eスポーツ大会における法律の問題点は?関係する5つの法律を解説!
2020.07.08

この記事の目次
はじめに
近時、eスポーツが各種の世界大会において、正式種目に認定されるなど注目を集めています。そのため、あらたに事業として展開することを視野に入れている事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。 とはいえ、eスポーツは、まだまだ歴史が浅いため、法律との関係でどのような問題点があるのか、よく分かりませんよね。 そこで今回は、eスポーツをめぐる規制として、どのような法律があるのかを中心に、新規事業に強い弁護士が解説します。1 eスポーツとは
「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」とは、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツを指し、テレビゲームやコンピューターゲームを用いたスポーツ競技のことをいいます。
eスポーツでプレイされるゲームとしては、ストリートファイター(格闘)、ウイニングイレブン(サッカー)などが挙げられ、プレイヤーや観戦者が徐々に増加の傾向にあると言われています。
2018年には、インドネシアのジャカルタ・パレンバンで開催された第18回アジア競技大会でデモンストレーション競技として、eスポーツが正式に採用され、『ウイニングイレブン2018』の対戦では日本代表が優勝しました。
日本は、アメリカや中国、韓国に比べるといまだ市場規模は小さいと言われていますが、今後は拡大していく見込みです。
大会が開かれる場合の関係図は、以下のようになります。
①メディア
大会運営者は、メディアとの間で放映権について協議することになります。 具体的には、放映料の支払条件などを取り決めることになります。②参加者
eスポーツ大会では、対戦を繰り広げる参加者が不可欠です。トーナメントなどで勝ち抜いた参加者に対して賞金や賞品を授与する場合、法的に注意しなければならない場合があります。この点は、後ほど詳しく解説します。③観客
eスポーツ大会の観戦者数も近年増え続けています。 観戦者からは、観戦するためのチケット代を徴収することが一般的です。 以上のように、eスポーツ大会を開催する際には、大会運営者をはじめとして複数の関係者が関わってくるため、以下で見ていくような法律問題が発生します。2 eスポーツにおける法律問題
eスポーツに関係する法律は、
- 著作権法
- 刑法(賭博罪)
- 景品表示法
- 風俗営業法
- 興行場法
3 著作権法
eスポーツ大会では、参加者が対戦するビデオゲームを用意する必要があります。
近時において、ビデオゲームは、映画の著作物として著作物性が認められると考えられています。
ここでいう「映画の著作物」とは、音などを伴い、連続する映像に表現されたもので、創作性が認められるものをいいます。
そのため、eスポーツ大会において、他社製のビデオゲームを利用する際には、著作権者であるゲームメーカーなどからライセンス許諾を受けるなどの対応が必要になります。
著作物性のあるビデオゲームを無断で利用すると著作権侵害となる可能性があります。
仮に、著作権侵害となった場合、民事上のペナルティとして、
- 差止請求
- 損害賠償請求
- 不当利得返還請求
- 名誉回復措置
- 最大10年の懲役
- 最大1,000万円の罰金
4 刑法(賭博罪)
「賭博罪」とは、金銭やその他価値のある物品を対象として、賭け事をした場合に成立する刑法上の犯罪です。
eスポーツ大会の中には、賞金や賞品が用意されている大会もあります。
そのため、大会における対戦の勝敗に関して、賞金を賭けていると考えることもでき、刑法上の賭博罪にあたるかどうかが問題となります。
この点、賭博罪が成立するためには、
- 偶然の勝敗であること
- 「一時的娯楽を供するもの」以外を賭けること
- 得喪を争うこと
(1)偶然の勝敗であること
「偶然の勝敗」とは、勝敗の結果について、一切の技術的要素が入っていないことまでを意味するものではありません。賭博罪にいう「偶然の勝敗」は、その結果に偶然性が介在していることで認められます。(2)「一時的娯楽を供するもの」以外を賭けること
「一時的娯楽を供するもの」とは、飲食物や旅行などのように、一時的な娯楽を供するものをいいます。 そのため、お金やブランド品などのように、一時的でなく、長期にわたって価値のあるものは、ここでいう「一時的娯楽を供するもの」にあたりません。 賭博罪が成立するためには、一時的娯楽を供するもの以外の財物を賭けることが必要です。(3)得喪を争うこと
