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利用規約

ECサイトの利用規約を作るときに注意すべき6つのポイントを解説!

2020.11.062025.11.29
利用規約
この記事の目次
    はじめに ECサイトを運営する場合において、「利用規約」を適切に定めておくことはとても重要なことです。 適切な利用規約を作っておくことにより、トラブルを未然に防ぐことが可能になるのはもちろんのこと、対外的にも信頼感・安心感を与えることができます。 もっとも、ECサイトの利用規約には、ECサイトに特有の要素を盛り込む必要があります。 そこで今回は、ECサイトの利用規約を作るときの注意点などを中心に、弁護士がわかりやすく解説します。

    この記事を執筆したのは

    弁護士 勝部 泰之
    弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
    東京弁護士会 所属
    注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務 GWU Law LL.M.(知的財産法) 事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。
    詳しいプロフィールはこちら

    1 ECサイトと利用規約

    ECサイト 「EC」とは、「Electric Commerce」の略語で、日本語では「電子商取引」や「eコマース」などと訳されています。 そして、商品やサービスを販売するWebサイトのことを「ECサイト」といいます。 ECサイトには、大きく分けて次の2つの種類があります。
    1. 自社型
    2. モール型
    例えば、Amazonや楽天市場などは後者のモール型にあたり、数多くの店舗が出店しています。 ECサイトの場合、運営者が作成した利用規約にユーザーが同意することによって、利用規約に定められている内容が両者の間のルールになります。 「利用規約」とは、サービスを利用するときのルールが定められているものをいいます。 もっとも、利用規約で定めさえすれば、すべての内容がユーザーを拘束するルールとなるわけではありません。その内容によっては、無効とされてしまうこともあります。 また、ECサイトが自社型か、モール型かで、関与者の数や商品、代金の流れなどが異なるため、利用規約の定め方も変わってきます。 次の項目から、ECサイトの種類ごとに利用規約作成時の注意点などを見ていきたいと思います。

    この記事を書いた人

    勝部 泰之勝部 泰之弁護士
    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。
    一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科に在籍中。主な興味分野は経営学、高次元統計、自然言語処理、ゲーム理論、金融アルゴリズム、ブロックチェーン。
    研究リポジトリはこちら↗

    2 自社型ECサイトにおける利用規約の注意点

    注意点 「自社型ECサイト」とは、自社の商品やサービスを自社が運営するWebサイトで販売することをいいます。 自社型ECサイトは、モール型に比べコストを抑えやすく、システム構築やデザイン、マーケティングの自由度が高いというメリットがあります。 また、独自のドメインを使用できるというメリットもあります。 もっとも、自社で集客をしなければならないため、既に知名度の高いモール型と比べて集客力が弱いというデメリットもあります。 自社型ECサイトにおいて、利用規約を作る際に注意すべき点は、主に以下の4点です。
    1. 契約が成立するタイミングを明確にする
    2. IDとパスワードの管理責任を明確にする
    3. 消費者契約法に違反しないようにする
    4. 返品に関する説明を設ける
    これらの注意点は自社型に限られず、モール型ECサイトにおいても同じようにあてはまります。

    (1)契約が成立するタイミングを明確にする

    どの時点で契約が成立するのかを利用規約で定めることは、トラブル予防のためにも重要なポイントになります。 モノを売ったり買ったりすることは、民法上の契約にあたります。モノを売る(買う)ことに向けられた「申し込み」とそれに対する「承諾」によって契約が成立します。 契約が成立すると、売主と買主の双方に一定の義務が発生します。 売買契約を例に見ると、売主には商品を引き渡す義務が発生し、買主には商品代金を支払う義務が発生することになるのです。 この点、ECサイトでの取引では、対面での取引に比べ、どのタイミングで契約が成立したといえるかがわかりづらいといえます。 例えば、以下のような手順を踏むECサイトの取引では、どの時点で契約が成立しているのでしょうか。
      1. ユーザーからの注文
    ↓
      1. 注文確認メールの送信
    ↓
      1. 代金の支払い
    ↓
      1. 商品の発送
    ↓
      1. 商品発送通知メールの送信
    ↓
    1. ユーザーが商品を受領
    この取引では、注文確認メールを送信したこと(上記2)が売主による承諾の意思表示と考えることもできます。 ですが、注文確認メールは、ユーザーによる注文を受けてすぐに自動送信されることが一般的であるため、この時点をもって契約が成立したとすると、売主が予測できない不利益を受ける可能性があります。 たとえば、注文確認メールの送信後に、在庫管理のミスで注文を受けた商品の在庫がなかったことに気付いたとします。 注文確認メールを送信したことをもって、契約が成立したものとすると、売主はユーザーに商品を発送することができなくなるため、買主から損害賠償を請求される可能性があります。 この場合、契約が成立するタイミングを④商品発送時や、⑤商品発送通知のメール送信時とすることで、在庫管理のミスによるトラブルを回避することができます。 たとえば、以下のような記載が考えられます。
      • 第○条(売買契約の成立)
    1 利用者からの注文は、商品購入についての契約の申込とします。当社から「ご注文の発送」の電子的通知が利用者に提供されたときに利用者の契約申し込みは承諾され、売買契約が成立します。

