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スタートアップ

グレーゾーン解消制度とは?5つの活用事例と利用方法を弁護士が解説

2018.05.072018.05.07
この記事の目次

    はじめに

    新規事業を任されたが、色々と法律の規制があるようだし、事前のリサーチが必要になりそうだ。
    そもそも、この事業には、どんな法律が関係してくるのだろうか。弁護士にも相談してみたけど、ハッキリしない回答だったし、どうしよう・・・

    このような悩みを解消する制度があるのをご存知でしょうか。
    この制度を「グレーゾーン解消制度」といいます。

    今回は、この「グレーゾーン解消制度」について、制度の利用方法や利用する際の注意点などについて、解説します。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    1 新規事業の適法性チェックの方法

    チェック
    始めに、みなさんは、新規事業を始める際に、その事業に対して法律の規制がかかるかどうかについて、どのような方法で調べますか。
    主に、以下の3つの方法が考えられます。
    • 自前でネット・本で調べて確認する
    • 弁護士などの専門家に相談する
    • グレーゾーン解消制度
    それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

    (1)自前で調べる方法

    まずは、ネットや本を使って、自分で調べる方が多いと思います。

    例えば、「この事業はどうも〇〇法が関係してきそうだ。ネットで〇〇法で検索してみるか。」「〇〇法の入門書を買って調べてみよう!」といった感じで調べる方法です。専門家に相談するよりも、時間や労力がかからないというメリットがありますね。

    ただ、その方法によって調べた結果に自信を持てますか?

    あくまで独自の調査なので、その結果が正しいという保障はありませんし、専門家ではないので、調査をするといっても、色々と限界がありますよね。

    (2)専門家に相談する

    そこで、次の方法として、弁護士などの専門家に相談することが考えられます。
    法律の専門家なので、自前で調べるよりは、正確で細かい結果を得られることが多いと思います。

    ですが、自前で調べるよりも、はるかに高い出費(弁護士費用など)を伴いますし、専門家だからといって、確実な結果を必ず出してくれるというわけではありません。
    法律に違反するかしないかの判断は、難しいことも少なくありませんし、場合によっては、判断がつかないまま(グレー)ということも少なくありません。
    「弁護士に相談してもハッキリした答えをもらえないなら、どうしようもないじゃないか。」と思った方もいらっしゃると思います。

    そこで、次に考えられるのが「グレーゾーン解消制度」の利用です。

    (3)グレーゾーン解消制度の利用

    「グレーゾーン解消制度」とは、自分が始めようとしている事業に法律の規制が適用されるかどうかを国に対して確認できる制度です。
    国からお墨付きをもらえれば、安心して事業を始めることができますよね。

    2 相談前の準備



    「グレーゾーン解消制度」は、事業を所管する省庁に事前相談をすることから始まります。
    みなさんは、相談日までの間に、どのようなことを準備したらいいと思いますか。

    まったく準備をせずに、相談に行ったとして、相談は効率的に進むでしょうか。
    相談を効率的に進めるためにも、以下の点をすぐに説明できるように準備しておきましょう。
    1. これから始める事業内容
    2. 事業に適用があるのではないかと考えている法律規制
    3. 2に対する自分の考え
    それぞれについて、簡単に見ていきましょう。

    (1)これから始める事業内容

    具体的にどのような事業なのか、その内容をできるだけ細かく正確に説明できるようにしておきます。

    (2)事業に適用があるのではないかと考えている法律規制

    自分なりの方法(ネットや本など)で、事業に対して適用を受ける可能性があると思う法律の規制をまとめておきます。

    (3)自分なりにまとめた法律規制について、自分の考えをまとめておきます。

    これらのことを事前に準備することで、自分の頭を整理することができますし、相談日当日には、質問されたことに対し、スムーズに受け答えができますので、相談時間を有効に使うことができますよね。

    それでは、「グレーゾーン解消制度」について具体的に見ていきましょう。

    3 グレーゾーン解消制度とは



    企業がこれから新規事業を始めようとしたものの、その事業が何らかの法律の規制を受けるんじゃないか、と思いながら事業を始めるのは大変不安ですよね。

    このような場合に、安心して事業を始めることができるように事前に法律の規制を所管する省庁の大臣に対し、法律規制の適用があるかどうかを確認できる制度が「グレーゾーン解消制度」です。

