仮想通貨交換業者が守るべきマネロン規制4つの義務を弁護士が解説!
2018.04.05

この記事の目次
はじめに
ICOの文脈や、仮想通貨取引所の口座開設の際に「KYC(本人確認)」を求められますよね。これは、「犯収法(マネーロンダリング防止法)」に基づく措置で、取引所などの仮想通貨の売買や交換を行う「仮想通貨交換業者」は、取引の前にこのKYC(本人確認)をしないといけません。
このほかにも、仮想通貨交換業者は、マネーロンダリング防止法に基づいていろいろな義務を負うのですが、一体どのような義務を負うのかがイマイチわからない方も多いかと思います。
そこで今回は、取引所をはじめとした仮想通貨交換業者が守らなければならない「犯収法(マネーロンダリング防止法)」とは何なのか、具体的にどのような義務を負うのか、また、犯収法に違反した場合のペナルティはどうなっているのかなどを、具体的にわかりやすく解説します。
「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売り買いや仮想通貨同士を交換するなどのサービスを行うことをいいます。仮想通貨交換業を行う事業者のことを「仮想通貨交換業者」といい、bitFlyerやZaifなどの仮想通貨取引所が仮想通貨交換業者の典型例です。
仮想通貨交換業者は、情報弱者である投資家を保護するために「仮想通貨法(改正資金決済法)」という法律に基づいてさまざまな規制をうけます。
それだけでなく、ビットコインなどの仮想通貨がマネーロンダリング(資金清浄)に利用されやすいという性質から、仮想通貨交換業者は「犯収法」という法律により、KYC(本人確認)をはじめとした「マネーロンダリング規制(マネロン規制)」を受けます。
その結果、取引所の開設やICO(※一部のもの)といった仮想通貨ビジネスをやる際には、以下で説明する様々な義務を負うことになります。
※仮想通貨交換業についてさらに詳しく知りたい方は「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。
「マネーロンダリング(マネロン)」とは、犯罪によって得られた不当なお金を、架空口座などを使って転々と送金し、その出所をわからなくすることをいいます。送金などを繰り返すことにより、犯罪によって手に入れたお金をあたかも最初から正当な手段で手に入れたもののように見せかけることができるため、「資金洗浄」とも呼ばれています。
このマネーロンダリング(マネロン)を防止するために作られたのが「犯収法」です。「犯収法」とは、金融機関などで取引を行う際に、ユーザーが本当に本人と一致しているのか、間違いないよう確認することを定めた法律です。「本人確認(KYC)」を行うことにより、金融機関が犯罪に利用されることを防ぐことができるのです。
仮想通貨は、その便利さが認識されている一方、違法取引の決済やマネーロンダリング(マネロン)に利用される動きもあり、国際的に問題視されています。たとえば、2017年には、ビットコインを使って40億ドル超のマネーロンダリングをしたロシア人の男が逮捕されました。
そのため、日本においても仮想通貨交換業者をマネーロンダリング規制の対象とすることにしました。具体的には、犯収法の規制対象となる「特定事業者」に仮想通貨交換業者が追加され、仮想通貨取引の際の取引時確認義務や、疑わしい取引の届出義務などが課されることになりました。
次の項目から、仮想通貨交換業者が「特定事業者」として受ける規制の内容を解説していきます。
仮想通貨交換業者は、犯収法上の「特定事業者」としてさまざまな義務を負います。
具体的には以下の4つです。
仮想通貨交換業者が以下の取引を行う場合には、本人確認(KYC)などの取引時確認が必要になります。
上で説明した取引時確認および取引をした後、ただちにこれらの記録を作成する必要があります。この記録は、取引に関する契約が終了した日から7年間保管しなければなりません。
それぞれの記録への記載事項は以下のとおりです。
仮想通貨交換業者がユーザーと取引を行う際、その取引が怪しい取引(=疑わしい取引)であったら、国へ届出をしなければなりません。
取引時確認などを的確に行うため、事業者は、社内管理体制を整える必要があります。
具体的には以下のとおりです。
それでは最後に、特定事業者である仮想通貨交換業者が犯収法に違反した場合、どのようなペナルティがあるのかを解説します。
事業者に対して罰則が用意されているのは、「取引時確認」を怠った場合です。ただし、ただちに罰則が科される「一発アウト」ではありません。
取引時確認を怠ったことについて事業者に「過失(うっかり)」があった場合、まずは国が以下のような措置をとります。
このように、仮想通貨を取り扱う事業者は、仮想通貨法(改正資金決済法)上の「仮想通貨交換業者」としてだけではなく、犯収法上の「特定事業者」としてもさまざまな義務を負うことになります。
しっかりと適切な対応をとり、仮想通貨がマネーロンダリングに悪用されるのを防ぐことが重要です。
1 仮想通貨交換業とは?
