利用規約に著作権の定めを置く場合の3つのポイントを弁護士が解説!
2020.11.27

この記事の目次
はじめに
ユーザー作成コンテンツ(UGC)を扱う事業者は、UGCなどに認められる著作権を、利用規約においてどのように定めておくべきか、頭を抱えることもあるかもしれません。
また、そもそも利用規約にそのような定めを置いておく必要があるのだろうか、と頭を抱える事業者の方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、この記事では

利用規約において、すべての事業者が著作権を気にしなければならないのかというと、そうではありません。
利用規約で著作権を気にしなければならない事業者とは、著作物にあたる可能性のあるユーザー作成コンテンツ(UGC)に関わりを持つ事業者です。
それでは、なぜ事業者はUGCの著作権を気にしなければならないのでしょうか。
この点を理解するためには、その前提として、「著作権」そのものを理解する必要があります。
事業者がUGCなどの著作物を利用したい場合には、以下の点を利用規約に盛り込むべきことが必要です。
利用規約に起因して炎上した事例として、2つの事例をご紹介します。
著作権に関する利用規約の条項について、炎上を防ぐためには、以下の3点に注意する必要があります。
「著作者人格権」とは、生み出した著作物に対する著作者の思い入れを保護するための権利のことをいい、著作者が著作権を取得するのと同時に取得する権利です。
具体的には、以下の権利を総称して、著作者人格権といいます。
UGCなどを扱う事業者が利用規約を定める場合には、著作権に注意する必要があります。投稿されたUGCを適切に使用するためには、著作権を譲り受けたり、ライセンスを受けたりする必要があるからです。
とはいえ、あまりに事業者に一方的な内容にしてしまうと、炎上を引き起こし、サービスなどの信用問題に発展する可能性もあるため、ユーザーの目線になるなどして、バランスのとれた内容にすることが大切です。
そうすることで、ユーザーも安心してサービスなどを利用することが可能になるのです。
- 著作権の扱いを気にするべき事業者は?
- なぜ事業者はUGCの著作権を気にしなければいけないのか?
- 利用規約に盛り込むべき内容
- 炎上事例とその防止策
この記事を執筆したのは

- 弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
- 注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務 GWU Law LL.M.(知的財産法) 事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。
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1 利用規約で著作権を気にしなければいけない事業者とは
利用規約において、すべての事業者が著作権を気にしなければならないのかというと、そうではありません。
利用規約で著作権を気にしなければならない事業者とは、著作物にあたる可能性のあるユーザー作成コンテンツ(UGC)に関わりを持つ事業者です。
(1)著作物とは
「著作物」とは、以下の4つの条件を全て満たすものをいいます。- 「思想または感情」が表れていること
- 作者の「個性」が表れていること
- 「表現」されたものであること
- 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
(2)UGCとは
「UGC(User Generated Contents)」とは、ユーザーが制作したコンテンツの総称です。 代表的なものとして、SNSに投稿されたコンテンツが挙げられます。SNSのアカウントを持つユーザーの中には、テキストや写真、動画などを日々アップロードする人もいます。 このように、SNSなどにアップされたテキストや写真、動画などは、UGCにあたります。 それでは、UGCに関わる事業者として、どのような事業者が挙げられるのでしょうか。 たとえば、以下のような事業者が考えられます。- SNSの運営事業者
- 動画や画像共有サイトの運営事業者
- レンタルサーバの運営事業者
- カスタマーレビューを投稿できる通販サイト事業者
- Q&Aサイトの運営事業者
2 なぜ事業者はUGCの著作権を気にしなければいけないのか
それでは、なぜ事業者はUGCの著作権を気にしなければならないのでしょうか。
この点を理解するためには、その前提として、「著作権」そのものを理解する必要があります。
(1)著作権とは