    法律規制の適用があるかどうかがわからない(グレー)場合に、それを確認することで(シロクロはっきりさせる)グレーな状態を解消する制度であることから、「グレーゾーン解消制度」と呼ばれています。

    例えば、カーシェアリング事業を始めようとしている事業者が、「どうも〇〇法の規制を受ける可能性があるようだ。このまま事業を始めて、規制に引っ掛かったら、事業自体ボツになりかねないな。事業を始める前に、〇〇法の規制を所管する〇〇庁の大臣に、確認しておこう。」というイメージです。

    できることなら、不安な状態を解消して、事業を始めたいと思うのは誰でも同じですよね。

    4 グレーゾーン解消制度はなぜ必要なのか?



    そもそも、グレーゾーン解消制度が必要になったのは、なぜでしょうか。

    「弁護士に相談してもハッキリしない以上、そういうことを確認してくれる制度が必要だろ。そうじゃないと安心して事業を始められないよ。」と思った方は、大筋で合っています。

    事業者は、新しい事業を始める際に、どのような事業を展開していくか、その計画などを練ったりしますよね。ただ、その計画が本当に法律に違反していないのかについて、自信をもって判断することは簡単ではありません。結局のところ、法律に違反しているのかどうかわからない場合、みなさんはどうしますか。

    計画の実行に消極的になる方もいれば、計画そのものを中止する方もいると思います。

    他方で、一定のリスクを負って計画を実行する方もいるかもしれません。

    ですが、一定のリスクを負うといいながらも、実際に法律の規制に違反すると判断された場合のことを考えると、なかなか思い切れるものではありません。

    このような壁にぶち当たった場合、もちろん、弁護士に相談して解決することもありますが、弁護士でも判断が難しい場合があることは、既に説明したとおりです。

    そこで、弁護士などの専門家に確認する方法とは別に、事業者に対して事業を始めてもらうための制度が必要になってくるわけです。そこで作られたのが「グレーゾーン解消制度」なのです。

    事業を始める前に、政府から「その事業は法律の規制を受けませんよ」とお墨付きをもらえれば、安心して事業を始めることができますし、仮に、法律の規制を受けるということを確認できれば、それについての対応を考えることができます。

    以上のように、「グレーゾーン解消制度」は、専門家が判断できない場合にも、事業者が安心して事業を始められるようにするために必要な制度なのです。

    5 ノーアクションレターとの違い



    グレーゾーン解消制度がどのような制度なのか、また、なぜ必要なのか、ということを説明してきましたが、実は、グレーゾーン解消制度が導入される以前から、グレーゾーン解消制度に似た制度が既に存在していたのをご存知でしょうか。

    これが「ノーアクションレター制度(法令適用事前確認手続)」という制度です。

    「ノーアクションレター制度」とは、企業や国民が、その事業に関連して行われた行為が何らかの法律の規制の適用を受けるかどうかを、事前にその法律規制を所管する行政機関に確認し、回答を受ける制度です。

    「グレーゾーン解消制度」と一緒では、と思った方もいらっしゃると思います。

    たしかに、両制度には共通点もありますが、見落としてはならない大きな違いがあります。具体的に見ていきましょう。
      【共通点】
    • 法律規制の適用があるかどうかを確認する
      【違う点】
    • 確認する対象
    • 確認するまでの手続
    法律規制の適用があるかどうかについて確認をするという点は、いずれの制度にも共通しています。

    ですが、「ノーアクションレター制度」は、確認の対象となる法律の範囲があらかじめ決められていますので、その範囲でしか確認をすることができません。
    他方で、「グレーゾーン解消制度」は、確認の対象となる法律の範囲に制限はありませんので、あらゆる法律を対象として確認することができます。

    また、「ノーアクションレター制度」は、確認を希望する事業者などが直接その所管省庁に対して確認する必要があります。
    他方で、「グレーゾーン解消制度」は、事業者の事業を所管する省庁を通じて、法律規制を所管する省庁の大臣に確認することができます。つまりは、事業を所管する省庁が事業者の代わりに確認をしてくれるというわけです。

