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債権回収代行業をする際に注意すべき3つのポイントを弁護士が解説!

2019.07.272019.07.27
この記事の目次
    はじめに 債権回収代行業は、その性質上、業務の適正さや健全性が強く求められます。そのため、債権回収代行業を行うためには、法務大臣の許可が必要とされているなど、守らなければならないルールが多数存在します。 この点、許可が必要となることは知っているけど、その他業務に関してどのような規制に留意すべきかを知っている方は少ないのではないでしょうか。 そこで今回は、債権回収代行業を始めたい、または、既に始めている事業者が知っておくべきルールについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

    1 債権回収の代行

    (1)債権回収代行とは?

    「債権回収代行」とは、弁護士または弁護士法人以外の者が、委託または譲渡された「特定金銭債権」を管理、回収することを事業として行うことをいいます。 「債権回収代行」とは、一般的な呼称であり、法律上は「債権管理回収業」といいます。 「特定金銭債権」とは、事業者が回収代行をしてもいいと法律で認められている金銭債権のことをいいます。 特定金銭債権には、たとえば以下のようなものがあります。
    • 銀行などの金融機関が持っている貸付債権
    • クレジットカード利用による債権
    • 倒産手続きをしている会社が持っている債権
    このように、事業者が取り立てることができる債権は、以下で説明する「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」によって、特定金銭債権と決められています。 サービサー法は、主に債権回収代行業(債権管理回収業)を対象としてさまざまなルールを設けています。 以下で、サービサー法の仕組みについてみていきましょう。

    (2)サービサー法の仕組み

    従来、債権回収代行業を行えるのは、弁護士や弁護士法人だけでした。 ですが、回収の難しい不良債権が増えて、弁護士などだけでは債権を回収しきれないという事態に陥りました。 そこで、サービサー法が創設され、民間事業者も債権回収代行業を行うことが可能になりました。 サービサー法は、債権回収会社に対し、以下の図のように、
    1. 債権回収の制限
    2. 債権回収の業務
    という2つの観点から、さまざまなルールを設けています。

    ①債権回収の制限

    上の図にあるように、債権回収代行を事業として行う会社(=債権回収会社)は、以下のようなルールを守る必要があります。
    • 法務大臣の許可が必要となる
    • 警察庁長官や法務大臣から立入検査をうける
    • 弁護士会などから弁護士取締役の推薦をうける
    債権回収会社は、法務大臣から許可を受ける必要がありますが、その審査では、警察庁長官と意見の聴取・陳述のやり取りをするなどして、債権回収会社が暴力団などの反社会的組織とかかわりをもっていないかを確認することになっています。そうすることで、反社会的組織の排除を徹底しています。 また、日本弁護士連合会(日弁連)や弁護士会により推薦される弁護士取締役についても、その審査において、日弁連の意見を聴取するなどして、その適格性を確かめることになっています。 このように、サービサー法は、債権回収会社における業務の適正を確保するために、許可制を採用したり、一定の場合において警察庁長官や法務大臣による立入検査を認めているのです。

    ②債権回収の業務

    債権回収会社が取り扱う特定金銭債権は、以下の図で説明している2つの方法により、債権回収会社に委ねられることになります。 (ⅰ)債権の委託 「債権の委託」とは、未回収となっているような債権を自分に代わって他の者に管理・回収してもらうことをいいます。 この場合、債権回収会社が、債権者にかわって債務者にお金を請求することになります。あくまで、本来の債権者に代わって債務者に請求するだけですので、債権者が債権回収会社に変わるわけではありません。 この点、法務省が公開している「債権回収会社の業務状況について」によると、債権回収会社が取り扱っている債権のうち、約95%に上る債権が受託債権(債権の委託)にあたります。 債権の委託による場合、債権回収会社は、債権者から委託手数料などを支払ってもらうことで収益をあげることになります。   (ⅱ)債権譲渡 「債権譲渡」とは、債権者がもつ債権をそのまま他の者に移転することをいいます。 この場合、債権者は自分が持っている債権を債権回収会社に売ることになります(=債権譲渡)。従来の債権者から債権回収会社に債権が移転したことにより、従来の債権者は債権者としての地位を失い、債権回収会社が新たな債権者として、債務者にお金を請求することになります。 債権譲渡による場合は、債権の回収可能性や債権者の事情などを加味したうえで、債権額よりも低い金額で売買されるのが一般的です。 そのため、債権回収会社が債権額全額を債務者から支払ってもらえれば、その差額は債権回収会社の収益となります。   以上のように、サービサー法は、債権回収会社における業務の健全性などを確保するために、事業を制限する方向での規制(許可制など)や業務そのものに対する規制(特定金銭債権の取り扱いに関するルールなど)を設けています。 そこで、次の項目では、債権回収の制限に関するルールのうちの一つである「許可制」について詳しく見ていきたいと思います。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 債権回収代行業者としての許可基準

