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スタートアップ

共同開発契約を締結する際にポイントとなる6つの事項を弁護士が解説

2020.11.202025.11.27
共同開発
この記事の目次
    はじめに 新しいサービスや製品に用いる技術などを開発する場合、自社の人的リソースや経験・知識、または、資金が不足しているなどの問題に直面することがあります。 このような場合に、他社と連携して開発を進めていくことを「共同開発」といいます。 共同開発では、お互いの不足している部分を相互に埋め合うなどして、開発を進めることができるというメリットがあります。 共同開発を実施する際には、共同開発契約を締結することが一般的ですが、どのようなことを契約で定めておく必要があるのでしょうか? 後のトラブルを招かないためにも、大切なことです。 そこで今回は、共同開発について、契約で定めておくべき事項などにも触れながら、弁護士が詳しく解説します。

    1 共同開発とは

    共同開発 「共同開発」とは、複数の企業や研究機関、大学などが、お互いに協力し合って、新技術や新製品などを開発することをいいます。 共同開発を行う際には、当事者間において共同開発契約を締結することが一般的です。 共同開発契約では、当事者がそれぞれに果たすべき役割を決めて、その役割を果たすために自社のリソースを使うことに合意します。 たとえば、資金力のある企業が自社の役割の一つとして開発にかかる資金を拠出し、ベンチャー企業などが自社の役割の一つとして開発や研究を行います。 共同開発の多くは、企業同士、または、大学や研究機関と企業といった組み合わせで実施されます。 共同開発には、以下のようなメリットがあります。
    1. 研究開発スピードの向上
    2. 研究開発コストの分担
    3. 知名度の向上

    (1)研究開発スピードの向上

    共同開発では、一方にとって、経験や知識、ノウハウが不足している分野であっても、他方にとって得意な分野であれば、その不足分を補填することができます。 そのため、自社のみで開発する場合に比べ、スピード感のある研究開発を実現することが可能です。 それだけでなく、研究開発分野にまったくといっていいほど、知識や経験がない場合であっても、その分野に得意な企業と共同開発することにより、未知の分野に挑戦することも可能になります。

    (2)研究開発コストの分担

    研究開発は実際にやってみなければ、どのような成果が得られるか分かりません。 そのため、研究開発費に多くのコストをかけたものの、成果を得ることなく失敗に終わることも十分にあり得ます。 自社のみで研究開発を実施する場合には、当然ながら、費用やリスクはすべて自社負担となります。 ですが、これを共同開発という形で実施する場合には、費用やリスクを分担することができ、このことが大きなインセンティブともなります。

    (3)知名度の向上

    スタートアップなど知名度の低い企業が、上場会社と共同開発を行うような場合、自社だけでなく上場会社のプレスリリースに自社名が掲載されることになるため、知名度が上がることが期待できます。 それだけでなく、サービスや製品などに対等な形でロゴマークなどが掲載されることも考えられます。 このように、スタートアップなど知名度がまだ低い企業は、知名度のある会社と共同開発することにより、知名度が一気に上昇する可能性があります。 以上のように、共同開発には大きなメリットがあるため、企業や研究機関などにとっては、大変魅力的なものといえます。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 共同開発契約を締結する際のポイント

    ポイント 共同開発契約を締結する際のポイントは、主に、以下の6点です。
    1. 共同開発対象の特定
    2. 役割分担と費用負担の明確化
    3. 共同開発の成果物は誰のものになるのか
    4. 成果物の利用に関する合意
    5. 禁止事項
    6. 契約期間

    3 共同開発対象の特定

    特定 共同開発を行う場合、何を開発するのか、開発することによって何を生み出そうとしているのか、などについて、当事者間の認識に齟齬があってはなりません。 仮に、さまざまな点で当事者間の認識に齟齬があると、認識に食い違いが生じたまま、研究開発が進む可能性があることはもちろんのこと、開発の結果生み出された成果物についても、「こんなはずではなかった」などと、トラブルの元にもなりかねません。 これでは、共同開発を行った意味がなくなります。 このような事態を避けるためにも、共同開発契約書において、開発の対象となる技術分野や技術内容、開発による成果物などを、可能なかぎり特定しておくことが必要になってきます。 もっとも、どの程度特定すべきかは、個別具体的な事情によって異なります。 たとえば、基礎的な研究開発を行う場合は、できるだけ広くカバーできるように、包括的な契約内容になることが多いといえます。 一方で、具体的な成果物を想定した研究開発を行う場合には、数値や条件の詳細などを定めることもあります。 ここでポイントの一つとなることは、開発の対象は、あくまで共同開発の実態に沿って定めるべきであって、不当に広く(狭く)定めることは避けるべきであるということです。