「得喪を争うこと」とは、勝者が財物を得て、敗者が財物を失うことをいいます。 たとえば、麻雀やトランプゲームで全員が賞金を出し合い、一番で上がった人が賞金を総取りするような場合、勝者が賞金(財物)を得る反面、敗者は自分が出した賞金(財物)を失うことになるため、「得喪を争う」といえます。 賞金の授与が予定されているeスポーツ大会では、先に見たように、参加者の努力や能力が結果に反映される要素はあるものの、偶然性が影響する可能性もあるため、上記(1)(2)を満たすことになります。 また、大会参加者に授与される賞金が大会参加者から徴収された参加費から出ているような場合には、「(3)得喪を争うこと」といえるかが問題となります。 そこで、賭博罪にあたらないようにするためには、大会参加者が「(3)得喪を争う」関係にならないようにする必要があります。 具体的には、以下のような方法をとることが考えられます。- 賞金・賞品が、参加者や主催者以外の第三者(スポンサー)から提供されること
- 賞金がスポンサーから直接大会参加者に交付されること
5 景品表示法
「景品表示法」とは、商品や役務(サービス)を提供する際に、不当な表示や景品類によって消費者を誘引することを防止し、消費者において合理的な選択をすることを阻害しないようにするための法律です。
景品表示法には、主に、商品や役務に係る表示を対象とした「表示規制」と景品類を対象とした「景品規制」とがありますが、eスポーツ大会との関係で問題となるのは、「景品規制」です。
本体となる商品に、あまりに高価な景品類(おまけ)を付けてしまうと、消費者は合理的な選択を阻害されるおそれがあります。
そのため、本体に付随して提供する景品類について、その最高額や総額に制限を課しているのが「景品規制」ということになります。
「景品」にあたるかどうかは、
- 顧客誘引性
- 取引付随性
- 経済上の利益
(1)顧客誘引性
「顧客誘引性」とは、消費者やユーザーを誘引するための手段となっているかどうかということを意味します。 顧客誘引性があるかどうかは、事業者やサービス提供者の意図といった主観ではなく、客観的に顧客を誘引するための手段となっているかという基準で判断されます。(2)取引付随性
「取引付随性」とは、取引をすることを条件として、そこに付随して景品が提供されているかどうかということを意味します。 たとえば、「電子決済でスイーツを500円以上買うと、10%キャッシュバック」というキキャンペーンについて考えてみましょう。 この場合、10%のキャッシュバックを受けるためには、スイーツを500円以上買うことが条件となっており、スイーツを500円以上買うことにより、そこに付随して10%のキャッシュバックを受けられるという関係にあります。 そのため、このキャンペーンにおける「10%のキャッシュバック」には取引付随性が認められます。 また、ここでいう「取引付随性」は、自社が提供する商品やサービスの取引に限らず、自社が他社に対して協賛するような関係であって、共同して経済上の利益を提供しているといえる場合にも認められる可能性があります。 さらに、取引を条件としていない場合であっても、商品などを購入することで、経済上の利益の提供を受けることができたり、提供を受けることが簡単になる場合にも取引付随性が認められます。(3)経済上の利益
「経済上の利益」とは、提供される景品において、物品、金銭その他の経済上の利益が認められるかということを意味します。 「経済上の利益」は、ざっくりいうと、提供される景品が現実的に換金できるものであれば、認められます。 これらの条件をすべて満たす景品は、景品規制の対象となります。 以上のことを前提に、賞金つきeスポーツ大会について見てみましょう。 賞金つきeスポーツ大会では、特に、提供される賞金について「取引付随性」が認められるかという点が問題となります。 この点、ゲームメーカーが主催者・スポンサーとなって賞金・賞品を提供する場合はもちろんのこと、ゲームメーカーが主催者・スポンサーでなくとも、大会に協賛社として加わっているような場合、取引付随性があると判断される可能性があります。 特に、ゲームメーカーが主催者・スポンサーになって賞金や賞品を提供する場合は、ゲームの購入者やゲームセンターなどにおいて有料でゲームをした者が、賞金などを受け取ることが可能になり、また、簡単になるものといえます。 このように、ゲームメーカーが主催者・スポンサーとなって開かれる賞金つきeスポーツ大会では、ゲームソフトの購入を誘引するための手段として(顧客誘引性)、大会に付随して賞金を提供している(取引付随性+経済上の利益)と考えることができます。 そのため、大会で提供される賞金は、景品表示法上の「景品」にあたる可能性があります。 この場合、景品類の金額には、以下の制限がかかります。- 最高額:取引価格の20倍まで(最大で10万円)