「著作権」とは、著作物を作った著作者に自然発生し、著作物を独占的に利用できる権利のことをいいます。 このように、著作権は、著作物を作った著作者に自然に発生する権利です。 そのため、著作物にあたるUGCとの関係でいえば、その著作権はユーザーが有していることになり、UGCが投稿されるSNSなどの運営事業者にはUCGの著作権はありません。 その結果、事業者は、自社サイトに投稿されたからといって、UGCを勝手に利用することはできません。(2)著作権がなければできないこと
そもそも、著作権という権利は、支分権と言われる具体的な権利の集合のことをいいます。 ここでいう「支分権」として主なものに、以下のような権利があります。- 複製権:著作物を複写するなどして再製する権利
- 公衆送信権:サーバーなどに置かれた著作物を、公衆からのアクセスに応じて自動的に送信したりする権利
- 譲渡権:映画を除く著作物の原作品や複製物を公衆へ譲渡する権利
- 翻訳権・翻案権:著作物を翻訳・変形・翻案する権利
- 二次的著作物の利用権:自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用することについて、二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利
3 著作物を利用したい場合に利用規約に書くべきこと
事業者がUGCなどの著作物を利用したい場合には、以下の点を利用規約に盛り込むべきことが必要です。
- 著作権の譲渡なのかライセンスなのか
- 無償なのか有償なのか
- 著作権の範囲
(1)著作権の譲渡なのかライセンスなのか
他人の著作物を利用する方法としては、著作権を譲渡する方法と著作権をライセンスする方法の2つがあります。①著作権の譲渡
著作権の譲渡は、言葉のとおり、著作権を譲渡することをいいます。事業者は、ユーザーから著作権を譲り受けることにより、サイト内に投稿されたUGCを自由に利用できるようになります。 先に見たように、著作権には、支分権として様々な権利があり、たとえば、支分権の一部を譲渡の対象とするようなことも可能です。②ライセンス許諾
「ライセンス」とは、UGCなどの著作物を利用することについて、ユーザーから許諾をもらうことをいいます。 この場合、著作権は依然としてユーザーに残り、一般的には利用条件などが付されることが多いといえます。 そのため、利用規約では、この点についても定めておく必要があります。(2)無償なのか有償なのか
著作権を譲渡する方法、もしくは、著作権をライセンスする方法のいずれを採るにしても、それが無償なのか有償なのかという点も利用規約に定めておく必要があります。 もっとも、仮に、著作権を無償で譲り受けるという方法を採る場合、事業者は「タダで手に入れたUGCの権利を使って利益を上げる」ということにもなるため、ユーザーの反発を招きやすくなります。 そのため、知的財産でもある著作権を無償で譲り受けることが難しいケースも少なくありません。(3)著作権の範囲
既に見たように、著作権にはさまざまな支分権があり、譲渡の対象やライセンスの対象をその一部にすることも可能です。 そのため、利用規約では、譲渡する著作権の範囲や、ライセンスする著作権の範囲を明確にしておかなければなりません。 以上からもわかるように、事業者にとって最も有利な方法は、著作権のすべてを無償で譲り受ける方法です。 この場合、以下のような条項を利用規約に盛り込むことになります。-
- 第〇条(コンテンツの取り扱い)
- 利用者は、本サービス上に投稿その他の方法で送信したコンテンツ(文章、画像、動画その他のデータを含むがこれに限らない。)について、その著作物に関する全ての権利(著作権法27条及び28条に定める権利を含む)を、投稿その他送信時に、当社に対し無償で譲渡します
4 利用規約の炎上事例
利用規約に起因して炎上した事例として、2つの事例をご紹介します。
(1)mixiの事例
「mixi」とは、株式会社ミクシィが運営するSNSです。mixiは、日記、写真の共有、ゲームなど、さまざまなサービスを通じて友人などとのコミュニケーションを便利にするサービスです。 mixiでは、以下のような条項が利用規約に定められていました。- 「本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利を許諾するものとします」
(2)ユニクロの事例
ユニクロは、2014年5月、アプリ上で組み合わせた素材を基に、オリジナルイラストを作成して発注すると、オリジナルのTシャツを作れるという「UTme!」というサービスを開始しました。 UTme!の利用規約には、以下の条項が定められていました。- 「投稿データについて、その著作物に関するすべての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を、投稿その他送信時に当社に対し、無償で譲渡します」
- 「投稿データの著作権は、既に他者の著作権が存在している部分を除き、ユーザーに帰属します」
5 著作権に関して炎上を防ぐためには
著作権に関する利用規約の条項について、炎上を防ぐためには、以下の3点に注意する必要があります。