    例えば、事業を始めようとした場合に、その事業が〇〇法と▲▲法の規制に引っ掛かる可能性がある(ノーアクションレター制度が確認の対象としている法律に▲▲法は含まれていませんでした)ということをネットで知ったとしましょう。

    あなたは、「ノーアクションレター制度」と「グレーゾーン解消制度」のどちらの制度を使って確認をしますか。もうおわかりですよね。

    「ノーアクションレター制度」を選択すると、〇〇法の規制の適用は受けないということを確認できたとしても、▲▲法の規制の適用を受けるかどうかは、宙ぶらりんのままです。また、法律のことについてあまり詳しくない人にとっては、「グレーゾーン解消制度」を利用して、事業を所管する省庁が自分の代わりに確認をしてくれた方が助かりますし、安心です。

    このように、「ノーアクションレター制度」と「グレーゾーン解消制度」は非常に似た制度ではありますが、大きな違いがあることをおわかり頂けましたでしょうか。

    ※なお、「ノーアクションレター制度」について、詳しく知りたい方は、消費者庁が出している「法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)」をご覧ください。

    6 グレーゾーン解消制度利用のメリット



    これまで説明してきたことをご覧になった方は、グレーゾーン解消制度ってありがたい制度だなぁと思ったのではないでしょうか。

    改めて、グレーゾーン解消制度を利用するメリットはいったいどこにあるのでしょうか。
    メリットは大きく分けて、次の5点です。
    1. 確認の対象となっている法律に制限がない
    2. 回答を比較的早くもらえる
    3. 事業を所管する大臣を経由して確認することができる
    4. 事業を所管する大臣から必要なアドバイスを受けることができる
    5. ビジネスの幅が広がる
    それぞれのメリットについて、簡単に見ていきましょう。

    (1)メリット①:確認の対象となっている法律に制限がない

    確認の対象となっている法律に制限がありませんので、あらゆる法律について確認することができます。

    (2)メリット②:回答を比較的早くもらえる

    回答は、原則として1ヶ月以内に通知されますので、事業を早く始めたいと考えている方にとっては、助かりますよね。

    もっとも、1ヶ月以内に回答が通知されない場合もありますが、その場合は、1ヶ月以内に回答ができない理由が通知されることになっています。

    (3)メリット③:事業を所管する大臣を経由して確認することができる

    事業を所管する省庁の大臣を経由して、法律規制を所管する省庁の大臣に対して、法律規制の適用を受けるかどうかを確認することができます。法律に詳しくない方や、そもそも省庁に確認をすること自体ビビッてしまう、なんていう方も少なくないと思いますので、自分で直接確認しなくて済むというのは、ありがたいですね。

    なお、事業を所管する省庁が一つでない場合は、どの省庁に対して問合せをしてもいいということになっています。

    (4)メリット④:事業を所管する大臣から必要なアドバイスを受けることができる

    事業計画にどのような問題があるかなどについて、事業を所管する省庁に相談しながら進めることができます。また、場合によっては、法律の規制に引っ掛からないようにするための対応などについても、アドバイスしてくれます。

    特に、法律に詳しくない方は、色々と相談しながら、進めることができるわけですから、安心です。

    (5)メリット⑤:ビジネスの幅が広がる

    グレーゾーンとされている事業について、自らがいちはやく、そのグレーゾーンを解消できたとしたら、自らがそのグレーゾーンを解消しなかった事業者よりも、積極的に事業を展開していくことができますよね。そのような意味で、ビジネスの幅が広がっていく可能性が高まるということがいえます。

    以上のように、「グレーゾーン解消制度」の利用には、さまざまなメリットがあることがわかったと思います。

    さらに、「グレーゾーン解消制度」には、法律規制の適用を受けると判断された場合に利用できる「企業実証特例制度」という制度もありますが、この制度については、後で詳しく説明します。