    4 役割分担と費用負担の明確化

    分担 円滑に開発を進めていくためには、開発におけるそれぞれの役割をハッキリさせておくことに加え、費用負担を具体的に決めておくことが必要です。

    (1)役割分担

    それぞれの得意分野を活かす形で研究開発を行う場合には、自ずと得意分野に応じて役割分担が決まってくることが多いといえるため、特に難しい問題はありません。 問題は、当事者双方において未知の分野であったり、それぞれの知見やノウハウを持ち寄ることが前提となっていて役割を分担することが想定されていないような場合などです。このように、即座に役割分担をすることが困難なケースもあります。 とはいえ、何も決めずに開発を始めてしまうと、トラブルの元になります。 このような場合に採られる方法の一つとして、連絡協議会を設置することが挙げられます。 それぞれの責任者や技術者などを構成員とすることにより、連絡協議会の中で、共同開発の進行方法や役割分担を検討することが可能になります。 連絡協議会を設置することで、状況に応じたフレキシブルな対応をとることができるため、実務上有益だと考えられます。

    (2)費用負担

    研究開発には、多額のコストがかかるため、費用を分担できれば、当事者にとっては大きなメリットとなります。 具体的にどのように費用を分担するかは、当事者における資金力の差や役割分担の程度によっても左右されます。 たとえば、資金力や役割分担、開発に投入する人員などが、当事者間において同等といえるような場合には、各自に発生した費用を各自に負担させても、不合理ではないといえます。 一方で、スタートアップ企業などが共同開発に取り組む場合は、開発にかかる費用を分担することを前提としていることが多いといえます。対等に費用を分担するとなると、スタートアップにとっては、あまりに大きな負担となります。 そのため、スタートアップにとって、どのように費用を分担するかという点は、重要性が高いということがいえます。 たとえば、他方当事者に費用を負担してもらう代わりに、スタートアップが、実際の開発を行うといったことが考えられます。 また、費用分担は、共同開発への寄与度を図る要素ともなるため、多くの費用を負担した当事者が、研究開発の成果物を取得することになることが多いといえます。 まして、費用のほとんどを一方が負担しているような場合は、その実態は、開発を委託していることとさほど違いがないことになります。 このような場合、費用を負担した当事者が研究開発の成果物を取得すると考えるのがもっとも自然でしょう。

    5 共同開発の成果物は誰のものになるのか

    誰のもの 共同開発を行うと、契約の目的の一つでもある成果物が最終的に生み出されることになります。 そこで問題となるのが、この成果物が誰のものになるのか、という点です。 また、共同開発において、成果物といえるのは、最終的に生み出される成果物に限られているのでしょうか。

    (1)共同開発における成果物とは

    共同開発によって生み出される成果物は、最終的に生み出される成果物だけでなく、開発の過程で発生した実験データやノウハウ、サンプルなども成果物にあたる可能性があります。 成果物をスムーズに利用できるようにするためには、何をもって成果物とするかを契約で定めておくことが理想的です。 とはいえ、これらの成果物は、開発の過程で生み出されることになるため、未知の領域でもあります。 そのため、あらかじめ契約で定めておくことが困難なケースもあります。 このような場合には、たとえば、成果を特定・確認する手続きを契約で設けておくことも方法の一つです。 また、成果物としてノウハウや発明が生じた場合には、相手方にその内容を通知することを義務付ける条項を設けることも方法の一つとして考えられます。 このように、成果物を特定することは、後に第三者にライセンスすることを予定しているような場合には、いっそう重要なことになります。

    (2)成果物は誰のものとするか

    共同開発により生み出される成果物を誰のものとするか、という点については、以下の2つのパターンが考えられます。

    ①共有するパターン

    共同開発に係る費用分担や役割分担が同等であるような場合は、当事者間で成果物を共有するという扱いにするのがもっとも自然だと考えられます。 この場合、当事者は自由に成果物を利用することができますが、共有である分、一定の制約を受けることになります。 たとえば、成果物を第三者に使用させる場合や、共有持分を第三者に譲渡する場合には、他方の承諾を受けることが必要になってきます。