「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売り買いや仮想通貨同士を交換するなどのサービスを行うことをいいます。仮想通貨交換業を行う事業者のことを「仮想通貨交換業者」といい、bitFlyerやZaifなどの仮想通貨取引所が仮想通貨交換業者の典型例です。
仮想通貨交換業者は、情報弱者である投資家を保護するために「仮想通貨法(改正資金決済法)」という法律に基づいてさまざまな規制をうけます。
それだけでなく、ビットコインなどの仮想通貨がマネーロンダリング(資金清浄)に利用されやすいという性質から、仮想通貨交換業者は「犯収法」という法律により、KYC(本人確認)をはじめとした「マネーロンダリング規制(マネロン規制)」を受けます。
その結果、取引所の開設やICO(※一部のもの)といった仮想通貨ビジネスをやる際には、以下で説明する様々な義務を負うことになります。
※仮想通貨交換業についてさらに詳しく知りたい方は「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。
2 マネーロンダリング・犯収法とは?
「マネーロンダリング(マネロン)」とは、犯罪によって得られた不当なお金を、架空口座などを使って転々と送金し、その出所をわからなくすることをいいます。送金などを繰り返すことにより、犯罪によって手に入れたお金をあたかも最初から正当な手段で手に入れたもののように見せかけることができるため、「資金洗浄」とも呼ばれています。
このマネーロンダリング(マネロン)を防止するために作られたのが「犯収法」です。「犯収法」とは、金融機関などで取引を行う際に、ユーザーが本当に本人と一致しているのか、間違いないよう確認することを定めた法律です。「本人確認(KYC)」を行うことにより、金融機関が犯罪に利用されることを防ぐことができるのです。
仮想通貨は、その便利さが認識されている一方、違法取引の決済やマネーロンダリング(マネロン)に利用される動きもあり、国際的に問題視されています。たとえば、2017年には、ビットコインを使って40億ドル超のマネーロンダリングをしたロシア人の男が逮捕されました。
そのため、日本においても仮想通貨交換業者をマネーロンダリング規制の対象とすることにしました。具体的には、犯収法の規制対象となる「特定事業者」に仮想通貨交換業者が追加され、仮想通貨取引の際の取引時確認義務や、疑わしい取引の届出義務などが課されることになりました。
次の項目から、仮想通貨交換業者が「特定事業者」として受ける規制の内容を解説していきます。
3 犯収法によるマネーロンダリング規制の内容
仮想通貨交換業者は、犯収法上の「特定事業者」としてさまざまな義務を負います。
具体的には以下の4つです。
-
【特定事業者の義務】
- 取引時確認義務
- 取引時確認記録、取引記録等の作成および保存義務
- 疑わしい取引の届出の義務
- 社内管理体制の整備義務
4 規制その1:取引時確認義務
仮想通貨交換業者が以下の取引を行う場合には、本人確認(KYC)などの取引時確認が必要になります。
-
【取引時確認が必要な取引】
- 仮想通貨取引を継続・反復して行うことなどを内容とする契約の締結(アカウント開設契約など)
- 200万円を超える仮想通貨の売買・交換(ハイリスク取引)
- 10万円を超える仮想通貨の移転
-
【取引時確認の内容】
- 本人特定事項
- 取引を行う目的
- 職業or事業の内容
- 実質的支配者
- 資産・収入の内容
(1)本人特定事項
「本人特定事項の確認」とは、運転免許証などの公的証明書によって、ユーザーが本人で間違いないことを確認することをいいます。これにより、仮名での取引やなりすましによる取引を防止することができます。 本人を特定するための確認事項の内容は、- 個人の場合:氏名・住所・生年月日
- 法人の場合:法人の名称・本店または主たる事務所の所在地
-
【個人の場合】
運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、印鑑登録証明書、戸籍謄本・抄本、母子健康手帳、特別永住者証明書、在留カードなど
-
【法人の場合】
登記事項証明書、印鑑登録証明書、その他、官公庁発行書類で法人の名称および本店または主たる事務所の所在地の記載があるもの
(2)取引を行う目的