    7 グレーゾーン解消制度の活用事例



    「グレーゾーン解消制度」が実際に利用されたケースを具体的に知りたい、という方もいらっしゃると思いますので、ここで事例をいくつか紹介したいと思います。
      【事例①】
      簡易宿所営業(ペンションやユースホステル)の営業許可を受けた宿泊施設が、サイトで不特定多数の人に広く宿泊募集をかけた結果、家族などの1グループに貸切りで宿泊させる場合、旅館業法2条4項に規定する「宿泊する場所を多数人で共有する構造及び設備を主とする施設」の要件は満たされると考えて差し支えないか」と照会があった事例
    簡易宿所営業で使う宿泊施設は、旅館業法2条4項に規定されている要件を満たしていなければなりません。家族などの1グループに貸切りで宿泊させる場合に、この要件を満たすのかどうかがわからないと考えた営業者がその確認を求めたという事例です。

    これに対し、関係省庁は、「要件は満たされている」と回答しました。
      【事例②】
      「自動車で中長距離を移動するドライバー」と、「同区間の移動を希望する人 (ユーザー)」をマッチングし、ガソリン代と道路通行料に相当するお金での相乗りを実現す るサービス提供を検討している事業者から、その事業において、「費用を事前に受け取ってユーザーを相乗りさせるドライバーの行為が、道路運送法2条3項に規定する「旅客自動車運送事業」に当たるかどうか」と照会があった事例
    その事業が、道路運送法2条3項に規定されている「旅客自動車運送事業」に当たる場合は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。その事業におけるドライバーの行為が「旅客自動車運送事業」に当たるかどうかがわからない事業者がその確認を求めたという事例です。

    これに対し、関係省庁は、「旅客自動車運送事業には当たらない」と回答しました。
      【事例③】
      エステやまつ毛エクステンションなどのヘアーカット技術以外の美容技術に関する実践型のスクールの開講を予定している事業者より、①まつ毛エクステンションが美容師法2条に規定された「美容」に該当するか、また、②スクール修了生が、同社の施設内でスクール修了後1ヶ月程度まつ毛エクステンション施術の一部を行うことが、美容師以外に美容を業とすることを禁止する美容師法6条に違反するかどうかについて照会があった事例
    美容師法2条1項の規定で、「美容」とは、「パーマネントウエーブ、結髪、化粧などの方法により、容姿を美しくすることをいう」とされており、通常首から上の容姿を美しくすることとされています。そして、「美容」を業とする場合は、厚生労働大臣の免許を受けなければなりません。そこで、開講予定のスクールで教える美容技術が「美容」に当たるのかどうかがわからない事業者がその確認を求めたというのが①です。

    また、スクール修了生が、修了後1ヶ月程度美容にあたる施術の一部を行うことが、美容師以外に美容を業とすることを禁止する美容師法6条に違反するかどうかがわからない事業者がその確認を求めたというのが②です。

    関係省庁は、①について「美容」に該当すると回答し、②について「美容師法6条に違反する」と回答しました。
      【事例④】
      事業者より、外国人旅行者が、自社クラウドシステムに事前に旅券の ICチップのデータと指紋を登録することで、登録以後、ホテルなどで指紋をかざすだけで、登録された旅券情報を呼び出すことができる指紋認証システムによる「旅券の呈示」の扱いについて照会があった事例
    旅館業法に基づく厚生労働省健康局長通知では、外国人旅行者が宿泊する時は、旅券の呈示を受けることにくわえ、旅券の写し(コピー)を宿泊者名簿と一緒に保存しなければならないとされています。

    以上のように、それまでは、旅券そのものの呈示とその写しの保存を想定していたため、旅券のICチップなどの「データ」は想定されていませんでした。そこで、事業者がデータでの扱いが可能かどうかがわからないため、その確認を求めました。

    関係省庁は、結論として、指紋認証システムにより呈示される旅券のICチップのデータと宿泊者名簿をセットにして保存することが「旅券の写しの保存」にあたるとして、また、ホテルにチェックインする際に、指紋認証システムによって旅券のデータを確認することが「旅券の呈示」にあたると回答しました。