    (2)IDとパスワードの管理責任を明確にする

    会員登録が必要なWebサイトでは、通常はIDとパスワードを入力することによってユーザー本人の確認を行っています。 たとえば、なりすましによる不正アクセスを受けた場合に、IDやパスワードの管理責任の所在が明確になっていないと、トラブルに発展する可能性があります。 この点、IDやパスワードが悪用されて、何者かが本人になりすましていることを運営者側で把握することはできません。 そのため、このようなトラブルを未然に防止するためには、利用規約において、IDとパスワードの管理責任がユーザーにあることをしっかりと明記しておくことが必要です。 そうすることで、不正アクセスが発生した場合のトラブルを回避できます。 また、登録時のIDとパスワードを使ってログインされた場合には、それがたとえ、第三者がユーザーのIDとパスワードを悪用している場合であっても、ユーザーが利用したものとみなすための条項を設けておくことも必要です。 具体的には、以下のような条項を利用規約に設けておくことで、IDやパスワードを含むアカウントの管理責任がユーザーにあることを明確にできます。
      第○条(アカウントの管理)
    1. 利用者は、利用に際して登録した情報(以下、「登録情報」といいます。メールアドレスやID・パスワード等を含みます)について、自己の責任の下、任意に登録、管理するものとします。利用者は、これを第三者に利用させ、または貸与、譲渡、名義変更、売買などをしてはならないものとします。
    2. 当社は、登録情報によって本サービスの利用があった場合、利用登録をおこなった本人が利用したものと扱うことができ、当該利用によって生じた結果ならびにそれに伴う一切の責任については、利用登録を行った本人に帰属するものとします。

    (3)消費者契約法に違反しないようにする

    「消費者契約法」とは、消費者と事業者との間に存在する情報の質や量、知識などの格差を考慮して、消費者を保護するために作られた法律です。 契約は、当事者がその内容を自由に決めることができるのが原則ですが、消費者と事業者が当事者となる契約については、両者間に存在する情報や知識などの格差から消費者が一方的に不利益を被ることがないようにする必要があります。 そこで、消費者の利益を一方的に害するような条項は、消費者契約法により無効になるものとされています。 たとえば、次のような条項を利用規約で定める場合には注意が必要です。
    1. 事業者の損害賠償責任に関する条項
    2. 消費者の解除権に関する条項
    3. 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項

    ①事業者の損害賠償責任に関する条項

    利用規約では、一定の場合に事業者が負う損害賠償責任に関する免責条項が設けられることがほとんどです。 もっとも、事業者の落ち度が原因となって消費者に損害が発生しているにもかかわらず、事業者において一切の損害賠償責任を負わないといった内容の免責条項は無効になります。 利用規約に「一切の責任を負わない」と定めているからといって、その内容が消費者に一方的に不利となっているような場合には、その定めは無効となるため注意が必要です。

    ②消費者の解除権に関する条項

    事業者による債務不履行が原因となって発生した消費者の解除権を放棄させたり、事業者に対し、消費者の解除権の有無を決める権限を付与するような条項は無効となります。

    ③消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項

    消費者契約の解除に伴う損害賠償の額や違約金を定める場合に、これらの額が同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な損害額を超える場合には、その超過分については無効となります。 また、消費者契約で定める支払期日までに消費者が支払いをしない場合の遅延損害金の定めについて、その利率が年14.6%を超えている場合には、その超過分について無効となります。 たとえば、以下のような条項において、算出される基となる利率が年14.6%を超えている場合には、その超過分については無効となります。
    • 未払いの場合には、未払い金〇〇円に、一日あたり〇〇円の遅延損害金を合計した金額のお支払いを請求させていただきます
    このように、消費者契約法では、一方的に消費者が不利とならないように、さまざまなルールが設けられています。 利用規約を作る際には、この点にも注意を払う必要があります。