- 最も無難な「ライセンス×無償×著作権全て」
- 譲渡してもらうのであれば有償で
- 著作権全てではなく必要な範囲に限定するという選択肢
(1)最も無難な「ライセンス×無償×著作権全て」
「ライセンス×無償×著作権全て」という組み合わせは、あくまでユーザーに著作権を残しながら、全ての著作権を事業者が無償で利用できるということを意味し、炎上との関係では、もっとも無難な組み合わせであるといえます。 この組み合わせを利用規約に定める場合、以下のようになります。-
- 第〇条(コンテンツの取り扱い)
-
- 利用者が、本サービス上に投稿その他の方法で送信したコンテンツ(静止画、動画、文字情報その他一切の情報)に関する著作権(著作権法第27条及び同第28条に規定する権利を含む)については利用者に帰属するものとします。
- ただし、利用者は、コンテンツの送信時に、当社に対し、日本国内外において、当該コンテンツを無償かつ非独占的に使用することを許諾します。
(2)譲渡してもらうのであれば有償で
投稿されたコンテンツの著作権を、ユーザーから譲り受けると、ユーザーはその著作物を使うことができなくなってしまいます。 このような効果に鑑みると、事業者がユーザーからコンテンツの著作権を譲り受ける場合、無償とするのは妥当ではありません。 そのため、以下のように、有償譲渡とすることが妥当であると考えられます。-
- 第〇条(コンテンツの取り扱い)
-
- 1 利用者が、本サービス上に投稿その他の方法で送信したコンテンツ(静止画、動画、文字情報その他一切の情報)に関する著作権(著作権法第27条及び同第28条に規定する権利を含む全ての著作権を含む。)については利用者に帰属するものとします。
- 2 前項に定める著作権について、当社が譲渡を望む場合、有償にて譲り受けるものとする。
(3)著作権全てではなく必要な範囲に限定という選択肢
将来的な事業展開が予測立たないような場合は、著作権のすべてを譲渡もしくはライセンスの対象としておくべきですが、そうでない場合は、著作権のすべてを対象とするのでなく、使用に必要な範囲に限定することが考えられます。 以下は、著作権の一部についてライセンスを受ける場合の条項です。-
- 第〇条(コンテンツの取り扱い)
-
- 利用者が、本サービス上に投稿その他の方法で送信したコンテンツ(静止画、動画、文字情報その他一切の情報)に関する著作権(著作権法第27条及び同第28条に規定する権利を含む)については利用者に帰属するものとします。
-
- ただし、以下各号に定める権利の範囲内において、利用者は、コンテンツの送信時に、当社に対し、日本国内外において、当該コンテンツを無償かつ非独占的に使用することを許諾します。
-
- ①複製権
- ②公衆送信権
6 注意しなければいけない著作者人格権
「著作者人格権」とは、生み出した著作物に対する著作者の思い入れを保護するための権利のことをいい、著作者が著作権を取得するのと同時に取得する権利です。
具体的には、以下の権利を総称して、著作者人格権といいます。
- 公表権:著作物を公表するかどうかなどを決める権利
- 氏名表示権:著作物に著作者の氏名を出すかどうかなどを決める権利
- 同一性保持権:無断で著作物を修正されない権利
7 小括
UGCなどを扱う事業者が利用規約を定める場合には、著作権に注意する必要があります。投稿されたUGCを適切に使用するためには、著作権を譲り受けたり、ライセンスを受けたりする必要があるからです。
とはいえ、あまりに事業者に一方的な内容にしてしまうと、炎上を引き起こし、サービスなどの信用問題に発展する可能性もあるため、ユーザーの目線になるなどして、バランスのとれた内容にすることが大切です。
そうすることで、ユーザーも安心してサービスなどを利用することが可能になるのです。
8 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下の通りです。- SNSなどのように、ユーザーが投稿する著作物(UGC)を扱う事業者は、利用規約に著作権に関する条項を盛り込む必要がある
- 事業者は、UGCの著作権を譲り受け、または、ライセンスを受けたりしない限り、複製や公衆送信もできない
- UGCなどの著作物を利用したい場合、事業者は、①著作権の譲渡なのかライセンスなのか、②無償なのか有償なのか、③著作権の範囲の3点を定める必要がある
- 利用規約において、著作権に関する定めが、事業者に一方的に有利な内容になっている場合、炎上する可能性がある
- 著作権に関する条項について、炎上を防ぐためには、①最も無難な「ライセンス×無償×著作権全て」、②譲渡してもらうのであれば有償で、③著作権すべてではなく必要な範囲に限定するという選択肢の3点を検討する必要がある
- 著作者人格権を主張されないようにするためには、その旨を利用規約に定めておく必要がある