    事例①~③とは違って、この事例のように、それまでは想定されていなかった扱いなどについて、シロクロはっきりさせるという意味で、グレーゾーン解消制度は事業者にとって大変ありがたい制度になっているということがいえます。
      【事例⑤】
      フィットネスクラブの経営者から、医師の指導やアドバイスを受けたフィットネスクラブの職員が、その会員に対して生活習慣病の予防のための運動を指導することが、医師のみに許されている「医行為」にあたるかどうかの照会があった事例
    「医行為」とは、医師の医学的な判断や技術によって行わないと、人に危害を与えたり、危害を与える可能性のある行為のことで、医師以外の人はできません。

    この事例では、フィットネスクラブの経営者から、フィットネスクラブで生活習慣病の予防のための運動を指導することが、「医行為」にあたるかどうかの確認を求めたという事例です。

    関係省庁は、この事例における生活習慣病の予防のための運動は、医師の医学的判断や技術を伴わないとして、「医行為」に当たらないと回答しました。

    以上のとおり、5つの事例を見てきましたが、どのようなケースでグレーゾーン解消制度が利用されているか、おわかり頂けましたでしょうか。

    すべての事例において共通していえることは、その事業が法律の規制の適用を受けるかどうかについて、問題となっている法律の規定から簡単に判断できないということです。

    また、5つの事例は、確認の対象となっている法律がすべて違います。
    これは、「グレーゾーン解消制度」があらゆる法律を確認の対象としているからです。

    事例①②⑤のように、法律規制の適用を受けないとされるケースもあれば、事例③のように法律規制の適用を受けるとされるケースもあります。
    また、事例④のように、それまでは想定されていなかったことについて、シロクロつけてくれるというケースもあります。

    いずれにしても、法律規制の適用を受けるかどうかについての判断が難しい場合は、グレーゾーン解消制度を利用することで、その回答に応じて、柔軟な対応ができるようになります。

    8 グレーゾーン解消制度の利用方法



    次に、グレーゾーン解消制度の具体的な利用方法について、見ていきましょう。

    グレーゾーン解消制度は、どのような流れで進んでいくのでしょうか。

    (1)手続きの流れ

    「グレーゾーン解消制度」の手続きは、以下の流れに沿って進められます。
    1. 事前相談
    2. 新規事業について、法律規制の適用があるかどうかの確認を求める
    3. 事業者から受けた確認事項の照会
    4. 確認事項に対する回答の作成
    5. 事業者に対し回答の通知がなされる

    例えば、事業を始めようと考えている甲さんがその事業について〇〇法の規制の適用があるかどうかについて確認するために、グレーゾーン解消制度を利用したとしましょう。事業を所管するのはA庁、〇〇法の規制を所管するのは、B庁とします。

    甲さんは、自分が練った事業計画と確認したい事項(〇〇法の規制の適用を受けるかどうか)をまとめて、A庁に①事前相談を行います。A庁は、その事業に②〇〇法の規制の適用があるかどうかを確認し、必要に応じて、アドバイスをしたりします。そのうえで、A庁は、③その確認事項(〇〇法の規制の適用を受けるかどうか)をB庁に対して照会します。B庁は、確認事項に対する④回答を作成し、⑤その回答は、A庁を経由して甲さんに通知されます。

    以上が、手続きの大まかな流れです。

    (2)照会書の記載事項

    事業者は、「グレーゾーン解消制度」を利用する場合は、事業を所管する省庁を経由して法律規制を所管する省庁に提出する「照会書」を作成しなければなりません。

    事業者は、作成する照会書に以下のことを記載しなければなりません。
      1.新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標
      (1)事業目標の要約
      (2)生産性の向上又は新たな需要の獲得の見込み
      2.新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容
      (1)事業概要
      (2)事業実施主体
      (3)新事業計画を実施する場所
      (4)その他
      3.新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期
      4.解釈及び適用の有無の確認を求める法令等の条項
      5.具体的な確認事項
      6.その他
    色々と細かく書かなければなりません。

    ですが、関係省庁からすれば、事業者が始めようとする事業をある程度細かく教えてくれないと、正確な判断ができませんよね。そのような意味からも、ある程度細かく事業内容を記載することが求められているのです。