    債権回収代行業を行うためには、法務大臣の許可が必要となることは先に見てきたとおりです。 許可を得るためには、主に以下の5つの条件を満たしていることが必要です。
    1. 資本金の額が5億円を下回らないこと
    2. 常務に従事する取締役の中にその業務を公正かつ的確に実行できる知識と経験をもつ弁護士がいること
    3. 暴力団員などが何らかの形で業務に関与するおそれのないこと
    4. 役員の中に一定の者がいないこと
    5. 債権回収代行業を適正に遂行するに足りる人的構成を有していること

    (1)資本金の額が5億円を下回らないこと

    「資本金」とは、事業を始める際に会社が持っているお金のことをいい、会社の財務上の余力を表す指標の一つといえます。 債権回収会社として許可を得るためには、資本金が5億円を下回っていないことが必要です。 資本金が5億円以上あるような大規模な会社の場合、適正に業務が行われているかを厳しく管理する必要性があるため、「会計監査人」を必ずおかなければなりません。 「会計監査人」とは、会社の計算書類などを、会計基準などと照らし合わせて妥当かどうかを判断したり証明したりする機関のことをいい、主に公認会計士か監査法人が担当することとなっています。 このように、大会社であれば、会計監査人などによって会計などが厳格に監査されることになるため、適正に会社運営がなされることが期待できます。

    (2)常務に従事する取締役の中にその業務を公正かつ的確に実行できる知識と経験をもつ弁護士がいること

    弁護士は常勤でなくても構いませんが、業務執行全般を把握し、会社の内部から業務執行全般が適正に行われているかどうかを監督できているといえる程度には、職務に従事している必要があります。 また、職務に従事する弁護士は、債権回収業を適切に実行できるだけの知識や経験をもっている必要があります。 この点、一つの方法として、弁護士会が推薦する弁護士の中から選ぶという方法が考えられます。もちろん、別の弁護士を選ぶことも可能ですが、この場合は、その弁護士に十分な知識や経験があるかについて、法務大臣が日弁連の意見を聴き取ることになっています。

    (3)暴力団員などが何らかの形で業務に関与するおそれのないこと

    法務大臣は、債権回収会社の経営者や従業員など、会社の業務に関わる者が、反社会的組織とかかわりがないかということについて、あらかじめ警察庁長官の意見を聴くこととされています。 反社会的組織とのかかわり方については、例えば以下のようなことが想定されます。
    • 従業員や役員として直接業務に従事する
    • 株主権を利用して事業活動に口出しできる
    • 取引関係などを通じて事業に大きく介入できる
    このように、反社会的組織とのかかわり合いを確認するための審査は、直接業務に従事する者に留まらず、間接的にかかわりをもつ者も対象となるため、徹底されているということができます。

    (4)役員の中に一定の者がいないこと

    一定の者とは、たとえば、以下のような者が挙げられます。
    • 成年被後見人、被保佐人
    • 破産者
    • 一定の前科者
    • 暴力団員など
    • 債権管理回収業について不正や不誠実な行為をする恐れがある者が含まれている株式会社
    これらの者は、債権回収業を適正に遂行・管理できないと考えられるため、経営に関わる役員にこれらの者が含まれていないことが必要です。