    (4)返品に関する説明を設ける

    返品については特にトラブルの原因となりやすいため、「特定商取引法」という法律が一定のルールを定めています。 「特定商取引法」とは、訪問販売や通信販売などの特定商取引について、公正性を確保することにより、購入者等の利益を保護するための法律です。 ここでいう「通信販売」とは、電話や郵便などにより契約の申込みを受けて、商品などを販売することをいいます。 ECサイトでは、これまでにも返品をめぐって多くのトラブルが発生しています。 特定商取引法では、返品に関するルールが定められており、返品特約が適切に表示されていない場合には、購入者は一定期間内に商品などを返品することができるようになっています。 ここでいう「返品特約」とは、事業者と購入者などの間で取り決められる返品に関するルールのことをいいます。 事業者が返品特約を設けていない場合には、購入者は、商品が届いてから8日以内であれば、送料を自己負担して返品することができます。 事業者は、返品特約を設ける場合には消費者においてその内容が容易にわかるように表示しなければなりません。具体的には、返品特約の表示サイズや表示箇所が、消費者にとってわかりやすくなっている必要があります。 以下は、ECサイトにおいて利用規約に返品特約を表示する場合の一例です。 返品特約
    1. 広告から申込みに至るすべての段階で、「詳細はこちら」などの表示を設け、その表示をクリックすると、利用規約(共通表示部分)が表示されるようになっている
    2. 消費者が簡単に返品特約を認識できるように、「カートに入れる」などの表示の近くに、十分なサイズの大きさで返品特約が表示されている
    他方で、以下のような場合には、消費者にとってわかりやすい表示であるとはいえないため、返品特約の表示として適切であるとはいえません。
    • 各商品の説明箇所に返品特約の表示がない
    • たくさんスクロールしなければ見えない場所に表示がある
    • ページの隅などの目につきにくい場所に表示がある
    • 小さなサイズで表示されている
      ※返品特約の表示方法について詳しく知りたい方は、「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン 」をご覧ください。

    3 モール型ECサイトとは?

    モール 「モール型ECサイト」とは、1つのサイトに複数の店舗が出店している、インターネット上のショッピングモールのことをいいます。 たとえば、amazonや楽天市場などがモール型ECサイトにあたります。 自社型では、「ECサイト運営者」と「ユーザー」の2者間で取引が行われますが、モール型ECサイトでは、「ECサイト運営者」と「ユーザー」に加え、「出店者」の3者間で取引が行われることになります。 モール型のメリットとしては、以下のような点が挙げられます
    • モール自体の知名度が高く、集客力がある
    • モール運営者からのサポートが受けられる
    • 顧客に信頼されやすい
    他方で、モール型には、以下のようなデメリットもあります。
    • 出店者による価格競争にさらされる
    • 運営者に出店料(テナント料)やロイヤリティを支払う必要がある
    • 顧客情報は基本的にモール運営者が管理するため、自社で活用できない
    このように、モール型には、圧倒的な集客力という大きなメリットがありますが、その分、コストもかかることになります。 モール型ECサイトは、さらに以下の3つの種類に分類されます。
    1. 統合管理型モール
    2. テナント型モール
    3. マーケットプレイス型モール

    (1)統合管理型モール

    「統合管理型モール」とは、モール運営者が複数の店舗をまとめて管理、運営するタイプのECサイトをいいます。 統合管理型 たとえば、ふるさと納税サイト「さとふる」は、総合管理型モールにあたります。 統合管理型モールでは、モールの運営者がモールの運営・管理を行い、各ショップが個別の注文や商品の管理を行うことが一般的です。

    (2)テナント型モール

    「テナント型モール」とは、プラットフォームとなるモールに各ショップが出店し、それぞれのショップが自ら運用・管理するタイプのECサイトのことをいいます。 テナント型 たとえば、楽天市場はテナント型モールにあたります。 テナント型モールは、統合管理型モールとは異なり、デザインや独自の企画などで個性を出すなどしてブランディングしやすいというメリットがありますが、管理コストがかかるといったデメリットもあります。

