利用規約・プライバシーポリシーを有効に変更するには?弁護士が解説
2019.09.20

この記事の目次
はじめに
オンライン上でサービスを提供している事業者の方は、サービスを利用している全てのユーザーといちいち紙の契約書を個別に締結なんてできないですよね。そのため、事業者の多くは、利用規約やプライバシーポリシーを利用してユーザーから同意を得てサービスを提供しているのではないでしょうか。
もっとも、利用規約やプライバシーポリシーは一度作成すれば終わりというものではありません。サービスの内容を変更したり、法律の改正にあわせて変更(アップデート)していく必要があるからです。
このように利用規約やプライバシーポリシーを変更するとき、既に同意をもらったユーザーから改めて同意をもらわなくちゃいけないの?利用規約などに「変更後もサービスを利用した場合、変更後の利用規約に同意したものとみなす」と書いておけば問題ないの?
などといったように、どのように変更を行えば問題ないのか事業者の悩みは尽きないですよね。
そこで今回は、利用規約やプライバシーポリシーについて、ユーザーとの関係でどのような方法で変更を行えば問題ないかを弁護士がわかりやすく解説していきます。
ガイドラインによれば、変更前の利用規約に同意しているユーザーに変更後の利用規約のルールを有効に適用するためには、
改正後の民法における利用規約に関する定めとは、「定型約款」に関する定めです。
利用規約も定型約款にあたる場合があります。
「約款」とは、事業者と大量のユーザーとの間で一律に適用されるルールが書かれた文書のことをいいます。
「定型約款」とは、「約款」のうち、以下の3つの条件を満たすものをいいます。
定型約款を変更する場合、変更前の定型約款に同意しているユーザーに変更後の定型約款のルールを適用するためには
「プライバシーポリシー」とは、個人情報などプライバシーに関する情報について事業者としての取扱方針を定めた文書のことをいいます。
多くの事業者は、主に「個人情報保護法」の決まりを守るためにプライバシーポリシーを作成しています。
「個人情報保護法」とは、個人データを取り扱う個人情報取扱事業者が守るべきルールを定めた法律のことをいいます。
「個人データ」とは、検索ができるように整理されたデータベースに含まれている個人情報のことをいいます。
この法律によると、事業者は、個人情報を取得する場合、その利用目的を本人に通知するか公表しなければいけないとされています。そこで、事業者はプライバシーポリシーを利用し、個人情報の利用目的を載せてホームページなどで公表しておくことで、個人情報保護法の決まりを守っています。
では、プライバシーポリシーの変更にあたって、個人情報保護法のどのようなルールが問題となるのでしょうか。
プライバシーポリシーの変更が問題となるのは、
事業者は、利用規約を変更する場合、経済産業省作成のガイドラインや改正民法のルールを守らなければいけません。
ガイドラインと改正民法でルールが異なる部分があるため、事業者は、それぞれのルールの違いを把握し、変更前の利用規約に同意したユーザーに変更後の利用規約のルールが適用されるよう、適切に手続を実施する必要があります。
また、プライバシーポリシーの変更についても、単純に方針を変更するだけではNGの場合があります。個人情報保護法のルールに従い、適切に公表・通知あるいは本人からの同意を取得する必要があることに事業者は留意してください。
1 利用規約変更で問題となるポイント
(1)利用規約とは
「利用規約」とは、サービスを提供する上で、事業者とユーザーが守るべきルールを書いた文書のことをいいます。サービス利用の際に、ユーザーから「利用規約に従ってサービスを利用する」ことに関して同意をもらうことで、利用規約は事業者とユーザーの間で契約となります。 事業者とユーザーの間で契約となることで、利用規約に定められたルールが事業者とユーザーに適用されます。(2)利用規約変更における問題点
ユーザーとの関係で、事業者がどのように利用規約を変更すれば問題ないかを理解するためには、利用規約の変更がどのような場合に問題になるのかについて、まずは知る必要があります。 利用規約の変更が問題となるのは、- 事業者が一定期間継続したサービスを提供していること
- 変更前の利用規約に同意しているユーザーがいること
2 ガイドラインに基づいた利用規約変更の方法