    (5)債権回収代行業を適正に遂行するに足りる人的構成を有していること

    債権回収会社は、適正に業務を遂行できるだけの人的構成を取らなければなりません。 例えば、素行不良者などを債権の管理又は回収の業務に従事させていない、といったことが挙げられます。   以上のように、債権回収代行業を行うために許可を得るには、資本金の額や内部における体制などに関し、厳しい条件をクリアしていなければなりません。 これらの条件は、適正に業務を運営する上でどれも必須のものであるため、しっかりと備えておくことが重要です。 これらの条件を満たし、許可を受けた事業者は、債権回収会社として次の項目で見ていくような事業を始めることができます。

    3 債権回収代行のフロー

    債権回収代行業は、以下の図にあるように、まずは、債務者が任意に支払いをするように働きかけるところから始まります。

    (1)債務者が任意に支払う場合

    債権回収会社は、まず始めに、債務者が自分の意思でお金を支払ってくれるように、債務者に対して金銭の支払いを請求することになります。 請求する手段としては、主に以下の2つの手段があります。
    1. 話し合いなどによる請求
    2. ↓

    3. 内容証明などの送付

    ①話し合いなどによる請求

    債務者と実際に会って話し合いをしたり、電話やメール、書面などでお金を返すように請求します。この段階で債務者がお金を支払ってくれれば、債権回収会社としては、回収にかかる費用が電話の通話料や書面の郵便費用などだけで済みます。

    ②内容証明などの送付

    話し合いなどによる請求をしても債務者がお金を支払ってくれない場合は、「内容証明郵便」を債務者に送り、お金を支払うように催促するのが一般的です。 「内容証明郵便」とは、郵便局が「いつ・誰が・誰に・どのような内容」の書面を送ったかを証明してくれる郵便のことをいいます。 そのため、債務者が「そんな郵便は届いていない」と言い訳をすることはできませんし、訴訟になった際には証拠書類にもなります。   以上のように、債権回収会社は、まずは、債務者に対し、自分の意思によって支払いをするように促しますが、債務者がお金を支払ってくれないケースもあります。 そのような場合は、次に説明するような手段を使うことになります。

    (2)債務者が任意で支払わない場合

    債務者が任意での支払いに応じない場合、債権回収会社が次に講じる手段として考えられるのは以下の3つです。
    1. 保全手続き
    2. 裁判手続き
    3. 強制執行

    ①保全手続き

    「保全手続き」とは、債務者が自分の財産を勝手に処分しないようにするための手続きをいいます。 債権回収会社が、債務者に対して金銭の支払いを求める裁判を起こし、勝訴判決を得た場合、債権回収会社は、債務者の財産に対して強制執行をすることまでを想定しておく必要があります。 もっとも、裁判が行われている間などに債務者が自分の財産を勝手に処分してしまうようなことがあると、債権を回収できなくなるおそれがあります。 このようなことがないように、あらかじめ債務者が自分の財産を勝手に処分することができないようにしておく手続きが「保全手続き」です。 具体的には、「仮差押え」や「仮処分」という手続きによることになります。たとえば、債務者の預貯金口座や債務者が所有する不動産などが仮差押えの対象になりますが、仮差押えはあくまで仮に差し押さえるものであるため、実際に債務者の口座に入っている預貯金などを回収するためには、勝訴判決を基に強制執行をする必要があります。 なお、保全手続きは、債務者の財産を確保しておくための手続きであるため、このような必要がない場合には、保全手続きを行う必要はありません。