    なお、5にある「具体的な確認事項」に関しては、さらに以下のことを記載する必要があります。
    • 規制の適用を受けるかどうかわからない法律の規定と、その規定のどの部分を確認したいのか。
    • 規定の適用を受けるかどうかの判断ができない理由と、それによって事業を行うことが難しいとされる理由
    • 2点に対する自分の考え
    確認したいポイントを、できるだけ具体的に絞って、そのポイントに対する自分の考えを記載していれば、法律の規制を所管する省庁も、検討しやすいですし、回答を受け取った事業者も回答の内容を理解しやすくなります。

    法律をよく知らないのに、自分の考えを書けっていわれても、わからないよ!という方もいらっしゃると思います。現に、照会書の作成について、弁護士などの専門家に依頼する方も少なくないようです。

    なお、経済産業省が出している「企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度」の、「グレーゾーン解消制度書類様式」に照会書の書式がありますので、詳しく見てみたいという方は、ご覧ください。

    9 グレーゾーン解消制度を利用する上での注意点



    グレーゾーン解消制度を利用することにさまざまなメリットがあることは既に説明したとおりですが、他方で以下のことに注意する必要があります。

    グレーゾーン解消制度は、その規制の適用があるかどうかについて、あらゆる法律を確認の対象としています。ですが、この手続きで確認されるのは、あくまで、照会のあった法律について規制の適用があるかどうかという点に限られます。

    つまり、グレーゾーン解消制度は、あらゆる法律を確認の対象にはしていますが、事業者から照会のあった法律とは別に「〇〇法も確認しておいた方がいいな。▲▲法も確認しておこう。」というように気を回してくれることはないということです。

    事業者が照会をした法律とは別に、その他の法律について規制適用の有無を確認したい場合は、別途、その法律を対象として照会する必要があります。

    事業がどのような法律によって規制を受ける可能性があるかという判断は簡単でないことも少なくありませんので、事業を所管する省庁からアドバイスを受けたり、弁護士などの専門家に相談するなどして、照会する法律を正確に特定することが重要です。

    10 企業実証特例制度の活用(規制の適用がある場合)



    ここで、少し前に触れた「企業実証特例制度」について詳しく解説します。

    「企業実証特例制度」が、法律規制の適用を受けると判断された場合に利用できる制度であることは既に説明しました。

    例えば、ある事業が〇〇法の規制を受けると判断されたとしましょう。
    規制の適用を受けるのは「その事業が〇〇法が必要としている安全性を満たしていない」という理由からでした。

    あなたがその事業を始めようとする事業者だったら、どうしますか。事業を諦める方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。もし、何らかの方法でこの安全性を満たすようにできるのであれば、それでも、事業を諦めますか。

    このように「企業実証特例制度」は、事業者が法律の規制を受けない状態に改善・変更するための措置をとることを条件に、事業を行うことを許す制度なのです。

    法律規制の適用を受けると判断された事業であっても、「企業実証特例制度」を利用することにより、その事業者は例外的にその事業を行うことができるのです。

    11 企業実証特例制度の利用方法



    具体的に「企業実証特例制度」の利用方法について、見ていきましょう。

    「企業実証特例制度」は、以下の二段構えの構造になっており、第一段階で規制の特例措置を求めて、規制の特例措置を創設してもらい、第二段階で新事業活動計画を認定してもらうという構造です。
    1. 規制の特例措置の求め
    2. 新事業活動計画の認定

    (1)規制の特例措置の求め

    まずは、第一段階である「規制の特例措置の創設」について、創設されるまでの流れをつかんでおきましょう。
    1. 事前相談
    2. 規制の特例措置の求め
    3. 規制の特例措置の創設
    それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

    ①事前相談

    「企業実証特例制度」を利用する場合に、①事前相談から始まるのは、グレーゾーン解消制度を利用する場合と同じです。

    ②規制の特例措置の求め

    そのうえで、事業を所管する大臣に対し、②規制の特例措置を求めなければなりません。事業者が「私に特例を認めて!」というお願いをするわけです。

    ここで確認ですが、「企業実証特例制度」は、事業者が法律の規制を受けない状態に改善・変更するための措置をとることを条件としていました。

    ですので、事業者は規制の特例措置を求める際に、新事業活動の計画とは別に、要望する規制の特例措置(法律規制の適用を受けると判断されたことに対して、特例を認めて!とお願いすること)や法律の規制を受けない状態に改善・変更するための措置の具体的な内容を記載した「新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」という書類を作って、事業を所管する省庁に提出しなければなりません。

