーランスの⽅と企業などの発注事業者の間の取引の適正化と②フリーランスの⽅の就業環境の整備を図ることを⽬的としています。(フリーランス法1条参照)。(3) フリーランス新法の具体的な内容
フリーランス新法は、フリーランスが業務委託契約やプロジェクトベースの契約を結ぶ際に直面する問題を解決することを目指しています。以下のような主なポイントが含まれています。- フリーランスの定義の明確化
- 報酬支払いの規定強化
- 業務委託契約における契約内容の明確化【注:特定業務委託事業者は、(期間の長短を問わず)重要な取引条件を書面または電磁的方法でフリーランスに明示しなければならない。/根拠:フリーランス法3条】
- 労働条件に関する法的保護の強化
2. 2024年フリーランス新法の主なポイント
(1) フリーランスの定義を明確化
この法律の対象は、フリーランスと企業(発注事業者)の取引です。 それぞれの定義は以下のとおりです。 フリーランスは「業務委託を受ける側」で、従業員を雇っていない個人事業主のことを指します。 企業は「業務を依頼する側」で、従業員を雇用している事業者です。 例えば、個人のカメラマンやプログラマが企業から仕事(撮影やコーディング)を依頼される場合、この法律が適用されます。 ただし、従業員を雇っているフリーランスや、消費者を相手にしているフリーランスにはこの法律は適用されません。(2) 発注事業者の義務
発注事業者には、フリーランスとの取引において、いくつかの義務が課されています。 この義務は、基本的には下請法における親事業者の義務とほぼ重なります。ですので、下請法の取引類型に該当する発注をすでにしており、下請法に基づいた発注ルールを理解している事業者においては、対応方針はおのずと見えてくると思います。 ここでは具体的な内容を説明します。 ① 書面での取引条件の明示 企業がフリーランスに仕事を依頼した際には、すぐに「業務内容」「報酬」「支払期日」などの取引条件を書面や電子的に明示しなければなりません。 この書面又は電磁的方法による明示を「3条通知」といいます。 書面とありますので、口頭や電話での伝達はNGです。 ただし、発注書や契約書を紙で作成することが必須というわけではなく、以下の伝達方法も認められています。- ファクシミリ(紙が排出される、又は受信データの記録機能を有するものに送信する場合)
- 電子メール
- チャットツール
- ショートメッセージサービス(SMS)
- CD-R、USBメモリ等
- ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のDM機能
- 仕事が終わっても報酬を払わない(受領拒否)
- 約束した報酬を一方的に減らす(報酬の減額)
- 不必要な返品を求める(返品)
- 安く買い叩く(買いたたき)
- 無理に商品やサービスを買わせる(購入・利用強制)
- 不当な利益を要求する
- 一方的に契約内容を変更したり、やり直しを要求する
(3) 遵守すべき発注事業者の義務は発注事業者の種類によって異なる
これら7つの義務は発注事業者の基本的義務ですが、発注事業者の種類によって、どの義務規定が適用されるのかが異なってきます。 ■発注事業者が従業員のいない法人や、個人である場合 この場合は、「① 書面での取引条件の明示」のみが適用されます。 なお、この規定からも分かるように、フリーランスからフリーランスへの発注であっても義務規定の適用はあります。 自分はフリーランスだから義務規定の適用はないということにはなりませんので、注意してください。 ■発注事業者が従業員のいる法人や、個人である場合 この場合は、「① 書面での取引条件の明示」「② 報酬支払期日の設定」「④ 募集情報の正確さ」「⑥ ハラスメント対策」が適用されます。 ■発注事業者が従業員のいる法人や、個人であり、1ヶ月以上の業務委託である場合(更新後の契約期間も含む) この場合は、「① 書面での取引条件の明示」「② 報酬支払期日の設定」「③ 禁止される行為」「④ 募集情報の正確さ」「⑥ ハラスメント対策」が適用されます。 ■発注事業者が従業員のいる法人や、個人であり、6ヶ月以上の業務委託である場合(更新後の契約期間も含む) この場合は、①~⑦のすべてが適用されます。3. フリーランス新法がフリーランスに与える影響
(1) 報酬に関する影響
フリーランスが最も気にかけるべきは報酬に関する問題です。 報酬については、まず、書面で明示されている必要があります(口頭発注はNG)。また、適正額であること、法令の定める期間内(仕事を完了してから60日以内)に支払いが完了すること、買いたたきや減額などの禁止行為に該当しないことも求められます。(2) 労働条件(稼働条件)の改善とリスク管理
労働条件(稼働条件)に関しても、新法施行によって大きく改善される見込みです。特に、書面発注がなされることによって契約内容の曖昧さがなくなることで、フリーランスが契約時に直面するリスクが軽減されます。契約交渉時においても、法律の枠組みに基づいて権利を主張しやすくなるため、より公平な交渉が可能となります。 ただし、発注書面を作成していても必要な条項を欠いていたり、必要な条項は存在するものの、内容が不公平である場合も想定されます。 現に、下請法が適用される取引においても、発注書面(3条書面)の記載の一部を欠いているような契約書が作成されていることも少なくありません。下請法は企業法務を手掛ける弁護士にとっては必須の法律ではありますが、司法試験の受験科目ではありませんし、比較的マイナーな部類の法令に該当することが影響しているのかも知れません。 フリーランス新法についても個々の発注内容が法令に適合しているかどうかまでを保証するものでは当然ありませんので、最終的には発注事業者やフリーランスの方で適切な発注内容なのかを確認する必要があります。(3) 契約交渉時の新たな注意点
新法施行により、契約書に記載すべき項目が増加します。これにより、契約交渉時には、より詳細な確認が必要となります。契約書において何を明記すべきかを理解し、フリーランスとしての権利を守るための準備が求められます。4. 契約書の見直しポイント
(1) 契約書・発注書面に含めるべき必須項目
フリーランス新法では以下の取引条件を明示する義務があります。- 業務の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 発注事業者・フリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 給付を受領/役務提供を受ける日
- 給付を受領/役務提供を受ける場所
- (検査を行う場合)検査完了日
- (現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項