    ②裁判手続き

    裁判手続きには、以下の2つの手続きがあります。   (ⅰ)訴訟 訴訟は、主に以下の3つに分けられます。
    • 通常訴訟
    • 債権額が60万円以下の場合に提起できる少額訴訟
    • 債務者の発行した手形や小切手を持つ場合に提起できる手形小切手訴訟
    多くの場合、通常訴訟が利用されますが、判決まで時間がかかるうえ、裁判にかかる費用や弁護士に依頼する費用などがかさむため、相応のコストがかかります。 これに対して、少額訴訟や手形小切手訴訟は簡易な手続きであるため、1回きりの審理で判決をもらえるといったメリットがあります。 もっとも、債務者が通常訴訟での審理を希望しているような場合や、債権回収会社が通常訴訟へ移行させる旨の申し出をした場合などには、通常訴訟で審理されることになります。 このように、債権回収会社は、回収状況に応じて、どの訴訟制度を利用するかよく検討しなければなりません。   (ⅱ)支払督促の申立て 「支払督促の申立て」とは、債権者の申立てにより、裁判所が金銭の支払いなどを債務者に催促してくれる制度のことをいいます。支払督促は、書類のみで判断されるため、裁判所に出頭する必要はありません。 また、手数料も通常訴訟の半額であるため、コストを低く抑えられます。 支払督促の申立ての流れは、以下の図のようになります。 債権回収会社は、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して「債務者に貸したお金の支払いを請求する」旨の申立てを行います。 その後、裁判所書記官は、「お金を払ってくださいね」といった内容の支払督促状を債務者に送ります。 その後の流れは、債務者がその請求に対して異議があるかどうかによって、以下のように変わってきます。
      【異議がある場合】 支払督促状を受け取ってから2週間以内に督促異議を提出し、その後、通常訴訟に移行します
      【異議がない場合】 債権回収会社の申立てにより、「仮執行宣言」がなされます
    「仮執行宣言」とは、判決が確定する前であっても、その判決により仮に強制執行をすることができるとする宣言のことをいいます。 もっとも、債権回収会社は、申立てを行わないと仮執行宣言を出してもらえないため、その点は注意しなければなりません。

    ③強制執行

    債権回収会社は、裁判手続きなどによっても債務者がお金を支払わない場合は、裁判手続きなどによって得た判決を基に「強制執行」をすることができます。 「強制執行」とは、債権者が債務者に対して持つ請求権を国の力を借りて実現することをいいます。強制執行の対象となる財産は、主に、不動産や動産(=不動産以外の財産)であるため、それらを競売にかけるなどして、お金に変え、債権を回収することになります。   以上のように、債権回収会社は、まずは任意に支払いを受けられるよう、手段を講じますが、任意の支払いに応じない場合は、裁判所を利用するなどして、債権回収を図ることになります。 もっとも、債権回収代行業に対しては、いくつか守らなければならないルールが課されています。

    4 債権回収代行業への規制

    (1)債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)

    サービサー法は、債権回収代行業に関して、主に以下の5つのルールを設けています。
    1. 名義貸しの禁止
    2. 受取証書の交付、債権証書の返還
    3. 禁止行為
    4. 明示義務
    5. 利息制限法の遵守

    ①名義貸しの禁止

    「名義貸し」とは、会社が、他の会社に対して、自社の名前を貸すことをいいます。 債権回収代行業は、後に見るように、法務大臣の許可を得ない限り行うことができません。 名義貸し禁止されているのは、法務大臣の許可を得ることなく債権回収代行業をすることを防ぎ、適切に業務の運営をさせるためです。 たとえば、本来債権回収代行業を行うことができない反社会的勢力などが、ダミー会社で許可を得て、そのダミー会社の名義で債権回収代行業を行ってしまっては、許可制にした意味がなくなってしまいますよね。 そのため、名義貸しは禁止されているのです。