    ②どちらか一方のものとするパターン

    成果物をどちらか一方のものとする場合は、さらに、以下の2つのパターンに分類することができます。
      1. ⅰ)負担などに対応させる場合
     
      ⅱ)発明者となる従業員に対応させる場合

    ⅰ)負担などに対応させる場合

    負担などに応じて、成果物をどちらか一方のものとする場合、たとえば、以下のような基準によることが考えられます。
    • 役割分担
    • 費用負担
    • 寄与度
    • 成果物の利用
    このように、役割や費用を多く負担した側が成果物の権利を得ることとしたり、成果物への寄与度、成果物を利用する予定の有無などを基に、成果物の権利者を決めることもあります。

    ⅱ)発明者となる従業員に対応させる場合

    成果物が発明である場合には、当事者のいずれの従業員が発明したかによって、成果物の権利者を決めることもあります。 この考え方によれば、仮に、当事者双方の従業員が共同発明者であれば、成果物は共有扱いということになります。 以上のように、成果物の権利をどちらか一方のものとする場合であっても、権利を取得しなかった側が成果物を一切利用できなくなるというわけではありません。 たとえば、ラインセンス契約を交わすなどして、双方が合理的に成果物を利用できるように調整することも可能です。

    6 成果物の利用に関する合意

    合意 共同開発は、開発によって生み出された成果物の利用を主たる目的として、実施されることが多いといえます。 そこで、共同開発契約では、この成果物の利用方法についてもきちんと取り決めておくことが必要になってきます。 成果物の利用態様としては、主に、以下の2つが想定されます。
    1. 共同開発を行った当事者による利用
    2. 第三者による利用

    (1)共同開発を行った当事者による利用

    共同開発は、当事者となる双方がWin-Winの関係になければ、恩恵を受けられない当事者が不満を持ち、モチベーションも下がるため、うまくいかないことが多いといえます。 そのためにも、成果物が誰のものになるのか、ということに加え、利用方法に関しても取り決めておくことが必要になってきます。 当初から、共同開発を行った当事者双方が利用することが予定されている場合には、さほど細かい取り決めをしないことも多いですが、たとえば、両者間に資金力や販路に差があるような場合、一方が圧倒的に有利となることも想定されます。 このような観点からも、共同開発契約において、成果物の利用方法に関する合意をしておくことは有益だと考えられます。 なお、具体的な利用方法は、双方の利用目的や利用頻度なども考慮のうえ、お互いの協議により決めることが大切です。

    (2)第三者による利用

    「第三者」とは、共同開発を実施した当事者以外の者をいいます。 成果物を第三者に利用させる場合、一般的には、成果物の権利者と第三者との間でライセンス契約を締結します。 ライセンス契約でポイントとなるのは、主に以下の3点です。
    1. 対象
    2. サブライセンスの可否
    3. ライセンス料

    ①対象

    ライセンスの対象となる成果物を、可能な限り特定しておくことが必要です。 たとえば、特許や商標といった知的財産権については、登録番号などを使って簡単に特定することができます。 ですが、開発にともなって生じたノウハウなどには、特許のような登録番号は存在しないため、特定するための工夫が必要です。

    ②サブライセンスの可否

    「サブライセンス」とは、ライセンス契約で使用許諾を得た者(ライセンシー)が、さらに第三者にライセンスすることをいいます。いわゆる、また貸しのようなものです。 サブライセンスを無条件に許してしまうと、使用許諾を与えた者(ライセンサー)にとって、想定していない第三者にサブライセンスされる可能性があります。 そのため、実務では、原則としてサブライセンスを禁止した上で、別途ライセンサーの許諾を受けた場合にかぎり、サブライセンスを可能とすることが多いといえます。

    ③ライセンス料

    「ライセンス料」とは、簡単にいうと、使用料のことです。 もっとも、成果物をライセンスすることで、ライセンシーにどの程度の利益が生じるかは未知でもあるため、より実態に即した算出方法を採用する必要があります。 たとえば、実務では、売上に一定の料率を乗ずることによって算出するランニング・ロイヤリティなどが多く使われています。 また、スタートアップがライセンシーとなる場合には、ライセンス料として、現金ではなく、新株予約権を付与することもあります。 このように、成果物の利用は、主に、共同開発の当事者が利用する場合と第三者に利用させる場合とに分けることができますが、第三者への利用を認めたくないというケースもあります。 その場合は、次の項目で見る「禁止事項」にその旨を定めることになります。