    (3)マーケットプレイス型モール

    「マーケットプレイス型モール」とは、出店を希望する事業者がモールに商品等を出品し、モールサイトにはその商品情報だけが掲載されるECサイトのことをいいます。 マーケットプレイス型 たとえば、AmazonやZOZOTOWNなどがマーケットプレイス型モールにあたります。 マーケットプレイス型モールでは、テナント型モールのように、事業者がサイト内でショップを持つことはなく、事業者は、注文管理や商品管理のみを行います。

    4 モール型ECサイトにおける利用規約の注意点

    注意点 モール型ECサイトでは、「運営者」と「ユーザー」に加え、「出店者」も関係してきます。 そのため、モール型ECサイトにおいては、この3者の関係にも注意しながら利用規約を作る必要があります。 モール型ECサイトにおいても、利用規約を作る際の注意点は、基本的に自社型の場合と同じです。
    1. 契約が成立するタイミングを明確にする
    2. IDとパスワードの管理責任を明確にする
    3. 消費者契約法に違反しないようにする
    4. 返品に関する説明を設ける
    さらに、モール型固有の注意点として、以下の点が挙げられます。
    1. 整合性がとれた利用規約を作成すること
    2. トラブル発生時に誰が対応するのかを明確にすること

    (1)整合性がとれた利用規約を作成すること

    モール型ECサイトでは、運営者が出店者に対し、モールを提供し、出店者はサイト運営者との契約に基づいてモールを利用します。 他方で、ユーザーは、運営者との契約に基づいて、モールを利用します。 具体的には、モールが提供するシステムを利用して、出店者から買い物をしたり、サービスを受けたりします。 そして、出店者から商品やサービスを購入するときには、ユーザーと出店者の間で売買契約などを結ぶことになります。 このように、モール型ECサイトでは、各局面において締結する契約が、当事者を異にするため、複雑になりがちです。 そのため、利用規約を作る際には、これらの権利関係についてきちんと整合性が取れているかどうかを確認する必要があります。 また、どのタイミングで、どの当事者が契約を結ぶ必要があるのかについても、利用規約で明確にしておく必要があります。 利用規約において、整合性が取れていないと、トラブルの元にもなるため、注意するようにしましょう。

    (2)トラブル発生時に誰が対応するのか明確にすること

    モール型ECサイトの利用規約では、ユーザーと各出店者の間でトラブルが発生した場合の解決方法を明確にしておく必要があります。 たとえば、「モールで購入した商品が届かない」というトラブルが発生したとき、商品や発送を管理しているのがサイト運営者なのか、出品者なのかは、モールによって異なります。 そのため、上記のようなトラブルが発生した場合に、誰がどのように対応して解決するのか、ということを利用規約で明確にしておく必要があります。 具体的には、モールサイトの運営者が間に入って解決する方法と各出店者に直接解決してもらう方法が考えられます。 利用規約でこの点を明確にしておかないと、スムーズに対応できないどころか、事が大きくなる可能性もありますので、注意するようにしましょう。   ※利用規約を作成するときのポイントについて詳しく知りたい方は、「【ひな形付】web・アプリ利用規約の書き方と9つのポイントを解説」をご覧ください。

    5 小括

    小括 ECサイトを円滑に運営していくためには、利用規約の策定が必須です。 利用規約を作ることで、トラブルの発生を未然に防いだり、トラブル発生時の損害を最小限に抑えることが可能になります。 もっとも、ECサイト事業は、その種類に応じて提供するサービス内容や当事者の数も異なってきます。 適切な利用規約といえるためには、このような要素を基に、整合性のとれている内容になっていることが必要であるといえるでしょう。

    6 まとめ

    これまでの解説をまとめると、以下の通りです。
    • ECサイトは、大きく分けると、①自社型、②モール型の2つに分類される
    • ECサイトの利用規約を作る際の注意点として、①契約が成立するタイミングの明確化、②IDとパスワードの管理責任の所在、③消費者契約法に違反しないようにする、④返品特約を設ける、が挙げられる
    • モール型ECサイトは、①統合管理型モール、②テナント型モール、③マーケットプレイス型モールの3つに分類される
    • モール型ECサイトの利用規約を作る際には、①整合性、②トラブル発生時の対応にも注意する必要がある
    AUTHOR
    勝部 泰之

    データサイエンス研究しながら仕事してる弁護士。 一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1・清水研究室)。

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