ガイドラインによれば、変更前の利用規約に同意しているユーザーに変更後の利用規約のルールを有効に適用するためには、
- 原則:再度同意を得る
- 例外:黙示の同意を得る
(1)原則:再度同意を得る
「再度同意を得る」とは、変更前の利用規約に同意しているユーザーから、変更後の利用規約に関しても「利用規約に従ってサービスを利用する」旨の同意を再度取得することをいいます。 具体的な利用規約の同意の取り方について詳しく知りたい方は、「利用規約・プライバシーポリシーの適切な同意の取り方を弁護士が解説」をご覧ください。事業者はこの解説に沿ってユーザーから再度同意を取得すれば問題ありません。 もっとも、利用規約を変更する頻度が高かったりすると、何度も同意を取得する必要が発生し、ユーザーにとっても大きな負担となってしまいます。そこで、例外的に黙示の同意を得るという方法があります。(2)例外:黙示の同意を得る
「黙示の同意」とは、- 事業者のユーザーに対する利用規約の変更に関する十分な告知を行うこと
- ①の告知後にユーザーがサービスを継続して利用していること
- ユーザーが少なくとも利用規約に何らかの変更がなされる事実を認識しているであろうこと
- ユーザーに対して利用規約の変更内容が適切に開示されていること
3 改正民法(定型約款)
改正後の民法における利用規約に関する定めとは、「定型約款」に関する定めです。
利用規約も定型約款にあたる場合があります。
「約款」とは、事業者と大量のユーザーとの間で一律に適用されるルールが書かれた文書のことをいいます。
「定型約款」とは、「約款」のうち、以下の3つの条件を満たすものをいいます。
- ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として行う取引についてのものであること(不特定多数)
- 取引きの内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものであること(定型取引)
- 約款が、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体であること(一方性)
4 定型約款の変更
定型約款を変更する場合、変更前の定型約款に同意しているユーザーに変更後の定型約款のルールを適用するためには
- 再度同意を得る
- 改正民法の条件に従って定型約款の変更を行う
(1)再度同意を得る
定型約款を変更する場合、変更後の定型約款で再度同意を取りなおすという方法があります。 改正民法においても定型約款の同意の取り方についてのルールが明記されました。 もっとも、改正民法に明記されたルールは、経済産業省作成のガイドラインに定められた利用規約の同意の取得のルールと大きく異なるわけではありません。 そのため、少なくとも経済産業省作成のガイドライン通りに同意を取得していれば定型約款の同意の取り方として問題がないと考えられます。 ※具体的な同意の取り方については、「利用規約・プライバシーポリシーの適切な同意の取り方を弁護士が解説」をご覧ください。(2)改正民法の条件に従って定型約款の変更を行う
たしかに、①のように再度同意を得ることが、ユーザーにとって最も親切かと思います。 もっとも、同意を取得しなおすことをルールとしてしまうと、事業者・ユーザーの双方にとってわずらわしいものとなってしまいます。 そのため、改正民法は、個別のユーザーから同意を取得しなおすことなく、定型約款を変更できる条件を定めました。 改正民法では、以下の2つの条件のうち、いずれかの条件を満たしたうえで、必要な手続を行うことで、事業者は、ユーザーから個別に同意を取ることなく定型約款を有効に変更できることが定められました。- ユーザーの利益になる
- 変更をすることが契約の目的に反しない+変更内容が合理的
①ユーザーの利益になる
「ユーザーの利益になる」というのは、変更した定型約款の内容のほうが、ユーザーにとって、サービスを利用するのにより便利になるなど、有利なことがある場合を指しています。 たとえば、以下のような反社会勢力の排除の定めを定型約款に追加するケースが考えられます。 第〇条 (反社会勢力の排除) 当会社は、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約するものとします。 (1)暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること (2) ・・・ (3) ・・・ このように、事業者が暴力団などの反社会的勢力を排除することを明確にすることで、ユーザーは安心してサービスを利用することができるようになります。 そのため、このような変更は、「ユーザーの利益になる」といえるため、事業者は個別にユーザーから同意をもらうことなく定型約款の変更を行うことができると考えられます。②変更することが契約の目的に反しない+変更内容が合理的