    ②受取証書の交付、債権証書の返還

    (ⅰ)受取証書の交付 「受取証書」とは、領収書のようなもので、債務者から返済を受けたことを証明する書面のことをいいます。 「受取証書」を簡単に説明すると以下の図のようになります。 このように、債権回収会社は、債務者から全額の返済を受けた場合はもちろんのこと、一部の返済を受けた場合であっても、その返済のたびに債務者に受取証書を交付しなければなりません。 なぜ、受取証書を交付しなければならないかというと、債務者の二重払いを防ぐためです。受取証書は返済をしたことを証明できるものであるため、債権回収会社に再びお金を請求された場合には、受取証書をもって返済を拒否でき、二重払いを防ぐことができます。   (ⅱ)債権証書の返還 「債権証書」とは、債権が成立していることを証明する書面のことをいい、債務者が作成して債権者が所持するものです。 もし、債権証書が作成されて、債権回収会社がその書面をもっている場合には、債務者の全額返済に対して、債権証書の返還を行う必要があります。 債権証書の返還を簡単に説明すると以下の図のようになります。 なぜ、債権証書を返還しなければならないかというと、受取証書と同様に、債務者の二重払いを防ぐためです。債務者は、全額返済しおわっているにもかかわらず、債権回収会社から再びお金を請求された場合、債権証書をもって支払を拒否でき、二重払いを防ぐことができます。 なお、債権回収会社が受取証書の交付や債権証書の返還をしなかった場合、債権回収会社は罰則(ペナルティ)を科される可能性があります。

    ③禁止行為

    債権回収会社は、以下で説明するような行為を禁止されています。   (ⅰ)債務者に威迫や私生活若しくは業務の平穏を害する言動をすること 「威迫」とは、人を脅すなどして、自分に従わせようとすることをいいます。 たとえば、以下のような行為が挙げられます。
    • 大声を上げる
    • 乱暴な言葉を使う
    • 多人数で債務者の自宅や会社に押し掛ける
      「私生活若しくは業務の平穏を害する言動」とは、一般的に私生活や業務に支障をきたすような振る舞いをいいます。 たとえば、以下のような行為が挙げられます。
    • 1日中電話をかけ、または、メールを送る
    • 債務者の家に、債務者が借金をしているとわかるような貼り紙を貼る
    • 債務者の住居の近隣の人に債務者がお金を返さないことを触れ回る
      (ⅱ)暴力団員などを業務に従事させること 債権回収会社は、暴力団員などの反社会的勢力を従業員として雇ったりすることはできません。債権回収という業務の性質上、暴力的側面が出やすいため、業務の健全性を守るために特に重要なルールであるといえます。   (ⅲ)偽りその他不正の手段を使って債権の管理・回収を行うこと 「偽りその他不正の手段」とは、債務者に虚偽の事実を伝えたり、債務者を騙して陥れるような行為をいいます。 たとえば、以下のような行為が挙げられます。
    • 返済された金額や残っている債務額について虚偽の金額を伝えること
    • 債務者が行使できる権利(消滅時効の援用など)が、存在していないなどと嘘をつくこと
      このように、債権回収業務の健全性を保つために、一定の行為が禁止されています。

    ④明示義務

    債権回収会社は、会社の名称や債権を回収する担当者の名前などを教えてほしいと債務者から求められた場合には、これらを明らかにしなければなりません。 債権回収会社に明示義務が課されるのも、業務の健全性を保つために必要であるといえます。

    ⑤利息制限法の遵守

    「利息制限法」とは、債務者を保護する観点から、高い利率での貸付を取り締まる法律です。 債権回収会社は、債務者に対して、利息制限法に定める制限額を超える利息や損害金を請求することはできません。   以上のようなルールがサービサー法によって設けられています。なお、さらに具体的な内容については、「債権管理回収業に関する特別措置法施行規則」によって決められています。同規則の概要については法務省のHPをご覧ください。