「取引を行う目的」とは、その取引によって何を達成したいかを指します。どのような項目で取引を行う目的を確認するかについては、とくに法律で定められているわけではないため、仮想通貨交換業者ごとに確認項目を決めておく必要があります。 確認方法については、口頭で確認したり、事業者が作成したチェックリストに記入してもらうなどの、ユーザーからの申告形式になります。(3)職業or事業の内容
顧客が個人の場合には職業を、法人の場合には事業の内容を確認します。こちらも取引を行う目的と同様に、具体的な確認項目についてはとくに法律で決められていないため、仮想通貨交換業者があらかじめ決めておく必要があります。 職業・事業の確認方法については、以下の3パターンがあります。①個人または人格のない社団・財団の場合
ユーザー本人または社団・財団の代表者から、申告によって確認します。②国内法人の場合
登記事項証明書や定款などの書類を、提示または送付してもらう形で確認します。③外国法人の場合
「外国政府が発行している書類等のうち日本国が承認したもので、その法人の事業の内容の記載があるもの」を確認します。また、国内法人と同じように登記事項証明書や定款などの書類によって確認することもできます。(4)実質的支配者(法人)
法人の場合、実質的支配者を確認する必要があります。「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配することができる立場にある人のことをいいます。 具体的に誰が実質的支配者にあたるかは、法人の性質によって決まります。以下のチャートをご確認ください。実質的支配者が誰か分かったら、その人について本人確認をします。法人の代表者などから、実質的支配者の本人特定事項について申告を受ける方法で確認を行います。 なお、200万円以上の仮想通貨の売買・交換(ハイリスク取引)については、実質的支配者の本人特定事項に加え、会社の株主名簿・登記事項証明書なども確認する必要があります。![]()
(5)資産・収入の状況
200万円を超える仮想通貨の売買・交換(ハイリスク取引)をする場合には、(1)~(4)の確認事項に加え、さらに、資産・収入の状況の確認を行う必要があります。 具体的には、顧客がその取引をするのに相当な資産や収入を持っているのか、という観点から確認を行います。 なお、この確認事項については、事業者がこの取引について「疑わしい取引」かどうかを判断することができる程度に行えばいいものであって、必ずしも顧客のすべての資産状況を確認する必要はありません。 資産・収入の状況の確認方法は以下のとおりです。-
【個人の場合】
源泉徴収票、確定申告書、預貯金通帳、その他資産及び収入の状況を示す書類を確認する
-
【法人の場合】
収支計算書、貸借対照表、その他資産および収入の状況を示す書類を確認する
5 規制その2:取引時確認記録・取引記録等の作成および保存義務
上で説明した取引時確認および取引をした後、ただちにこれらの記録を作成する必要があります。この記録は、取引に関する契約が終了した日から7年間保管しなければなりません。
それぞれの記録への記載事項は以下のとおりです。
-
【取引時確認記録の記載事項】※一部抜粋
- 本人特定事項や取引の目的、資産および収入の状況などの取引時確認事項
- 顧客が自己の氏名および名称と違う名義を取引に用いる場合、その名義および異なる名義を使用する理由
- 取引記録を検索するための口座番号その他の事項
- 本人確認書類の名称、記号番号その他本人確認書類を特定するに足りる事項
- 本人特定事項の確認を行った方法
- 取引時確認を行った取引の種類
- 取引時確認を行った者の氏名その他当該者を特定するに足りる事項
-
【取引記録の記載事項】
- 口座番号その他の顧客の取引時確認記録を検索するための事項(確認記録がない場合には、氏名その他の顧客または取引などを特定するのに足りる事項)
- 取引または特定受任行為の代理等の日付、種類、財産の価額
- 財産の移転を伴う取引または特定受任行為の代理等については、当該取引および当該財産の移転元または移転先の名義その他の当該移転元または移転先を特定するに足りる事項
- 残高照会などの、財産の移転を伴わない取引
- 1万円以下の財産の移転に関する取引
6 規制その3:疑わしい取引の届出の義務
仮想通貨交換業者がユーザーと取引を行う際、その取引が怪しい取引(=疑わしい取引)であったら、国へ届出をしなければなりません。
(1)どのような場合に届出をするのか?