「変更することが契約の目的に反しない」とは、定型約款の変更後の内容が事業者とユーザーとの間で定型約款を契約の内容とする目的と矛盾がないことをいいます。 また、「変更内容が合理的」とは、- 変更の必要性
- 変更後の内容の相当性
- 変更を予定する旨の契約条項の有無やその内容
- 顧客に与える影響やその影響を軽減する措置の有無
- ユーザーによるアカウントの使いまわし
- 二重払いの発生などプログラムが正常に機能しないこと
(3)個別の同意を取得しなおすことなく定型約款を変更する場合の手続き
事業者は、ユーザーから個別の同意を取得しなおすことなく定型約款を変更する場合、以下の2つの手続を行わなければいけません。- 変更の効力の発生時期を定める
- 規約を変更することとその内容、効力発生時期をインターネットなどで知らせる
(4)変更条項の定め方
では、変更条項には具体的にどのようなことを定めておくべきなのでしょうか。 多くの事業者が記載しているのは、- 当社は、当社の裁量に基づいて、本利用規約を自由に変更することができ、ユーザーは利用を継続した時点で同意したものとみなす。
- 当社が必要と判断した場合、ユーザーにあらかじめ通知することなくいつでも本利用規約を変更することができるものとします。
- どのような条件で変更を行うか
- 周知のタイミング
- 周知の方法
5 プライバシーポリシーとは
「プライバシーポリシー」とは、個人情報などプライバシーに関する情報について事業者としての取扱方針を定めた文書のことをいいます。
多くの事業者は、主に「個人情報保護法」の決まりを守るためにプライバシーポリシーを作成しています。
「個人情報保護法」とは、個人データを取り扱う個人情報取扱事業者が守るべきルールを定めた法律のことをいいます。
「個人データ」とは、検索ができるように整理されたデータベースに含まれている個人情報のことをいいます。
この法律によると、事業者は、個人情報を取得する場合、その利用目的を本人に通知するか公表しなければいけないとされています。そこで、事業者はプライバシーポリシーを利用し、個人情報の利用目的を載せてホームページなどで公表しておくことで、個人情報保護法の決まりを守っています。
では、プライバシーポリシーの変更にあたって、個人情報保護法のどのようなルールが問題となるのでしょうか。
6 プライバシーポリシーの変更が問題となるケース
プライバシーポリシーの変更が問題となるのは、
- 公表した利用目的を変更するケース
- 個人情報を提供する本人から同意を取得しなければいけないケース
(1)公表した利用目的を変更するケース
事業者が個人情報を取得する際に、利用目的の公表をプライバシーポリシーを使って行っていた場合、本人には利用目的を確認して「この利用目的なら個人情報を提供してもいい。」、「こんな個人情報の使われ方は嫌だな。個人情報を提供することはやめよう。」といった具合に、個人情報を提供するか否かを検討する機会が与えられます。 もっとも、プライバシーポリシーで公表された利用目的を、本人の知らないところで、事業者が勝手に変更してしまった場合はどうでしょうか? この場合、本人には、個人情報をそのまま提供し続けるか否か考える機会も与えられず、本人の望んでいない形で個人情報が使われ続けてしまう可能性があります。 そのため、個人情報保護法では、一度公表・通知した利用目的を変更する場合に以下のとおり2つのルールを定めています。- 変更できる範囲の限定
- 変更された利用目的の公表・通知
①変更できる範囲の限定
プライバシーポリシーに定められている利用目的の変更を事業者は好き勝手にできるわけではありません。 「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えてはならない」というルールがあります。 「変更前の利用目的と関連を有すると合理的に認められる範囲」とは、当初の利用規約と変更後の利用規約を比較して、一般人が、その変更を予期できる範囲内にあることをいいます。 たとえば、取得したメールアドレスの利用目的の変更が認められる例と認められない例は、以下のとおりとなっています。-