    (2)その他法律

    ①民法

    債権を回収する際、債権回収会社は、「(消滅)時効」に注意する必要があります。 「(消滅)時効」とは、お金を支払ってもらう権利をもつ者が、一定期間支払いの請求をしないと、その権利を失い、お金を請求することができなくなる制度のことをいいます。 この時効の制度は、民法改正(2020年4月1日に施行)によって変わります。改正前・改正後の時効制度と、債権回収会社が気を付けなければいけない事項を確認していきましょう。   (ⅰ)民法改正前の時効 改正前の民法における時効には、債権者が請求できるときから10年という原則と、例外的に債権のタイプによって6か月から5年の短い時効が設定されている「短期消滅時効」というものがありました。改正前の民法は、時効が一律ではない点に注意が必要となります。 たとえば、短期消滅時効の例としては、以下のようなものがあります。
    • 医師の診療費などの債権:3年
    • 工事に関する請負代金債権:3年
    • 小売商人の売掛代金債権:2年
    • 旅館、利用利点などの宿泊料・飲食料の債権:1年
      (ⅱ)民法改正後の時効 先ほど説明した短期消滅時効については、債権内容によって時効の期間をわける合理性はないのではないかと考えられたことから、改正法では廃止されます。 民法改正後の時効制度は以下の図のとおりとなります。 民法改正後の時効制度は、現行法の債権者が請求できるときから10年というパターン①に、債権者がお金を請求できると知ったときから5年間というパターン②が追加されます。債権者には、パターン①とパターン②のうち、早く時効がやってくるほうが適用されることになります。 債権回収会社に回収を依頼するような債権は、支払期限が到来したことを債権者は認識していると考えられます。そのため、「債権者が請求できるとき」=「債権者が請求できると知ったとき」だといえることから、基本的に、時効は、債務の支払期限から5年となると考えられます。 改正前のように、債権のタイプによって時効期間がバラバラだったのに比べて、分かりやすくなったといえます。   (ⅲ)経過措置 改正民法は2020年4月1日から施行されますが、時効に関しては、経過措置がとられることになっています。 施行日前に生じた債権は改正前の民法が適用され、施行日後に生じた債権は改正後の民法が適用されることになります。 施行日が過ぎたのだから、改正民法しか適用されないと思い込んでいると、短期消滅時効にひっかかり、債権が時効により消滅していたなんてことになりかねません。 債権回収会社は、改正前・改正後の民法のどちらが適用される債権なのか、時効はいつなのかをきちんと確認することが重要となります。

    ②個人情報保護法

    債権回収会社は、その業務の性質上、債務者や保証人などの個人情報を管理することが多いと考えられます。 そのため、個人情報の漏えい、不正流出がおきないよう、社内の規定を整備し、個人情報の適切な管理体制を整備する必要があります。 具体的に債権回収会社がとるべき管理体制は、法務省の「 債権管理回収業分野における個人情報保護に関するガイドライン」などをご覧ください。

    (3)自主ルール

    「自主ルール」とは、一般社団法人全国サービサー協会が自主的に定めたルールのことをいいます。自主ルールは、協会の会員となっている債権回収会社を対象として、サービサー法やガイドラインなどの遵守の徹底や、ガイドラインなどで決められている事項に関する指針などが定められています。 たとえば、債権回収会社が構築すべき内部統制体制については、
    • 業務の適法性確保のために、不正行為などが発生しない体制を確保すること
    • 弁護士が業務について把握、監督できる体制を確保すること
    などといった指針が設けられています。 また、サービサー法やガイドラインなどを守るための方策として、
    • 法令等違反行為について、従業者からの相談や通報に適切に対応するための体制を整備すること
    などが自主ルールに定められています。 このように、自主ルールは、協会が独自に定めたルールではありますが、自主ルールに違反することが直ちに既存の法令にも違反することになるといったように、既存の法令による規制と同じ内容のルールも存在します。 また、自主ルールに定められているルールは、法令やガイドラインなどによる規制を遵守するための指針であることが多いため、自主ルールに違反すると、その後、法令違反などに問われる事態を招く可能性があります。 法令に違反した場合には、後で説明するような罰則を科される可能性もあるため、自主ルールに則った業務の遂行を心掛けることが必要です。 ※自主ルールについて、詳しく知りたい方は、「債権管理回収業の業務運営に関する自主規制規則」をご覧ください。

    5 債権回収代行業の許可申請

    債権回収代行業を行うには、法務大臣の許可が必要となることは、既に見た通りです。 以下は、許可申請手続きのフローを図にしたものです。

    ①提出

    許可を受けようとする事業者は、許可申請書と添付書類を法務大臣に提出します。許可申請書を提出する際には、登録免許税として15万円を納付しなければなりません。 添付書類は、以下の8点を用意することになります。
      【添付書類】
    • 定款
    • 登記事項証明書
    • 役員や重要な使用人の住民票の写し
    • 取締役である弁護士が所属弁護士会の推薦を受けている場合はその旨を証明する写し
    • 許可申請書に押された代表取締役などの印鑑の証明書
    • 申請者が許可の条件を満たしている者であることを宣誓する書面
    • 役員などが成年被後見人や破産者など一定の者でないことを宣誓する書面
    • 申請する債権回収会社の組織と業務の概要を記載した書面
    ※許可申請書の書式は、「法務省HP」よりダウンロードすることができます。