    つまり、この書類の中で「私は〇〇の方法で、このように改善・変更します」というように、改善・変更のためにとる措置の内容を具体的に記載するわけです。

    「新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」に記載しなければならないことは、細かく決められていますので、確認しておきましょう。
      1.新事業活動の目標
      (1)事業目標の要約
      (2)生産性の向上又は新たな需要の獲得の見込み
      2.新事業活動の内容
      (1)事業概要
      (2)事業実施主体
      (3)新事業活動を実施する場所
      (4)その他
      3.新事業活動の実施時期
      4.新事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。)の条項
      5.新事業活動を実施するために整備が必要となる新たな規制の特例措置の内容
      (1)規制の特例措置の具体的内容
      (2)提案理由
      (3)規制の特例措置を活用するに当たって実施する安全性等を確保する措置内容
      6.新事業活動の実施に必要な資金の額及びその調達方法
    グレーゾーン解消制度のところで説明した照会書よりも、さらに細かく書かなければなりません。

    ですが、いったん、法律規制の適用を受けると判断された事業について、特例を認めてもらうための書類ですので、その判断もよりいっそう複雑になる以上、さらに色々な情報が必要になるのは仕方ありません。

    それでは、規制の特例措置を求める場合に、一緒に提出しなければならない書類をここでまとめておきましょう。
    • 新事業活動の計画
    • 「新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」

    ③規制の特例措置の創設

    このようにして、規制の特例措置の求めを受け取った事業を所管する大臣は、必要があると考えた時は、問題となっている法律規制を所管する大臣に対し、規制の特例を認めてくれ、と要請します。

    これに対し、法律規制を所管する大臣は、特例を認めるかどうかを決めて、その結果を事業を所管する大臣を経由して、事業者に対し、通知します。

    仮に、特例を認めると決めた場合に、③規制の特例措置が創設されるということになるのです。

    なお、②規制の特例措置の求めが受理されてから、事業者に対し、その結果が通知されるまでは、概ね1ヶ月ほどかかるものとされていますが、場合によっては、1ヶ月を超える場合もあり、1ヶ月を超える場合は、通知がなぜ遅れたのか、その理由が通知されることになっています。

    ※なお、「新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」の記載事項(利用の手引き参照)やその書式(企業実証特例制度書類様式参照)を詳しく知りたい方は、経済産業省が出している「新事業特例制度・グレーゾーン解消制度」の「両制度の手引きや申請書式等はこちら」をご覧ください。

    (2)新事業活動計画の認定

    規制の特例措置が創設されただけでは、事業者は、まだ新しい事業を始めることはできません。なぜなら、この時点では、事業者が提案した規制の特例措置が作られただけで、事業者が新しい事業を実際に始めるには、さらに、規制の特例措置を適用した新事業活動計画を認めてもらわなければならないからです。

    そこで、事業者は、実際に新しい事業を始めるために、新事業活動計画の認定を申請することになります。

    こちらも同様に、まずは、新事業活動が実施されるまでの流れをつかんでおきましょう。
    1. 事前相談
    2. ↓
    3. 新事業活動計画認定申請
    4. ↓
    5. 新事業活動計画認定
    6. ↓
    7. 新事業活動の実施
    詳しく見ていきましょう。

    ①事前相談

    規制の特例措置が創設されると、次にやるべきことは、作られた(創設された)ものを実際に使って(活用して)新事業を始められるようにすることです。そのために必要な新事業活動計画の認定申請についても、まずは、①事前相談から始まります。

    ②新事業活動計画認定申請

    創設された規制の特例措置を活用するには、事業者は、新事業活動の内容や適用してもらう規制の特例措置などを記載した「新事業活動計画の認定申請書」を作って、事業を所管する省庁に提出しなければなりません。