    7 禁止事項

    禁止 共同開発では、当事者がそれぞれにもっている知見やノウハウなどを持ち寄ることが想定されています。持ち寄られる知見やノウハウは、当事者にとって、大変価値のあるものが多いといえます。 そのため、共同開発契約では、一定の禁止事項を定めておくことが必要になってきます。 禁止事項として定めるかどうかが、よく検討されるのは、以下の3点です。
    1. ライセンス禁止
    2. 他の研究開発の禁止
    3. 再委託の禁止

    (1)ライセンス禁止

    第三者に成果物を利用させる場合、ライセンス契約を締結することが一般的であるということは、先に見たとおりです。 もっとも、当事者を除いて、他の第三者に成果物を利用させることを一切禁止する場合もあります。 また、「開発後2年間はライセンス不可」、「日本ではライセンス不可」、「研究目的に限ってはライセンス可」といったように、期間や地域、目的などを限定してライセンスする方法もあります。

    (2)他の研究開発の禁止

    複数の共同開発を同時に進行すると、研究成果が誰のものか、どの共同開発によってどの研究成果が生じたのか、などの区別が難しくなります。 加えて、人的資源が分散されるため、それぞれの開発に集中できないといった事態も想定されます。 そのため、共同開発契約では、他の研究開発を禁止することがあります。 もっとも、他の研究開発を禁止することは、すなわち、自由な研究開発を制限することを意味しますので、公正な競争を害する可能性があります。 禁止する研究開発の分野をあまりに広範囲としたり、禁止する期間をあまりに長い間に設定したりすると、独占禁止法に違反する可能性もあるため、注意が必要です。

    (3)再委託の禁止

    共同開発は、パートナーの開発力や技術力などを信頼して行われることが一般的であるため、研究開発の一部や全部をさらに外部に委託するといった再委託が禁止されることがあります。 もっとも、研究開発で必要となるすべての作業を、当事者のみで行うことが難しい場合もあります。 たとえば、専門性の高い臨床試験や消費者向けの製品の研究開発における市場調査などは、そもそもが第三者に委託することが予定されています。 このような場合には、再委託が予定されている部分についてのみ例外的に再委託を認め、それ以外の部分については、再委託を禁止するといった規定にすることも可能です。

    8 契約期間

    期間 共同開発契約は、共同開発の目的でもある成果物が得られた時点で、契約を終了させることがもっとも自然な考え方でしょう。 とはいえ、共同開発は、その性質上、どの程度の期間で成果物が得られるかわからないことがほとんどです。 ですが、契約期間が継続しているかぎり、人的コストや資金的コストがかさむという側面もあります。 特に、資金も人的リソースも決して潤沢でないことがほとんどであるスタートアップなどにとっては、成長を阻害することにもなりかねません。 そこで、契約期間については、共同開発に必要と考えられる合理的な期間を当事者間で設定すると同時に、自動更新とするか、もしくは、期間経過後に契約を更新するかどうかを協議・合意する旨の規定を設けておくことが妥当だと考えられます。

    9 小括

    小括 共同開発には、開発スピードを上げることができたり、役割・コストを分担できるといったメリットがあります。 もっとも、共同して開発することになるため、成果物が誰のものになるのか、また、成果物をどのように使用させるのかなどについて、きちんと契約で定めておく必要があります。 そのほかにも、共同開発は、その性質上予測が立てづらいという側面もあります。 そのため、状況に応じて柔軟に対応できるように、連絡協議会を設けるなどして、当事者間で協議できる場を作っておくことも大切です。

    10 まとめ

    これまでの解説をまとめると、以下のとおりになります。
    • 「共同開発」とは、複数の企業などが、お互いに協力し合って、新技術や新製品などを開発することをいう
    • 共同開発には、①研究開発スピードの向上、②研究開発コストの分担、③知名度の向上といったメリットがある
    • 共同開発契約を締結する際には、①研究開発対象の特定、②役割分担と費用負担の明確化、③研究開発の成果物は誰のものになるのか、④成果物の利用に関する合意、⑤禁止事項、⑥契約期間という6点がポイントとなる
    • 成果物の利用態様としては、①共同開発を行った当事者による利用と②第三者による利用の2つが想定される
    • 成果物のライセンス契約においてポイントとなるのは、①ライセンスの対象、②サブライセンスの可否、③ライセンス料の3点である
    • 共同開発契約における禁止事項としては、①ライセンス禁止、②他の研究開発の禁止、③再委託の禁止などが挙げられる
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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