    ②審査

    法務大臣は、提出を受けた書類に基づき、許可条件を満たしているかを審査します。このとき、許可を受けようとする事業者が暴力団員などと関係がないかについて警察庁長官に意見を聞いたり、取締役である弁護士の適格性について日弁連に意見を聞いたりすることになっています。 なお、法務大臣が許否の判断を出すまでの間であれば、許可申請書や添付書類の記載内容について変更を行うことができます。変更がある場合、2週間以内に法務大臣に届出をしなければなりません。

    ③交付

    審査の結果、許可をする場合には許可状を交付します。反対に、許可をしない場合には、許可をしない旨と理由を記載した書面を交付します。 法務大臣が許可申請の書面を受け取ってから、審査結果が通知されるまでには約2か月かかります。なお、警察庁長官や日弁連に意見を聞くのに時間がかかってしまうこともあり、その場合には、2か月を超えることもあります。   このように、審査結果が通知されるまでは短く見積もっても、2か月という期間を要し、申請書に不備などがあれば、さらに時間がかかるおそれがあります。許可審査をスムーズに進めるためにも、提出書類は不備なく準備することが大切です。 最後に、これまで見てきた規制などに違反した場合に、どのような罰則(ペナルティ)を科される可能性があるかを見ていきましょう。

    6 ペナルティ

    債権回収会社が、業務に関する規制や申請手続きに関するルールに違反すると、
    • 最大3年の懲役
    • 最大300万円の罰金
    のいずれか、または両方が科される可能性があります。 また、債権回収会社の従業員や代表者の代理人などが同じ違反行為をした場合、その行為者だけでなく債権回収会社に対しても、
    • 最大300万円の罰金
    が科される可能性があります。

    7 小括

    債権回収代行業は、業務の性質上、業務の適正さや健全性を確保する必要性が高いため、サービサー法を始め、規制も多岐にわたります。 これらのルールに違反すると、罰則(ペナルティ)が科される可能性もあるため、事業者は、法令やガイドライン、自主ルールに則った運営が求められます。

    8 まとめ

    これまでの解説をまとめると、以下のようになります。
    • 「債権回収代行」とは、お金を請求する権利を持つ人(=債権者)に代わってお金を取り立てることをいう
    • 事業者が債権回収代行できるお金は、「特定金銭債権」に限定されている
    • 債権回収会社が事業を始めるには法務大臣の許可が必要である
    • 許可の条件は、主に①資本金の額が5億円を下回らない、②常務に従事する取締役の中に必要な知識と経験をもつ弁護士がいる、③暴力団員などが関与するおそれがない、④役員の中に一定の者がいない、⑤業務を適正に遂行するに足りる人的構成を有していることの5つである
    • 債権回収会社は、任意の手段から強制の手段といったように段階を踏んで債務者からお金を回収していくことが一般的である
    • 任意の手段として①話し合いなどによる請求、②内容証明などの送付の2つがある
    • 強制の手段として①保全手続き、②裁判手続き、③強制執行の3つがある
    • 債権回収代行業に対する業務規制として、主に①サービサー法、②民法、③自主ルールの3つがある
    • サービサー法の規制は、主に①名義貸しの禁止、②受取証書の交付、債権証書の返還、③禁止行為、④明示義務、⑤利息制限法の順守の5点である
    • 債権回収代行業の許可申請の流れは、①債権回収会社による書類の提出、②法務大臣の審査、③許可状の交付となる
    • 業務の規制、許可申請手続きに関する規制に反した場合、①最大3年の懲役、②最大300万円の罰金のいずれか、または両方が科される可能性がある
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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