    「新事業活動計画認定申請」にあたっては、「新事業活動計画の認定申請書(正本・写し各1通)」とは別に、以下の書類を提出する必要があります。
      【法人の場合】
    • 定款のコピー、会社謄本
    • 直近の事業報告、売上台帳、貸借対照表と損益計算書(いずれもコピー)
    • 事業を所管する大臣が求める必要な書類
      【個人の場合】
    • 住民票の謄本または抄本
    • 資産、負債、所得などの状況を明らかにすることができる書類
    • 事業を所管する大臣が求める必要な書類
    なお、新事業活動計画の認定申請書の作成に当たっては、以下のことを記載しなければなりません。
      1.新事業活動の目標
      (1)事業目標の要約
      (2)生産性の向上又は新たな需要の獲得の見込み
      2.新事業活動の内容
      (1)事業概要
      (2)事業実施主体
      (3)新事業活動を実施する場所
      3.新事業活動の実施時期
      4.新事業活動の実施に必要な資金の額及びその調達方法
      (1)必要な資金の額
      (2)必要な人員体制とその見通し
      5.規制の特例措置の適用を受けて新事業活動を実施する場合には、当該規制の特例措置の内容
      (1)規制の特例措置の具体的内容
      (2)規制の特例措置を活用するに当たって実施する安全性等を確保する措置の内容
      6.その他
    既に説明した「新たな規制の特例措置の整備に係る要望書」 と記載事項が大部分において共通しています。ですが、「新事業活動認定申請」は、新事業を始めるために、その計画を認めてもらうためのものなので、5のような内容を記載することが求められています。

    ③新事業活動計画認定

    「新事業活動計画」は、事業を所管する省庁が検討のうえ問題がないと判断した場合は、法律規制を所管する省庁に対して同意を求めます。同意を求められた省庁は、「新事業活動計画」の内容について、きちんと法律の規制を受けないような措置をとっているということなどを確認して、新事業活動計画を認定することについて、同意をします。

    「新事業活動計画」の申請の結果は、法律規制を所管する省庁の同意を経て、事業を所管する省庁から、事業者に通知されます。

    ④新事業活動の実施

    新事業活動計画が認定された場合には、新事業活動を実際に始めることができます。

    また、第一段階である規制の特例措置の求めを行っていない事業者も、新事業活動計画の認定を受けることで、他の事業者が提案して創設された規制の特例措置を活用することができます。

    ※「新事業活動計画の認定申請書」の記載事項(利用の手引き参照)やその書式(新事業活動計画書類様式参照)を詳しく知りたい方は、経済産業省が出している「新事業特例制度・グレーゾーン解消制度」の「両制度の手引きや申請書式等はこちら」をご覧ください。

    12 小括



    「グレーゾーン解消制度」は、事業者にとって、大変ありがたい制度ですが、思っているほど簡単な手続きではありません。

    手続きの流れをきちんと理解し、申請書などの記載事項や提出書類に注意するとともに、手続き上のメリットや注意点にも目を配り、適切に利用するようにしましょう。

    13 まとめ

    これまでの解説をまとめると以下のとおりです。
    • 「グレーゾーン解消制度」は、事業に法律の規制が適用されるかどうかを国に対して確認できる制度である
    • 事業者に安心して事業を始めてもらうために「グレーゾーン解消制度」は必要な制度である
    • 「グレーゾーン解消制度」に似た制度として「ノーアクションレター制度」がある
    • 「グレーゾーン解消制度」の利用のメリットは、①あらゆる法律が確認対象である、②回答が早い、③事業を所管する大臣を経由して確認できる、④事業を所管する大臣から必要なアドバイスを受けられる、⑤ビジネスの幅が広がる、の5つがある
    • 「グレーゾーン解消制度」は、①事前相談、②新規事業について、法律規制の適用があるかどうかの確認を求める、③事業者から受けた確認事項の照会、④確認事項に対する回答作成、⑤事業者に対し回答の通知、という順で進められる
    • 「グレーゾーン解消制度」は、照会のあった法律について規制の適用があるかどうかを確認できるだけである
    • 「企業実証特例制度」は、法律規制の適用を受けると判断された場合に利用できる制度である
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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