具体的には、以下の場合に届出が必要となります。-
【届出が必要な場合】
- 取引上受け取った財産が犯罪によって得られたもの(お金に限らない)である疑いがある場合
- 顧客が取引を利用してマネーロンダリングを行っている疑いがある場合
-
【疑わしい取引の判断基準】
- 取引時確認の結果や取引の態様、その他の事情から判断する
- 調査書の内容を考慮する
- 法律などで定める項目・方法に従って疑わしいかどうかを確認する
(2)疑わしい取引の判断方法
取引が疑わしいかどうかは、以下のチェック項目に沿って判断します。-
【チェック項目】
- その取引と一般的な取引の態様との比較
- その顧客の過去の取引との比較
- 取引時確認事項との整合性
-
【疑わしい取引の判断方法】
- 継続取引(既存顧客)の場合、上記項目に従って疑わしい点があるかを確認する
- 一見取引【新規顧客)の場合、上記項目に従った確認+確認記録・取引記録の精査
- マネーロンダリングに悪用される可能性の高い取引の場合、1or2+必要な調査+統括管理者の承認
(3)疑わし取引の届出内容および方法
取引が疑わしいと判断された場合、以下の内容・方式に従って国へ届出をします。-
【届出内容】
- 届出を行う事業者の名称および所在地
- 疑わしい取引の発生した年月日
- 疑わしい取引が発生した業務の内容
- 疑わしい取引にかかわる財産の内容
- 取引時確認にかかわる事項
- 届出を行う理由
-
【届出方法】
- インターネットで電子申請する
- CDなどの電磁的記録媒体で提出する(郵送or持ち込み)
- 文書で提出する(郵送or持ち込み)
7 規制その4:社内管理体制の整備
取引時確認などを的確に行うため、事業者は、社内管理体制を整える必要があります。
具体的には以下のとおりです。
-
【事業者が取るべき措置】
- 取引時確認事項の情報を最新に保つ措置
- 取引時確認などの措置の実施規定
- 統括管理者の選任
- 調査書の内容を勘案して講ずべきものとして法律などで定める措置
-
【法律などで定められている措置】
- 特定事業者によるリスク評価
- 保存している確認記録・取引記録等の継続的な精査、必要な情報収集・分析
- リスクの高い取引を行う際の統括管理者の承認
- リスクの高い取引について行った情報収集や分析の結果を書面化・保存
- 必要な能力を有する職員の採用
- 取引時確認などに関する監査の実施
8 ペナルティ
それでは最後に、特定事業者である仮想通貨交換業者が犯収法に違反した場合、どのようなペナルティがあるのかを解説します。
事業者に対して罰則が用意されているのは、「取引時確認」を怠った場合です。ただし、ただちに罰則が科される「一発アウト」ではありません。
取引時確認を怠ったことについて事業者に「過失(うっかり)」があった場合、まずは国が以下のような措置をとります。
- 本人確認について、報告または資料の提出を求める
- 事業者の営業所や施設に立ち入り、書類の検査や関係者への質問を行う
- 適切かつ円滑な措置の実施確保のため、事業者に対して必要な指導・勧告をする
- 是正のために必要な措置をとることを命令する
- 最大2年の懲役
- 最大300万円の罰金
- 最大3億円の罰金
9 小括
このように、仮想通貨を取り扱う事業者は、仮想通貨法(改正資金決済法)上の「仮想通貨交換業者」としてだけではなく、犯収法上の「特定事業者」としてもさまざまな義務を負うことになります。
しっかりと適切な対応をとり、仮想通貨がマネーロンダリングに悪用されるのを防ぐことが重要です。
10 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。- 「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売り買いや仮想通貨どうかを交換するなどのサービスを行うことをいい、仮想通貨交換業者がうける規制の1つに、犯収法による「マネーロンダリング規制(マネロン規制)」がある
- 「マネーロンダリング(マネロン)」とは、犯罪よって得られた不当なお金を、架空口座などを使って転々と送金し、その出所をわからなくすることをいう
- 「マネーロンダリング(マネロン)」を防止するために作られたのが「犯収法」
- 「犯収法」とは、金融機関などで取引を行う際に、ユーザーが本人と一致しているかを確認することを定めた法律のことをいう
- 犯収法の規制対象となる「特定事業者」に仮想通貨交換業者が追加され、仮想通貨取引の際の取引時確認義務や、疑わしい取引の届出義務などが課されることになった
- 特定事業者が負う義務として、①取引時確認義務、②取引時確認記録、取引記録等の作成および保存義務、③疑わしい取引の届出の義務、④社内管理体制の整備義務がある