- 総額:売上予定総額の2%まで
6 風俗営業法
「風俗営業法」とは、風俗営業や性風俗関連特殊営業などについて、営業時間や営業区域を制限することにより、善良の風俗を確保し、また、少年の健全な育成の障害を防止することを目的とした法律です。
風営法では、「風俗営業」を以下の5つの類型に分けて定めています。
- 1号営業(カフェ、料理店など)
- 2号営業(営業所内の照度を10ルクス以下で営む喫茶店、バーなど)
- 3号営業(他から見通すことが困難で、5平方メートル以下の広さをもつ飲食店など)
- 4号営業(麻雀屋、パチンコ屋など)
- 5号営業(ゲームセンターなど)
- 最大2年の懲役
- 最大200万円の罰金
- 最大200万円の罰金
-
- ⅰ)遊技設備にあたるか
-
- ⅱ)開催場所が店舗その他これに類する区画された施設にあたるか
- ⅲ)大会の開催が「営業」にあたるか
ⅰ)遊技設備にあたるか
「遊技設備」とは、勝敗を争う目的で遊技をさせる機能を持つテレビゲーム機、または、遊技の結果が数字・文字などによってモニターなどに表示されるテレビゲーム機のことをいいます。 この点、eスポーツ大会は、テレビゲーム機を用いて参加者間で勝敗を争うことを目的としています。 そのため、eスポーツ大会で使われるゲーム機は、「勝敗を争う目的で遊技をさせる機能をもつテレビゲーム機」にあたるといえ、遊技設備にあたると考えられます。ⅱ)開催場所が店舗その他これに類する区画された施設にあたるか
ここで言う「店舗」とは、1つの営業の単位といえる程度に外形的に独立した施設のことを言います。 たとえば、道路沿いのコンビニのように1つの営業の単位として独立して営業するような施設がこれに当たります。 また、「その他これに類する区画された施設」とは、ショッピングモールなどの一角などに設置されたコーナーや、イベント会場の出展ブースのように、店舗にあたらない区画された施設のことをいいます。 この点、eスポーツ大会を屋内で実施する場合において、そのスペースが区画されているような場合は、「その他これに類する区画された施設」にあたる可能性は高いと考えられます。ⅲ)営業
「営業」とは、営利目的で、同様の行為を反復継続的に行うことをいいます。 eスポーツ大会が「営業」にあたるかどうかは、行われる遊技の回数や遊技料、風営法の目的を阻害する可能性などを総合的に考慮したうえで判断されることになります。 このように、eスポーツ大会は、場合によっては、5号営業にあたる可能性があります。 そのため、eスポーツ大会を開く場合には、風営法を所管する警察署に相談しながら、進めていくことをお勧めします。7 興行場法
「興行場法」とは、映画や演劇、音楽、スポーツなどの施設の営業を規制する法律です。
ここでいう「興行場」とは、映画や演劇、見世物などを公衆に見せたり聞かせる施設のことをいいます。
興行場で営業する場合、都道府県知事の許可を受ける必要があります。
にもかかわらず、この許可を得ずに興行場を運営した場合には、
- 最大6か月の懲役
- 最大5,000円の罰金
- 最大5,000円の罰金
8 小括
eスポーツは、近時、盛り上がりを見せつつあるスポーツ・競技のうちの一つです。
あらたな事業分野であるため、規制が十分に整備されていない側面もあります。
とはいえ、現状において、押さえておくべき既存の規制も存在し、これらの規制に違反すると、罰則を科される可能性もあります。
そのため、eスポーツ大会を開催・運営するためには、開催・運営する大会の仕組みと照らせ合わせるなどして、関係する法律に違反しないことが大切です。
9 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりになります。- 「eスポーツ」とは、電子機器やゲーム機を用いて勝敗を争う競技のことである
- eスポーツ大会に関係する法律は、①著作権者、②刑法(賭博罪)、③景品表示法、④風俗営業法、⑤興行場法である
- eスポーツ大会で他社製のビデオゲームを利用する場合、ライセンス契約を締結するなどして、ビデオゲーム(著作物)の使用権を取得する必要がある
- 出場者から参加費を徴収する場合には、スポンサーから直接賞品・賞金を提供するなど、賞品・賞金を参加費から拠出しないことが求められる
- eスポーツ大会に伴う賞品や賞金は、景表法上の「景品」に該当する可能性がある
- eスポーツ大会は、風営法上の5号営業に該当する可能性がある
- 会場に観客を入れて、反復継続の意思をもってeスポーツ大会を開催する場合には、興行場法上の規制対象となる可能性が高い