- 【利用目的の変更が認められる例】
-
- 【利用目的の変更が認められない例】
②変更された利用目的の公表・通知
限定された変更範囲内での利用目的の変更については、本人に対して、変更後の利用目的を公表・通知する必要があります。 ここでいう「公表」とは、一般の人々が知ることができるように発表することをいい、たとえば、自社のホームページのページから1回程度の捜査で到達できるよう、トップページにプライバシーポリシー変更に関するバナーを配置したり、お知らせにリンクを掲載したりといった方法があります。 また、「通知」とは、本人に直接知らせることをいい、たとえば、プライバシーポリシー変更に関する書面を送付したり、電子メールを送信したりといった方法があります。 一方、変更できる範囲を超えて利用目的を変更したい場合は、個人情報の目的外利用にあたります。この場合、変更後の利用目的の公表・通知では足りず、その利用目的の変更に関して、本人の同意を取得しなければいけません。 この目的外利用のように本人の同意が必要なケースがプライバシーポリシーの変更における2点目の問題点となります。(2)個人情報を提供する本人から同意を取得しなければいけないケース
個人情報保護法には、以下のとおり、本人の同意を得なければいけない場合があります。- 公表・通知した内容から外れた利用目的で個人情報を扱う場合(目的外利用)
- 要配慮個人情報を取得する場合
- 第三者へ個人データを提供する場合
- 外国へ個人データを提供する場合
7 小括
事業者は、利用規約を変更する場合、経済産業省作成のガイドラインや改正民法のルールを守らなければいけません。
ガイドラインと改正民法でルールが異なる部分があるため、事業者は、それぞれのルールの違いを把握し、変更前の利用規約に同意したユーザーに変更後の利用規約のルールが適用されるよう、適切に手続を実施する必要があります。
また、プライバシーポリシーの変更についても、単純に方針を変更するだけではNGの場合があります。個人情報保護法のルールに従い、適切に公表・通知あるいは本人からの同意を取得する必要があることに事業者は留意してください。
8 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。- 「利用規約」とは、サービスを提供する上で、事業者とユーザーが守るべきルールを書いた文書のことをいう
- 変更前の利用規約に同意したユーザーは変更前の利用規約に書かれたルールしか適用されないことが利用規約変更の問題点である
- 経済産業省のガイドラインによれば、変更前の利用規約に同意しているユーザーに変更後の利用規約のルールを適用するためには、①原則:再度同意を得る、②例外:黙示の同意を得ることをしなければいけない
- 改正民法の「定型約款」のルールが利用規約にも適用される場合があるため、2020年4月1日以降は、そのルールを守らなければいけなくなる
- 定型約款を変更する場合、変更前の定型約款に同意しているユーザーに変更後の定型約款のルールを適用するためには①再度同意を得る、②改正民法の条件に従って変更を行うという2つの方法がある
- 改正民法によると、①ユーザの利益になる、②変更をすることが契約の目的に反しない+変更内容が合理的といったいずれかにあたる場合はユーザーから個別に同意をもらうことなく定型約款を変更できる
- ユーザーから個別の同意を得ることなく定型約款を変更する場合、①変更の効力の発生時期を定める、②規約を変更することとその内容、効力発生時期をインターネットなどで知らせるという2つの手続きが必要になる
- 「プライバシーポリシー」とは、個人情報などプライバシーに関する情報について事業者としての取扱方針を定めた文書のことをいう
- プライバシーポリシーの変更では、①公表した利用目的を変更するケースと②個人情報を提供する本人から同意を取得しなければいけないケースの2つが問題となるが問題になる
- 公表・通知した利用目的を変更する場合、①変更できる範囲の限定、②変更された利用目的の公表・通知の2つのルールを守る必要がある
- 本人の同意が必要なケースは、①目的外利用、②要配慮個人情報を取得する場合、③第三者へ個人データを提供する場合、④外国へ個人データを提供する場合である











